路上観察:生麦の「蛇も蚊も」(2016年6月5日)
生麦は横浜市鶴見区内の町名、鶴見川河口右岸に位置する町です。
江戸時代は町(村)内を東海道が貫き、徳川将軍家のために江戸城に海産物を献上した御菜八ヶ浦の一つでもありました。また幕末の文久2(1862年)年、東海道上で発生したイギリス人殺傷事件は、生麦事件として歴史に記録されているので、生麦の地名に聞き覚えのある方もおられるでしょう。
「蛇も蚊も」は町内の神明宮と道念稲荷社の祭事で、横浜市指定無形民俗文化財指定の伝統行事、毎年6月の第一日曜日に挙行されます。案内などによると確かな記録はないようですが、大筋は次のように伝わるそうです。 300年ほど前に辺り一帯で疫病が流行った際、氏神の「すさのう尊」の力を借り、カヤで作った雌雄一対の大蛇に悪霊を封じ込めて海に流し、疫病退散を祈念したのが始まり。いわば夏越の祓神事でしょう。
横浜には知る限りで似たような行事、本牧神社の「お馬流し」、富岡八幡宮の「祇園舟」もあります。いずれも漁師町であったことが共通しています。
私は町外者で詳細は知りませんでした。ただ、大きな流れとして、午前中に雌雄一対の大蛇を作り、午後から担いで辺り一帯を回る程度の情報は持ち合わせていました。昨年は午前中だけ見届け、今年は午後になってでかけました。とにかく二年がかりで大きな流れを把握したので整理しておきます。
神明宮は旧東海道から数10m内陸側に入った所、道念稲荷社は旧東海道に面しています。なお道念稲荷社の写真は祭り当日の撮影ではありません。
神明宮で雌雄一対の大蛇が、カヤを束ねて制作されます。制作は子供の出る幕ではありませんが、周辺で楽しそうにはしゃぎ回っています。古くからの庶民の町だからでしょう、人出は多いです。
午後になって辺り一帯を巡行するために宮外に出ていきますが、まずは宮の周りを回ります。
17時近くになって戻ってきます。雌雄の大蛇が並んで境内に入る所を脇で見ていたのですが、通り過ぎる時にカヤの匂いが漂ってきて、すがすがしい気持ちになりました。植物、すなわち自然の匂いを久しぶりに嗅いだ思いです。
境内に入った大蛇は、何回か雌雄を交わらせて終わりました。夏越の祓と共に子孫繁栄の意味も含まれるのでしょう。
本来は海に運んで流すそうですが、現在は環境保護の観点から翌朝に燃やしてしまうそうです。そのためにとぐろを巻かせてその場に置きます。結構固く出来ているようで、なかなかとぐろを巻かせられませんでした。
素朴な祭ながら、町中総出で運営しているように見受けました。伝統を絶やさない、そして次の世代に繋げるという心意気でしょう。ただし、カヤを何トンか使うので、この先どうなるのだろうかと入らぬ心配をしてしまいます。興味を持たれたら来年出かけては如何でしょうか。雨天決行だそうです。
(2016年6月8日記録)
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