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2016年7月 5日 (火)

演劇:「日輪の翼」

  原作    中上健次
  脚本    山崎なし
  演出・美術 やなぎみわ
  音楽監督  巻上公一

  出演    オバ(老女) 重森三果、SYNDI ONDA、ななな、檜山ゆうこ、南谷朝子
        若衆     石蹴鐘、上川路啓志、辻本佳、西山宏幸、村岡哲至
        若い女    サカトモコ、藤井咲有里、MECAV
        楽隊     Saro、嶋村泰

  会場    横浜赤レンガ倉庫イベント広場
  公演    2016年6月24日(金)~26日(日)
  鑑賞    2016年6月24日(金) 18:30~21:00(休憩10分)
  参考    公式HP http://www.kaat.jp/d/yanagi_nichirin

 ヨコハマトリエンナーレ2014、新港ピアー会場の建屋内にステージ・トレーラー、通称デコトラが翼を広げるように展示されていた。「やなぎみわステージ・トレーラー・プロジェクト」の中心となる大道具。多くの耳目を集めていたが所詮は工業製品、派手な装飾を施されようと、東北画によるトレーラ下部を彩るスカートが張り巡らされようと、プロジェクト途中の未完成品と捉えていた。

 まだ明るい特設会場、観客席に後部を見せてデコトラが停まっている。その左右にスピーカーを積んだ軽トラック、さらに左側にクレーン車。それらを囲むようにしてベルトパーテーションが張られている。会場後方の一般道に自動車が行き交い、ホリゾントは横浜の街。野外劇場の演劇を何度も見てきたけれど、これほど一般空間と劇場空間の境界の稀薄な設営は皆無だった。
 これは「路地」の暗示だろうか。多くの人を苦しめてきた、未だに苦しめているだろう「路地」に物理的な境界などある訳でないとでも言うように。

 野外公演に雨は付き物、ましてや梅雨時。ポンチョ、オーバーズボン持参、要はハイキング支度だ。それまでして見たいかと問われれば、見たいと答えざるを得ない。万に一つのかけがえのない何かを見つけ出す可能性がある。何よりヨコハマトリエンナーレ2014の完結を見届けなければならないのだから。

 過去2作、やなぎみわ演出の演劇を見て、時代背景を理解していなかったので難解と感じた。今回は中上健二「日輪の翼」だけは通読した。他の作品までは手が出なかったが。

 

 雨が降る中で始まる。熊野の「路地」から立ち退きを迫られたオバたち(老女、原作で7人、ここでは5人)が、同じく「路地」出身の若者・ツヨシたちが運転するトレーラーの荷台に乗って旅をする。物見遊山ではない。オバたちが生きるための拠り所とした場所であったり、今となっては浄化された思いしか残らないであろう過去の苦界であったりする。ご詠歌を供え、迷惑がられる清掃奉仕をして、一時の至福を得る。若者たちは女性漁りに余念がない。奇妙な一行は、伊勢、尾張一の宮、諏訪、瀬田、恐山、東京へと移動する。途中、オバは死んだり、蒸発したりもする。

 舞台化困難とも思える原作にリアリティを与える中心がデコトラ、翼を開いたり閉じたり。ダンスのステージになったり、音楽ステージになったり。何よりオバたちの生活空間だ。
 猥雑な各所を表すのが、クレーン車でロープなどを釣り上げて行うアクロバチックな芸(演技)だったり、ポールダンス、多用な音楽・ダンスであったりする。

 俳優(芸人・音楽家)たちは芸達者、それなくしてこの演劇は成立しないだろう。そして最後にゆるゆるとデコトラは走って視界から消えていく。夜の帳が落ちた横浜の街、おもしろうてやがて悲しき現実か。

 

 ヨコハマトリエンナーレ2014におけるデコトラ展示を評価などしなかったが、ここでデコトラが息づいた感じだ。存在感を確認し、現代美術というか現代演劇というかの完結を見た。

 原作の土着性は薄れ、その分エンターテイメント性が増している。表現上の制約も大いにあっただろう。中上健二「日輪の翼」と言うより、やなぎみわ「日輪の翼」に生まれ変わった。それで何が悪い。

 雨は本降りになりそうな感じもしたが、前半半ばに上がった。熊野は多雨、雨でも良かったかなと思うのは強がりだったかも知れない。

   (2016年7月5日記録)

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