陣出遺跡発掘調査現地説明会メモ
1.はじめに 先にに実施された「鎌倉市 陣出遺跡発掘調査現地説明会」に参加しました。陣出は字名で、ローカルあるいは歴史愛好者ほどしか認知されていないのでしょうから、まず位置説明。
大船駅・湘南江ノ島駅間を結ぶ湘南モノレールが大綱駅を出発して3駅目が湘南深沢駅、駅の西側に盆地状の地形が広がります。一帯は鎌倉市の北西端、少し西は藤沢市村岡です。最近は大船駅・藤沢駅間の新駅構想あるいは鎌倉市役所移転計画で話題豊富な所です。
調査地のすぐ東側に文和五年銘のある石造宝篋印塔「泣塔」が存在します。鎌倉青年団建立「洲崎古戦場碑」も近くにあります。
調査地 :鎌倉市寺分字上陣出393番の11ほか
開催日時:2023年10月8日(日)
主催 :鎌倉市まちづくり計画部深沢地域整備課
鎌倉市教育委員会文化財部文化財課
調査機関:株式会社イソビク金川営業所
2.調査概要
道路造成計画に先立つ狭い範囲の調査で、古墳時代から奈良・平安時代の竪穴住居跡4軒分と性格不明の遺構2基、土坑1基が見つかりました。
この規模にしては多くの出土品があったとのことですが、当日は限られたものが展示されていました。
遺跡はさらに東西(市有地)に延び、南(JR用地)に広がるとされるので、再開発の進展に応じて調査は継続するかも知れません。これからも期待です。
3.感想など
長い年月に渡る周辺の様子を大雑把にまとめておきます 6000年前は大船辺りまで海が入り込んで、陣出は丘陵だったかも知れませんが裾は海に接していたと考えられます。
海が後退すると柏尾川の氾濫原になります。拠って周囲を丘陵に囲まれた盆地状の地形が広がります。中世、新田義貞が鎌倉攻めする際、鎌倉道を南下した新田軍はこの辺りで軍勢を分散、鎌倉中心部を南北から攻撃します。
近世、旧東海道戸塚宿で分かれて江ノ島に向かう、江ノ島・鎌倉巡り道筋になりました。江戸から3泊4日の行程が標準のようですから、1泊目が横浜金沢付近、2泊目が鎌倉・江ノ島付近、3泊目が戸塚付近、あるいはその逆回りになります。
江ノ島道の道標が山崎(写真)と青蓮寺(移設)で見られます。
近代になって横須賀海軍工廠設立、魚雷・機雷を製造します。その後、国鉄大船工場に転じます。国鉄(JR)の工場が閉鎖されてからは恒久的な土地利用はされていないようで、今後、工場跡地を主体にする周辺は再開発されるのでしょう。
遺跡として特筆される要素は少ないと感じました。しかし遺跡間際まで岩盤が見られることから、周辺の地形との関係が推測できます。発掘位置が重要で、周辺は現代になってから人手が加えられて地形が大きく変化しているからです。
4.引用
1.「陣出遺跡発掘調査現地説明会」パンフレット 鎌倉市 2023年10月8日
2.神奈川県立生命の星・地球博物館 企画展「+2℃の世界」ワークテキスト
3.「大船工場30年史」 日本国有鉄道大船工場 昭和51年10月31日
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