原節子主演「新しき土」
鎌倉市川喜多映画記念館にて開催中の「特別展 生誕100年 激動の時代を生きた二人の女優ー原節子と山口淑子」に関連して上映される、原節子主演「新しき土」を鑑賞しました。
この映画は、デビュー直後の16歳の原節子がヒロインを務める1937年の作品です。ドイツのアーノルト・ファンクと日本の伊丹万作の共同監督で計画されたが、両者は意見の相違で対立、同一タイトルでファンク版と伊丹版が撮影されたそうです。今回の上映はファンク版、時代を濃厚に反映する内容です。こうなると伊丹版も鑑賞したくなります。
裕福な士族の養子になった大和輝雄は、養家支援によるドイツ留学を終えて恋人の記者・ゲルダを帯同して帰国する。鴎外「舞姫」を思わせる入りです。ところが輝雄には結婚を約束された大和家の一人娘・光子がいました。輝雄は、自由世界の薫陶を受けて古いしきたりを打破、光子とは結婚しないと言い出します。
大和家の親族会議で、当主は輝雄の考えを尊重したいと言う。そのことを儚んだ光子は、用意されていた結婚衣装を携えて険しい山奥に入り込みます。気付いた輝雄は光子を探すために、火山の熱気が噴き出す道なき道を苦痛に耐えながら探し回って、光子を助け出します。
この後の展開は急で、丸く収まった二人は旧満州国に渡って開拓に従事します。
1936年の日本の様子を濃厚に映しこんでいます。気付いただけでも、恐らく松島、富士山。火山は浅間山、安芸の宮島、東京、鎌倉、大阪、京都など多様なロケ地。旅行している訳ではありません。あくまで近接した地域として描かれていて、変化にとんだ日本の素晴らしさを伝えるものでしょう。
裕福な士族の跡継ぎの家族が、旧満州国で開拓に従事する結末も荒唐無稽と思われます。いずれも国策を知らしめる意図でしょう。
現代に生きる老人と云える私だからそう感じますが、往時の人々はどう受け止めたのでしょか。
16歳の原節子の美しいことは言うまでもありませんが、まだ少女です。東京物語などで見られる成人女性の美しさとは異にします。どちらも素敵なことに異論はありませんが。80年前の映画とは思えないほど鮮明です。大画面で見る映画は良いですね。 (2020年10月31日記録)
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