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2015年3月 5日 (木)

演劇:N.K.Project「この道はいつか来た道」

  作    別役実
  演出   中山一郎

  出演   男  中山一郎
       女  久保庭尚子

  会場   アトリエ第七秘密基地
  公演   2015年2月25日(水)~26日(木)、全3公演
  鑑賞   2015年2月26日(木) 15:00~16:10

 

 舞台やや下手寄りに電信柱。その先にひしゃげた街灯がついている筈だけど省略されている。根元にゴミ捨て用のポリバケツ。

 ホームレス風の女がか細い声で「この道はいつか来た道・・・」と歌を口ずさみながら立っている。両手にショッピング・バッグを持ち、腰に結んだ長いロープの先に箱を開いたようなダンボールを引きずっている。ポリバケツと話するように位置を変え、ダンボールを広げて休憩の準備を進める。

 その途中で、丸めたゴザを背にくくりつけ、ショッピング・バッグを持ったホームレス風の男がゆっくり現れて、女とポリバケツの成り行きを見守るが、やがて声をかける。「どうしたんですか」。

 初対面らしい二人。女がショッピング・バッグから蓋のない土瓶を取り出すと、男はサイズの大きなやかんの蓋を取り出すなどして、お互いに都合しながらささやかな茶会を楽しむ。次第に親しさを増していくようだ。

 ホームレスの生活が主題だろうか。やがて二人は初対面でもなく、介護施設を何回も抜け出して今に至っていることが判ってくる。

 頓珍漢でおかしな受け答えをしながら進行するので、不条理劇のようにも感じられるのだが、やがて重い主題を扱っていることに気づく。いかに尊厳を持って再晩年を生き抜くかということが主題と判ってくる。

 

 小ビルの地下、客席数せいぜい50の小劇場。男と女を演ずる二人の実力は十分に承知している。平日のマチネーにも関わらず、若い人も少なくない。

 面白くて、やがて悲しい結末。そのことを強く印象付けたのが美しい台詞回し。もちろんそこには間も含まれるだろうけれど、余裕をもって一語一語をしっかり受け止められた。最近の演劇はテンポの速いものが少なくないし、それはそれで面白く感じるのだが、言葉をしっかりと楽しむ雰囲気は稀薄だ。何か久しぶりに新鮮な思いがした。別役の戯曲と演出がうまく融合していたと言える。

 一般的にはどの年代の役者が演じることが多いのだろうか。最後の方で女がこう言う。「だって、私たち、痛がって死ぬために、ここへ来たんですから」。自分はそういう思いをしたことがない。二人は私より随分若いから、なお実感はないだろう。恐らく客の全員が未知の領域だろう。とするならリアリティはどこに。
 今回は穏やか雰囲気を漂わせていた。再演・再々演と続けば、あるいは表現が変わるかも知れない。しっかりした戯曲は息が長い。自分がその変化を観続けられるだろうか、ということに最もリアリティを感じたりして。

 後半に音楽が挿入された。ヴィヴァルディ「四季」から冬の第二楽章・ラルゴはちょっと甘すぎないだろうか。それだけが気になった。

   (2015年3月4日記録)

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