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2014年9月15日 (月)

演劇:SCOT Summer Season 2014 (5終)

5.シラノ・ド・ベルジュラック

  原作  エドモン・ロスタン
  演出  鈴木忠志

  出演  喬三(シラノ)   竹森陽一
      クリスチャン    藤本康宏
      ロクサーヌ     木山はるか
      ド・ギッシュ    加藤雅治 、他

  会場  野外劇場
  公演  2014年8月23日(土)、30日(土)
  鑑賞  2014年8月30日(土) 20:00~

 

 本作上演の両翌日も何演目か上演されている。ただ、野外劇場で上演される打ち上げ花火付演目、その後の舞台上の鏡割りを以って、二週間に渡って開催される演劇祭の中締め・本締めの雰囲気はある。

 野外劇場で上演される演目には、「世界の果てからこんにちは」「シラノ・ド・ベルジュラック」がある。

 前者は鈴木忠志演劇名場面集の感があり、利賀の野外劇場のみ(多分)で限定上演される。
 後者は通常の劇場、例えば新国立劇場(2010年7月)でも上演されるが、その時は当然のことながら打ち上げ花火は上がらない。利賀での上演は多少間延びしているとも言える。

 いずれもご祝儀物と思うから、細かいことを言うのは無粋だとは思う。それに、どちらも両手の指で数えるほど見てきた。何度となく雨に降られた。今年も、しとしと雨が降り続いた。上演前に雨合羽が配られる劇場も珍しいだろう。雨にも負けず、盛期には1000人ほどが、今年で600人強の観客が舞台を見守った。

 

 大筋は次のようだろう。
 シラノは従妹のロクサーヌを愛したが、ロクサーヌは美貌の兵士クリスチャンを愛した。シラノは、自分の気持ちをうまく表せないクリスチャンの恋文を代筆する。が、何のことはない、自分の思いの発露する。やがてロクサーヌはクリスチャンを愛すようになる。しかしクリスチャンは、ロクサーヌが愛すのは自分でなく恋文と気付いて、自ら望んで戦場の露と消える。ロクサーヌは尼寺に入るが、訪れたシラノが恋文をそらんじていることで、自分が愛したのはシラノであったと気付く。

 文机に座す作家・喬三の空想世界として物語は展開する。和服姿の喬三、すなわちシラノ、他の役者も和服、すべてが日本的風景に同化している。見事に鈴木忠志の世界である。

 主演は竹森陽一、失意のシラノが良く伝わる。ロクサーヌの木山はるかも美しい。ただ、野外劇場という大舞台では、多少線が細いと感じた。かっては、新堀清純と内藤千恵子が演じていたので、初めて見る組み合わせと思うが、そのせいもあるかと思う。しかし、SCOTの俳優が演じればレベル以上にはなっているところが凄い。スズキ・メソッドの目指すところでもある筈だ。

 喬三がなぜシラノなのか、なぜ和服を着ているのか、などの疑問を持つかも知れない。しかし、西洋人を真似ればリアルと言ない。リアルは、どうしたら表出できるのか。突き詰めた結果が、喬三のシラノであり、和服でも構わないということ。肝心なことは、シラノ、クリスチャンのやせ我慢とロクサーヌの女心。突き詰めれば男女の愛。

 音楽は、歌劇「椿姫」の序曲と乾杯の歌、バロック風と思える無伴奏ヴィオリン曲。鈴木忠志の音楽に関する見識も、からたち日記から椿姫まで広範だ。そして選曲も実に見事。

 花火について少し。始まってすぐに打ち上げ花火、これは景気づけ。
 クリスチャンの戦闘場面で左右から水平に走る花火、「射ち来る弾道見えずとも低し 三橋敏雄」を思い出す。後世の人間が尊崇の念を抱いたとしても、殺された人間にとって何の役に立たない。この場面では決まったようにそのことを思う。花火の効用だろう。
 最後にナイアガラが光の壁を作る中、失意のシラノが傘を掲げて、池の上の花道に去っていく。終演と同時に、夏(休み)の終わりも感じる。

 この後、舞台上で鏡割り。今年は富山県知事、建築家の磯崎新、名前を聞き損なったが二人の学者?が、二つの四斗樽に杵を落とした。富山県知事は、かって静岡県の総務部長の時代に静岡芸術劇場の建設に関わっていたとのこと。磯崎新は、利賀村の野外劇場他、水戸芸術館、静岡芸術劇場の設計者。鈴木忠志の人脈も華麗、それも大事だと思う。

   (2014年9月15日記録)

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