古道について
街歩き、今回は古道について思うところをまとめてみました。
古道の特徴(*1)を列記します。
1.障害があれば迂回するので局部的には迂余曲折
2.局部的に迂余曲折するが大観するとほぼ一直線
3.道の傍の清水や苗所の古井戸は旅人の憩いの場
4.路傍・岐路に道標を兼ねる道祖神・庚申塔など
5.薬研堀とかいわれる踏まれて深く切り込んだ路
池・川・田畑などは迂回しますが、遠くの山などを目標にほぼ一直線に進みます。例えば武相国境を金沢方面に向かい、横浜市域に入って野境道路(瀬谷区)を過ぎると、やがて家並の切れ目で円海山(磯子区)が視界に入ります。円海山を過ぎて鎌倉に向かうたたら道をなお進むと、やがて東京湾に浮かぶ野島(金沢区)が見えてきます。昔の旅人は、一つ先一つ先の目標を見定めて歩を進めたことでしょう。
生活様式の変化で埋め戻された井戸は多いと思いますが、今に残る名の付いた井戸もあります。例えば旧東海道保土ヶ谷宿中程から金沢に向かう金沢道沿に(北条)政子の井(保土ヶ谷区)、鰻井戸(港南区)が見つかります。鎌倉十井のいくつかは街道沿いにありますが、門前にある井戸さえ、結局は旅人の喉を潤したことでしょう。
切通と思えない場所でのU字型地形は薬研堀で、往古より行き交う旅人の歩みが少しづつ大地を削った証です。意外な場所で見かける道祖神は、その辺りが旅人の行き交った道筋であったことを物語ります。
家並の中に古い時代の痕跡を見つけることが少なくありません。実証の難しいものもありますが、正史に記録されない世俗の歴史を垣間見るのは、街歩きの醍醐味の一つと感じます。
*1 武州久良岐郡地名考 武内廣吉著、まほろば書房 を参考にして要約
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