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2014年9月 1日 (月)

美術:金沢21世紀美術館開館10周年記念 「レアンドロ・エルリッヒ ― ありきたりの?」

  名称   レアンドロ・エルリッヒ ― ありきたりの?
  会場   金沢21世紀美術館
  会期   2014年5月 3日(土) ~ 2014年8月31日(日)、会期終了
  鑑賞日  2014年8月28日(木)

  参考   公式ホームページ
       レアンドロ・エルリッヒ展の遊び方 芸術新潮 2014年7月号 P80-85

 

 レアンドロ・エルリッヒ、って誰。あなたが21世紀美術館に行ったことがあるならば、「プール」の制作者と言えば、ああ、とうなずかれるだろう。通称「レアンドロのプール」、正式には「スイミング・プール」、多くのひとに愛される作品の制作者。

 私が思う21世紀美術館の顔となる制作者は、多い。コミッション・ワークの制作者では、フロリアン・クラール(アリアのためのクラングフェルト・ナンバー3)、レアンドロ・エルリッヒ、アニッシュ・カプール(世界の起源)、ジェームス・タレル(ブルー・プラネット・スカイ)。コレクションの制作者で印象深いのは、ヤン・ファーブル(雲を測る男(いつも屋根の上に))、オラファー・エリアソン(反視的状況(展示中))、船越桂(冬に触れる)、ヤノベケンジ(タンキングマシーン(展示中))。

 この中には、既に21世紀美術館で個人展開催の制作者もいる。他の美術展で多く取り上げられた制作者もいる。作品の性格上、個人展にまとめにくそうな制作者もいる。そういう観点で絞り込めば、レアンドロの個人展は日本初だし、21世紀美術館を代表する作品の制作者の一人だし、10周年記念企画としてまことにふさわしい。

 

 「見えない庭」は、八角形の温室風の小さな建物に鏡が仕掛けられて、光景は連続するのに反対側に見えない部分が生じる。すなわち、向う側の人が見えなくなったりする。暫くは不思議感が漂って周囲を何周かした。

 「エレベータ・ピッチ」は、壁にエレベーターのドアーがしつらえてあって一定間隔で開閉を繰り返す。ドアーが開けばそこには大型のディスプレイに投影されるエレベーター内の客の姿、様々な客の姿を映し出す。

 「階段」は、ビルの螺旋階段を切り出して真横に倒したような作品。立ったままにして、ビルの最上階から真下を見下ろす雰囲気になる。

 「リハーサル」は、部屋半分に奏者が抱えたような位置にヴァイオリンやチェロが置かれ、残る半分には椅子にボー(弓)が置かれている。客がボーを人が構えると、ハーフミラーに、あたかも演奏しているような己の姿が合成される。

 

 全部で8作品、「スイミングプール」を加えれば9作品が展示された。「スイミング・プール」から想像できるように、レアンドロの作品はどれもユーモアとアイデアに溢れていた。美術あるいは現代美術などと堅苦しいことを言わずに、老若男女、誰にも親しまれる作品が並んでいた。

 レアンドロは1973年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。まだ若いし、これから多くの作品を発表するだろう。作風も変わっていくかも知れないが、いまはこれで良い。美術あるいは現代美術の垣根を低くした功績は大きい。でも、首を傾げさせるような作品も、いつか発表されることを期待したい。

 ところで、金沢21世紀美術館の開館は2004年10月9日。当時は働いていたが、社内報に掲載された美術館全景を見て驚いたことを記憶する。美術館らしからぬ美術館。鑑賞は、夏の旅行中に寄るだけなので、まだ6・7回。遠方ゆえ断片的な情報にしか接しない。でもこの十年間の足跡は見事だと思う。益々の発展を祈念したい。

   (2014年9月1日記録)

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コメント

エルリッヒの個展は日本初ですか。
スイミングプールは初めて見た時から惹かれました。
きっと多くの鑑賞者がそうであろうと思います。
これからが楽しみですね。

投稿: strauss | 2014年9月 2日 (火) 02時54分

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