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2015年2月13日 (金)

演劇:SCOT「トロイアの女」

  原作  エウリピデス
  演出  鈴木忠志

  出演  神像            藤本康宏
      老婆/ヘカベ/カサンドラ  斎藤真紀
      花売りの少女/アンドロマケ 佐藤ジョンソンあき
      侍/ギリシャ兵       竹森陽一・植田大介・石川治雄
      老人・老婆/トロイア人   木山はるか・鬼頭理沙・中村早香・
                    平野雄一郎・竹内大樹
      廃車の男          加藤雅治

  会場  神奈川芸術劇場大ホール
  公演  2015年2月10日(月)
  鑑賞  2015年2月10日(月) 17:00~18:15

 

 舞台で繰り広げられる物語は遠い昔の話か、今どこかで起きていることか。それとも足元に迫っていることか。2500年ほど前に書かれたエウリピデス「トロイアの女」、そこから思うことは古典の深奥さ。人類は進歩していないということ。かなり晩生だがようやくそれに気づいた。

 鈴木忠志構成・演出「トロイアの女」は、岩波ホール・演劇シリーズ第1回公演として1974年から1975年にかけて上演された。記録映画を観たことはあるが、舞台は観ていない。再演もされているが、その後、上演は途絶えていた。
 昨年(2014年)の利賀フェスティバルに於いて復活再演された。一度は観たかった舞台だから、興味深かった。昨年暮れには吉祥寺シアターでも再演されたが、諸処の事情で出向かなかった。そして今回のTPAMに於ける一回限りの上演になる。

 二回目の観劇になると大分見通しは良くなる。細かくは異なる部分もあるが貫くものは変わらない。感想も変わらないので、昨年まとめたものを引用しておく。主要な配役は変化なし、その他は多少入れ替わっている。

 

 『舞台奥、上手から下手に廃車が積み重なって(注:今回は中央に二台ほど、後は上手・下手側に幕)場末のスクラップ置き場とも見える。あるいは戦争後の荒廃した雰囲気を漂わせていたとも言える。二重世界を行き来する演出は、鈴木忠志が多用する手法。廃車を積み上げたセットは他の演目でも見かける。ただし、今回は意外に感じたが、廃車そのものに重きがある訳でもない。

 生き残ったトロイアの女たちが、戦利品としてギリシャに連れ去られる運命にあることを知った王妃ヘカベの怒り・嘆きは凄まじい。戦争における敗者の哀れさ、なすがままの運命に抗えない女たちの悲しさを代表したものであった。

 トロイア王の息子・ヘクトールの妻・アンドロマケは、息子(人形)を八つ裂きにされ、自らはギリシャ軍兵士に犯される。気丈さも、屈強の兵士の前に意味をなさない。衣装は和服、様式美を保ちながら帯を解かれる場面が印象的。

 ギリシャ軍の兵士は征服者の横暴さを存分に見せつける。が、それは抑制されながらも統一された身体表現に負うところが大きかった。

 ヘカベの斎藤真紀、アンドロマケの佐藤ジョンソンあき、ギリシャ軍の塩原充知・植田大介・石川治雄、みなスズキ・メソッドの良き体得者だ。抑圧された身体表現とも思える部分もある。今回はギリシャ軍の三人に対して顕著だった。しかし、大きなスケールの背景を浮かび上がらせるには、自由奔放な身体表現は弱く、抑圧された身体表現にこそ弾ける力が内在すると思う。そんなことを改めて感じた。

 戦争の悲しさ・虚しさを象徴する演出がもう一つあった。神アポロンの存在。一言も発しないし、ただ立ち尽くしているだけ、と言って過言でない。どんなに悲惨な状況が出現しようとも、神は助けてはくれはしない。それにしても、この身体表現も誰にでも出来るわけでない。鍛えられし者のみが成し得るだろう。動と静、鈴木演出の凄さだ。

 冒頭に述べた現代への警鐘(省略)と捉えて間違いないだろう。「歴史にもおさらば、記憶にもおさらば」と言う訳にはいかない。胸に刻み込まなければならない。

 として、ここで終えて良いのだが何か一つ物足りなかった。コロスが存在しなかった。演劇の狙いは私なりに捉えたつもりだが、コロス本来の役割は不要にしても、遊び心があって良かった。初演時のキャストには、風呂敷を持ったコロス、ローソクを持つコロスが加わっている。どのような演出だったか知る由もないが、見たい気もする。どのような雰囲気だったのだろうか。 (2014年9月10日記録)』

 

 一つ気になったことがある。神アポロン、今回は神像だが、下手から膝を高く上げる独特の歩き方で登場した。途中で奇声を発した。下手客席を見つめるように立ち尽くしているが、何回か正面に向きなった。利賀フェスティバルの際は不動だったと記憶するが、そちらの方が良いと思っている。
 それにしても、神奈川芸術劇場でSCOTを観られるとは思っていなかった。TPAM関係者の努力の賜物だろう。感謝したい。

 添付の写真は、岩波ホール公演時の上演記録(出展:平成22年に日本女子大学目白キャンパスで開催された講演資料)。
02

   (2015年2月12日記録)

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