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2014年9月 5日 (金)

演劇:SCOT Summer Season 2014 (2)

2.からたち日記由来

  作    鹿沢信夫
  演出   鈴木忠司

  出演   母親・チエコ  内藤千恵子
       長男:タカト  平垣温人
       叔父・ミチトモ 塩原充知

  会場   利賀山房
  公演   20114年8月22日(金)、29日(金)、31日(日)
  鑑賞   2014年8月29日(金) 21:30~

 

 俳優には過酷な演出である。と言えば、舞台狭しと動き回るエネルギ多消費の身体表現を想像されるだろうか。実際はその逆。正座したまま、上演中は寸分たりとも位置を変えない。上半身は、座卓に突っ伏したり、楽器を演奏したりはする。しかし、その程度の動きで1時間強、観客の興味を繋ぎとめる俳優のリアリティ、強靭な精神・肉体に驚嘆した。舞台を終えて男優は這いずって退場した。これは演技でないだろう。同一の詩姿勢を保ったために、単に立ち上がれなくなっただけだろう。

 茶の間だろうか、母親を真中にして3人は座っている。母親の傍らにチンドン、時々狂ったように「からたち日記」を歌い、客に聞かせた講談「からたち日記由来」を語りだす。長男は着流しでハーモニカを持ち、叔父は派手な姿でクラリネットを手にする。
Karatati

 多くのひとに愛された歌謡曲「からたち日記」は、島倉千代子の歌唱により1958年に大ヒット、『しあわせになろうね・・・』に始まる長いセリフが入る。ところがこの歌詞は大戦前の大正時代に書かれた、とは講談作者の主張。

 歌詞を作ったのは枢密院副議長、芳川顕正伯爵の娘・芳川鎌子。
 学習院を卒業した鎌子は結婚して一子を設けるが、夫との家庭生活に不満を感じて、芳川家の専属運転手との恋愛関係に陥る。やがて二人は列車に飛び込むが、鎌子だけが生き残る。この事実は、やがては天皇制打倒に至るかも知れないと政治問題化する。鎌子は芳川家を除籍され、尼になり、信州の寺で人生を終える。残された日記に、歌謡曲「からたち日記」の歌詞が書かれていたと言う。

 『いのち短し 恋せよ乙女』と歌われる「ゴンドラの唄」、『行うか戻ろか オーロラの下を』と歌われる「さすらいの唄」も交えて時代が暗示される。クラリネットを吹き、ハーモニカを吹き、チンドンをかき鳴らして、チンドン屋を稼業としていた一家であることを浮かび上がらせる。あるいは鎌子が、運転手が乗り移っていたのだろうか。

 内藤千恵子は、かってアガウエやロクサーヌを演じているが、今回の母親役も狂気を帯びて大いなる存在感を示した。平垣温人にしても、塩原充知にしても同じ。これだけ動きのない芝居を演じて客の緊張感を繋ぎとめるのは、ひとえに役者の非凡さだろう。

 作者・鹿沢信夫、初めて聞く名前だ。鹿沢信夫は、鈴木忠司や別役実と同じ学生劇団に所属した学生活動家、卒業後は貧しい人たちのために社会活動に従事したが、肺結核のため36才で夭逝したそうだ。しかし、鈴木忠司が若い時に書いた戯曲と言っても違和感はないのだが、まさかどっきりなどということはないだろうけど。

 ところで、鹿沢信夫の脳裏に焼き付いていた未来はどんなものだったろか。残り少なくなったとはいえ、今、私も考え直す時期かも知れない。あるいは貴方も。世間を眺めまわして。

 写真引用:http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20140823/CK2014082302000034.html

   (2014年9月5日記録)

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