美術:「みちのくの仏像」展
名称 特別展「みちのくの仏像」
会場 東京国立博物館本館 特別5室
会期 2015年1月14日(水)~ 2015年4月5日(日)
鑑賞日 2015年2月 4日(水)
参考 公式ホームページ
いままでに東北の旅は6・7回ほど。訪れた寺院は、平泉の中尊寺・毛越寺、山形の立石寺、下北の恐山菩提寺、松島の瑞巌寺、強いて言えば30年以上前にいわきの白水阿弥陀堂。仏像の印象が残るのは中尊寺のみ。
特別5室は、本館正面の大階段を上ると休憩スペースがありますが、その真下。大きな展示スペースではありません。そこに19組の仏像が展示されています。次の写真は作品リストです。
特に印象深かった仏像について、感想をまとめておきます。
最初は岩手・天台寺「聖観音菩薩立像」。平安時代・11世紀の作、像高118Cm、カツラの一木造り、なた彫りの美しい仏像。なた彫りと言っても荒々しくはありません。きれいに仕上げてから鑿跡を刻み直したようです。未完と思わせながら、確固たる美意識の存在に気づきます。
既視感あり。2006年に東博開催の「特別展 仏像 一木にこめられた祈り」に出展されていました。鉈彫の仏像の一体として展示で、「みちのくの仏像」との意識は稀薄でした。
岩手・成島毘沙門堂「伝吉祥天立像」。平安時代・9世紀の作、像高176Cm、ケヤキの一木造り。左右対称のように見えますが、右膝を前方に軽く突き出して、膝周りに少し膨らみを感じます。現在は素地が表れていて木目が美しい。解説は、東北で最も美しい仏像ではないかと言及しますが、単なる褒め言葉とも思えません。
かって花巻市東和町「萬鉄五郎記念館」を訪れた時に前を通ったのですが、気になりながら素通りしました。毘沙門堂に「伝吉祥天立像」は少しおかしいと調べたら、御本尊は像高473Cm、日本一大きい「兜跋毘沙門天像」でした。
最後に円空仏が三体、青森・西福寺「地蔵菩薩立像」、青森・常楽寺「釈迦如来立像」、秋田・龍泉寺「十一面観音菩薩立像」。一見して円空仏とは思えませんでした。初期に制作された円空仏らしく、素朴さは残るもののきれいに仕上げられて、鉈の跡はあってもかすかでした。側面から見ると、素材は少し厚い板状であったと推察できます。手短にあった古材の利用とも思えます。
円空(1632~95年)は美濃国の生まれ、生涯にわたって諸国遊行しながら十二万体とも言われる仏像を作っています。東北に足を踏み入れた最初の記録は、「津軽藩日記」寛文6年正月25日(1666年)に残り、よって前年に東北に到着でしょうが、歓迎はされていないようです。他の記録を合わせると、足かけ4年ほどの東北・北海道の旅だったようです。
「みちのくの仏像」という視点は珍しく思います。みな美しい仏像で、風雪に耐えたとの思いも湧きます。展示は小規模ですが、じっくり味わうには程良い規模。願わくば、もう少し広い会場でゆったりと展示して欲しいものです。次の仏像に移動する間、余韻を味わう時間が欲しいです。
(2015年2月11日記録)
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