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2016年6月13日 (月)

能楽:伝説の能面・狂言面 第1回

  番組 能「翁」 (観世流)
       翁         梅若 玄祥
       三番三       山本 東次郎
       千歳        梅若 雄一郎
       面箱        山本 泰太郎

     新作「横濱風流」 (大蔵流)
       シテ(大山祗ノ神) 山本 則重
       アド(木花開耶姫) 山本凛太郎

  会場 横浜能楽堂
  公演 2016年6月11日(土)
  鑑賞 2016年6月11日(土) 14:00~15:40

 横浜能楽堂の開館二十周年を記念する4回続きの企画の第1回。底流となるテーマが「伝説の能面・狂言面」,
すなわち、各流・家の選りすぐりの能面・狂言面を用い、面に相応しい名曲を舞うとの意図がある。

 何が伝説かをプログラムから引用しよう。
 『能面の中で、室町時代から江戸時代初頭にかけ打たれた優れた能面を「本面」と呼ぶ。その後、「本面」を手本として、今日に至るまで「写し」が打たれてきた。現在では、通常、この「写し」を使う。「本面」は限られた演者が特別な催しで使うのみだ。中には「宗家・当主」であっても、生涯に数回しか使わないものもある。今回の公演には、毎回、「本面」が登場する』。
 要は、面・曲目・演者の全てが集う貴重な機会。本企画中では、重要文化財指定の三つの面などが登場するそうだ。

 今までに能楽堂に足を運んだ回数は、十回以上・二十回未満程度。能・狂言の理解も進まない初心者に、伝統まで重なって大丈夫かと思われるかも知れない。が、そこは意外と大胆、気軽に出かけてしまう自分がいる。能・狂言に限らないけれど、良いものを見る・場数を踏むことが理解促進に不可欠と考えるから。知識は後回しでも何とかなる。

 「翁」は作者不詳、祝いの時に舞われ、能の曲目中で最も神聖なものとされる。よって演能の機会も少ないのだろう。できたのは最も古く、時代は平安時代末まで遡れるようだ。変遷を重ねて現在の形式、千歳・翁・三番三に至ったようだ。かつて三番三(三番叟)だけは観たことがあるけれど、それでも天下泰平・五穀豊穣の思いはひしひしと伝わって来た。「翁」は何が加わるのだろうか。

 「翁」の特異性は次のような一面からも伝わるだろう。出演者は一定期間「別火」と呼ばれる物忌みを行い、精進潔斎する。当日は鏡の間に「翁飾り」と称する祭壇が設けられ、全員で神酒を頂き、洗米を含み、荒塩で身を清め、火打石で切火を受けた後、登場する。ただし、これは話として知るだけで、一連の所作を客が見ることはない。

 一分前に楽屋から笛の音が響く。最近は何でも5分遅れくらいで始まることを思えば、能は厳格だ。
 定刻、本幕で橋掛かりから、面を入れた箱を掲げる面箱を先頭に、翁・千歳・三番三・囃子方・後見・地謡と続いて登場する。「翁渡り」と称するそうだが、最初からいつもと出方が違う。それに囃子方・後見・地謡の衣装も素袍・侍烏帽子の最高の礼装で、いつもと違う。一目瞭然、ここまでを知識として得るのはなかなか困難だろう。

 進行は、翁による「とうとうたらり」の謳い、千歳の露払いの舞い、翁の天下泰平・五穀豊穣を寿ぐ舞い、最後の狂言方による「三番三」は揉みの段、「黒色尉」の面を付けて鈴の段と続く。

 新作「横浜風流」は、山本東次郎の台本制作。
 「翁」の鈴の段に掛かろうとする時にシテ・アドが登場、三番三との芸能問答を繰り広げる。三番三の鈴の段が終わるとシテが舞い、アドが舞う。謡はなかなか聞き取りにくいし、面を付ければなおさらだ。耳は澄ましっぱなしだけれど、なかなか慣れない。ただこの時の狂言謡の一部はそうでなかった。何しろ横浜市歌が織り込まれていた。横浜市民なら誰もが歌えると言われる市歌だから。ただし歌われた訳でなく、謡われたのだが。
 風流とは、三番三の舞の部分に神仏などが現れ、太平を寿ぐ特殊演出のことだそうだ。現在はめったに上演されず、特に明治以降の新作の例はほとんどないそうだ。

 全体を通して、一貫した物語性は無いように受け止めた。しかし時が刻み込まれていることを強烈に感じた。今まで見た能とは多くの点で異なるが、一つ一つをつぶさに語れない。ましてやその芸術性など。けれど見て仕方ないとも思わない。そういう時期を得ずして先には進めない。まあ冥途の土産になりそうだ。次に見る機会がいつになるかなどは判らないほど貴重な機会だった。

 図は、翁の付ける白式尉、三番三の付ける黒式尉(重文)、シテ(大山祗ノ神)の付ける大登髭。いずれも当日のプログラムより引用。
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   (2016年6月13日記録)

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