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2014年9月22日 (月)

演劇:静岡県舞台芸術センター「マハーバーラタ ~ナラ王冒険~」

  演出    宮城聰
  台本    久保田梓美
  音楽    棚川寛子
  空間構成 木津潤平

  出演    語り      阿部一徳
         ダマヤンティ姫 美加理
         ナラ王     大高浩一 他

  会場    神奈川芸術劇場・大ホール
  公演    2014年9月12日(金)・13日(日)、全3公演
  鑑賞    2011年9月13日(日) 18:00~19:50
  参考    公式HP

 

 演劇は概ね楽しいが、稀には楽しさを突き抜けて至福を感じることさえある。その一つに、この「マハーバーラタ ~ナラ王冒険~」を加えて良いだろう。

 マハーバーラタは古いインドの叙事詩。このエピソードは貴種流離譚、貴種漂流譚とも。
 ダマヤンティ姫は神々さえ虜にするほどの美しさだが、姫が選んだ夫は人間のナラ王。王は逆恨みした悪魔カリに呪いをかけられ、王の弟との賭け事に負け続けて、国さえ取られてしまう。落ち延びる王に健気に付き沿う姫。しかし、疲れて眠る姫の片袖を切り取って身にまとった王は、一人立ち去ってしまう。さて、王と姫の先行きは如何に、結末は如何に。

 通常は舞台の位置に、3mほどの高さのドーナツ形舞台が仮設されている。大きさはホール幅にほぼ等しい。正面手前に一段低くなった演奏用ステージ、そこに多くのパーカッション多が置かれている。いつもは客で埋まる階段状客席が、仮設舞台後方のさらに後方に見えている。
 正面での演技が多いことは言うまでもない。しかし舞台は、ある時は長い道のりを表し、ある時は異なる空間を左右に出現させて、自由自在に場面転換する。ある時は役者が客席に降り、ある時は壁のモンキータラップを昇る。

 音楽演奏で舞台が始まる。10人のパーカッション奏者、ポジションは頻繁に入れ替わる。楽器は見上げるような位置に置かれているので判らないし、見えても民族楽器主体のようで判らないけれど。音楽の種類はガムラン風だが、金属的な響きは強く無かったか、あるいは全く無かったように思う。
 身体表現に寄り添いながら、心理描写や情景描写に深みを加える。打撃音だけでまとめた音楽が雄弁。奏者が足腰でカウントを取りながら、目の前で生演奏を繰り広げる様も楽しい。実は役者らしいが、途中の出入りは舞台に載っていたということか。

 衣装デザインは高橋佳代。恐らく王は束帯、姫は十二単。他の役者も平安期の衣装風俗。そして、全ての衣装の色は象牙色。漆黒の野外舞台では息を呑むほどに、さらに美しく見えることだろう。衣装に心動かされることは少ないけれど、見事な仕事だ。

 俳優は皆達者でSPAC15年の歴史が伝わる。設立当初は時々出かけたが、ACMからの移籍者など鈴木忠志のカンパニーだった。その名残はあると思うけれど、7年を経て、SPACが宮城聰のカンパニーになっている。久しぶりにSPACを観るので、余計にそれを感じる。

 一部配役、それは帝釈天など仮面を付けた役だが、演技するムーバーと台詞を発声するスピーカーの役者が一体となって表現。発声の負担を軽減されたムーバーの大きな身体表現が、神の存在の大きさに繋がる。

 美加理の存在は大きい。SPAC所属か客演か未確認だが、それはさして重要でない。とにかく、この役者には華がある。声も清々しい。そのままで、美しいダヤマンティ姫の存在を納得させてしまう。ただ、それだけでない演技の確かさもあるし、モンキータラップを昇ったのが実は美加理という、機敏さも併せ持つ。

 進行中に現れる作り物も楽しい。ダヤマンティ姫を襲うトラ、象の鼻を模した作り物で押し寄せる大群の表現、おかしくも美しくも感じられる。
 遊び心も楽しい。姫の名前にこじつけてダヤマン・ティの宣伝、ナラ王が客席を彷徨、ある役者が客席に降りて特製手拭(?)を客にプレゼント、舞台上からの手拭撒き。そしてご当地サービスで「よこはま・たそがれ」を歌唱。

 貴種流離譚、エピソードの流れは大方の想像がつくけれど、110分の間、客の意識をそらさない演出も素晴らしい。既に述べたことの他に、多国籍の要素を集めたことも魅力的な舞台になった大きな要因。この公演はアヴィニョン演劇祭凱旋公演と銘打たれているが、西洋の客には異国情緒を、日本の客には近しい東洋の雰囲気を存分に感じさせる。すなわち、多国籍ながら東洋の集合体。異文明、異国が対峙ではなく、お互いに認め合えることを示した点も、特筆して良いだろう。政治の言葉が信じがたい昨今、確かな文化交流・民間交流が実践されたことだろう。

   (2014年9月22日記録)

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