BankART KAIKO「都市デザイン横浜展」鑑賞、影は?
良く街歩きするので、この企画展で取り上げられた現地の様子はある程度承知しています。総じて光の部分が取り上げられ、影の部分の言及はありません。ここで云う影とは、抽象的な影であり実際の影です。
会場中央に横浜市中心部のジオラマが据えられています。豆粒ほどの自宅が確認できるほど丁寧に作り込んだものです。何代もこの地で生活してきて、勝手に中心部になった感じはあります。かつて横浜湾奧にあった三菱
造船所が移設、その跡にみなとみらい地区が開発されて、中心部に躍り出た訳です。この辺りは東海道線沿線の住宅密集地で、造船所に通勤する人たちで賑わう小さな飲食店なども連なっていました。
何時の頃だったか用途地域指定変更で中層ビルが建ち始め、個人と資本が入り混じるようになりました。今は空地も目立ち、企業買い占めの印象があります。個人商店は徐々に店じまい、住民の老齢化も進んで限界集落の様相を呈しています。地域共同体は継続できるのか、これは抽象的な影です。
実際の影とは。最近、高層ビルの作り出す影の多い街になったとの思いを強くしています。
例えば、旧横浜市庁舎跡に180mだかの高層ビルが建つようです。写真にビルの高さを推定して白線で追記していますが、写真上端をさらにはみ出します。冬至の太陽南中高度は30度少々ですから影は240mほどで横浜公園を被うでしょう。公園の花壇・遊び場から見てビルの位置は西南西で、午後の遅くに影が延びて夕方が早く来るようなものでしょう。ビルは敷地の南側に建つようで、北側の関内駅との間は広場にでもなるのでしょうが、日当たりは確保、影は敷地外でしょうね。旧市庁舎も殆ど影にならないでしょう。
ベイスタジアムも、コロナに打ち勝った証のスタンド増設、ほとんど利用されないデッキ建設で殺風景になりました。
企画展の一部あるいは全部の写真は、周囲の様子で今冬の、影の延び具合から昼過ぎに撮影したことでしょう。写真にビルの影を白線で枠取りしました。随分長く、そして人々が憩う部分を被います。
現在、赤レンガ倉庫の西側に、地上7階・高さ35m強の(仮称)横浜地方合同庁舎を建設中です。赤レンガ倉庫広場に影が届くでしょう。それだけでなく、万国橋から赤レンガ倉庫方面への景観を潰します。
観光客や市民の憩いの場を影で覆ったり、景観をぶち壊してどうするの。カジノ計画中止は良いとして、時に何もしないことも重要ですが、政治・行政は何かすることが、強いて言えば金をつかうのが好きなようです。人口減は避けられませんし、我慢できるものは我慢する。良い未来のために重要でしょう。
(2022年3月21日記録)
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