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2014年9月 5日 (金)

演劇:SCOT Summer Season 2014 (1)

 「SCOT Summer Season 2014 & 第1回利賀アジア芸術祭」。「SCOT」は「Suzuki Conpany of TOGA」の略。ここで「Suzuki」は演出家・鈴木忠司、「TOGA」は富山県南砺市利賀村のこと。利賀村は岐阜県境に近い山奥の過疎の村だが、ここで演劇祭が開催される。少しづつ形は変わっているが来年で40周年を迎える。行かない年もあったが四半世紀に渡って私の夏休みはここ、今年も2日間で5演目を鑑賞した。

 

1.スズキトレーニングメッソド公開  29日19時開演、創造交流館

 当初は上海戯劇学院とSCOTの共同制作による「シンデレラ」が予定されていたが、諸般の事情によりプログラムが変更された。

 事前配布のレジュメには3つの要点がまとめられていた。さらにその要点を抽出して次に。

  1.メッセイジを持たない人間に演技はない。
     メッセイジ=意見を効果的に伝達するための行為の様式あるいは遊
     び方が歴史的に蓄積され、多くの人々に共有されたものを、演技と
     呼称してきたということができる。
  2.観客がいないと演技は始まらない。
     身体を見せる見せられるという意識状態、言葉を聴かせる聴かれる
     という意識状態は自分以外の存在が視覚的聴覚的に自分に注意を払
     っていることを前提にしている。
  3.見えない体を意識化することが演技の前提条件である。
     身体が生活上で目的をよりよく果たすために必要なもの、身体行動
     に伴うエネルギーの燃焼と呼吸の調節、それと重心の支配である。

 20人弱の中国・台湾・韓国・日本・アメリカの俳優・訓練生による実演と鈴木忠司の解説を交互に繰り返しながら進行した。私は数回観たことがあるけれど、ここまでまとまったものを観るのは初めて。

 実演は (1)二拍子で足を踏みしめる (2)一点凝視でしてゆっくり前進 (3)水平に等速移動、さらに手の等速移動を加える (4)立位・座位・立位を素早く繰り返して安定性を失わない (5)立位になる際に爪先立ち、あるいは片足立ち (6)目をつむって片足立ち (7)腰を着いて上半身・下半身を浮かせて手足を動かす (8)短い木刀を両手に持ち、アンバランスな状態での身体コントロール (9)ロコモーションと称する、チェーン状に連なって組合せ動作 など。

 (1)では床が振動し、客席にまで伝わるほど力強い。(2)では集中力がひしひしと伝わる。以下、一般的には腰を落とす、安定した身体の動き、などと言われることに繋がるだろう。

 全員・中国人・男性・女性のグループなどに分けての実演、訓練期間の長い俳優は安定感がある。特に目をつむった時の差は如実だ。ふくらはぎの筋肉の着き方も差がある。

 解説中に挟まれた言葉で気になったのは、好みになってはいけない。基準が必要。この訓練を修得すれば鈴木忠司の演劇に出演できる。中国なんかに差を付けられた、とは国立の訓練機関などのシステム化を差を指すのだろう。

 何度も見るものでもないと思うが、一度は見ておいたら良いでしょう。

   (2014年9月4日記録)

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