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2014年7月 8日 (火)

舞踊:Noism1&Noism2合同公演 劇的舞踊『カルメン』

  演出振付 金森穣
  音楽   G・ビゼー(カルメン)オーケストラ版&組曲版&交響曲版より
  衣裳   Eatable of Many Orders
  家具   近藤正樹

  出演   カルメン/野生の女  :井関佐和子
       ホセ/理性の男    :中川賢
       ミカエラ/許婚の女  :真下恵
       マヌエリータ/仇敵の女:青木枝美
       スニガ/権力の男   :角田レオナルド仁
       メリメ/旅の学者   :奥野晃士(SPAC)

  会場   神奈川芸術劇場
  公演   2014年6月20日(金)~22日(日)、全3公演
  鑑賞   2014年6月20日(金)・22日(日)

 

 何がしかのフラストレーションを抱きつつ、今までに観たNoism公演とは異なる新しい表現も楽しんだ。

 上演時間は「序幕+1幕:37分、休憩:15分、2幕+3幕+終幕:75分」。
 これだけ踊り続けるのは大変だと思いつつ早めに席に着く。既に舞台上手前方の書斎を模したセットでメリメが原稿を書いていた。これで、おおよその見通しはついた。メリメの頭の中を去来する出来事という二重構造が。

 脚本はクレジットされていないが、演出振付の金森譲。
 昨年の利賀サマーシーズン会場で金森譲一行を見かけた。井関佐和子の舞踊を見たのは、静岡芸術劇場における鈴木忠司演出「歌劇・椿姫」中に挿入されたもの。神奈川芸術劇場の何の公演後であったか、鈴木忠司と金森譲が話し込む様子も見かけた。これらを繋げば、金森譲が鈴木忠司の影響を受けていないとは言い難い。悪い意味ではないし、評価はあくまでも作品で。

 数回観た神奈川芸術劇場のNoism公演の客の入りは、目見当で6・7割。本公演はほぼ満席で破格の入り。「カルメン」ゆえか、クラシカルなスタイルが想像できたからか。既に新潟公演を終えての評判が届いたか。ともかく喜ばしい。

 

 開演、フード付きコートの裾を引きずるように一人の人物、実はカルメンの亡霊がメリメの背後に現れ、手を取って原稿を急がせる。やがて人物は舞台中央のスクリーンの内側に入って影絵の登場人物になった。ストーリーが展開していく。影絵は、この後も要所に登場して経過説明的な要素を担った。終演間際、カルメンの亡霊はメリメの手をなお一層激しく動かさせて原稿の完成を急がせる。

 ただ一人登場する俳優・奥野が晃士、SCOT系列の確固たる身体表現。加えて人形振り風の舞踊?も見せた。以前見たNoism公演の「中国の不思議な役人」の一場面を彷彿させた。

 この辺りが劇的舞踊と言われる所以だろう。

 

 カルメンは素足、胸まである長髪のウィッグを付け、黒や濃い色の裾の長いワンピースを着けた井関佐和子が実に華奢に見えた。しかし、どたどた歩いたり、脚を大きく広げて腰を落としたり、裾から出た脚の表現にまでカルメンらしさを漂わせて力強い。ソロも、ホセとのパ・ド・ドゥも、実は繊細にして自由奔放に生きる野生の女を印象付けた。

 井関に勝らずとも劣らない感動を与えたのがミカエラの真下恵。シューズを付けて、カルメンとは対照的な人物を特徴づけた。ソロにしても、ホセとのパ・ド・ドゥにしても、これまた感動的。テクニックを見極める目を持たないけれど、それでも伝わったホセを一途に慕う女心。一場面の舞踊だけ取っても充分に劇的だ。涙腺が緩む。

 20日・22日の2回鑑賞したが、22日の真下がデュオを踊り終えた時に一人が拍手をした。感動を抑えきれなかったのだろう。私も両日、同じような気持ちを抱いたが、素直に表出できなかったことを悔やむ。

 どの舞踊場面もシャープで緊張感を保った。クラシカルな雰囲気を色濃く感じた。休憩時間に、ジプシーの女たちがロビー・客席を徘徊したのが面白かった。すぐ隣に座るジプシーの女の表現に威圧感を覚えた。
 衣装も配役ごとに特徴を捉えて美しく、迅速な転換を含めて舞台美術も素晴らしかった。それらに比して音楽は、色々な音源から採られたそうでいささか印象は薄かった。

 

 フラストレーションの要因は劇的な部分。言い換えればもっと舞踊を見たい、舞踊に徹して良いと思ったこと。しかし、いつもになく多くの客を引き寄せたのも、その部分だっただろう。

 劇的舞踊の言葉からピナ・バウシュなどのタンツテアターが思い浮かぶけれど、もちろん一線を画す。私はタンツテアター的なもの、舞踊に徹するコンテンポラリーの方が好きだと思った。例え、理解が難しくても。もちろん好みの問題である。

 これからNoismがどのような方向性を選んだとしても、舞踊ファンを魅了することは間違いない。私も欠かさず通うだろう。願わくば、長い先を見据えて活動を絶やさないように。それはNoismの課題と言うよりは、客に突きつけられた課題だろう。そんな思いを強く感じた。

   (2014年7月7日記録)

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コメント

記憶をたぐりながら拝読。
一部は舞踊が少なかったので、物足りない思いで休憩を迎えました。このまま行くのだろうかって。それはそれで面白いのですが、生で観る初めてのNoism、もっと舞踊が観たいと内心穏やかではなかったのですよ。
でも、二部は良かったです!劇的な部分があまりに鈴木風で、影響を受けているにしても?まあ、得したと思えば、それもありかと(笑)
お忙しい中、チケットありがとうございました!

投稿: strauss | 2014年7月 8日 (火) 22時34分

良かったですね。それを強調しなければいけなかったですね。
的を射た表現になるか判りませんが、以前見たのを能に例えれば、今回は歌舞伎ですかね。華やかな面が出ていました。その分深みは減ったような。
10周年記念作品だから良いけれど、続くとしたらちょっと考えます。機会あれば通常作品をぜひご覧になって下さい。無理か~。

投稿: | 2014年7月 8日 (火) 23時49分

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