音楽:神奈川フィル第296回定期演奏会
指揮 飯守泰次郎
演奏 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲目 W.ワーグナー :
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
ブルックナー :交響曲第7番
会場 横浜みなとみらいホール(1階13列22番)
公演 2014年2月22日14:00~16:00(休憩20分)
心に沁み入る演奏だった。飯守は、艶やかながらも少しくすんだ、渋味ある音を引き出したと感じた。他人の言葉を借用すれば「何も足さない何も引かない」。こういう演奏がスタンダードと言えるのだろう。ここでスタンダードは平凡を意味しない。
生の演奏は良い。そう思っても、演奏会場に足を運べないファンもいるだろうし、私自身も先の予定など立たない時期もあった。最近、生演奏を聴ける幸せを感じている。まして、それが名演奏ならば。
記憶に新しい前回定期のゲッツェルは艶やかで張りのある音を引き出した。それにしても神奈川フィルは、各指揮者の要請に答えつつ、深みのある美しい音を響かせている。最近の響きを特に好ましく感じる。
交響曲第7番
ライブで聴く初めてのブルックナー。
第1楽章、チェロにホルンが重なって奏でられる第1主題、厳粛さを感じた。チェロは言わずもがな、ホルンも私が聴きだした4年前より実に堂々として、見事な演奏と感じた。オーボエとクラリネットが奏でる第二主題、その後の意外性のあるフルートとクラリネットの動機も美しい。各パートの充実が輝かしいトゥッティで結実、早くもオーケストラの醍醐味を感じた。
今まで疎遠であったブルックナーが、急に身近に感じられた。
第2楽章、チューバが悲しげな動機、続く弦の響きの荘厳さ。ヴァイオリンの第2主題の後にも繰り返される。ワーグナーの病気と死が背景に横たわっていることを知らなくても、荘厳さと厳粛さを十分に感じられただろう。そして消え入るように終わる。ブルックナーの思いを、飯守と神奈川フィルが見事にリアライズした。
第3楽章、トランペットとクラリネットがリードする第1主題、力強いトゥッティが繋がる。まるでワーグナーの死を乗り越えて行く意思を顕示しているようだった。トランペットを初めとする管が見事。まさに管弦楽だが、コーダで長く打ち鳴らされるロール打ちのティンパニーもまた印象深かった。管弦打楽だ。
第4楽章、弾むように第1主題、たゆたうように第2主題。そして第1主題の動機のトゥッティで断ち切って、力強くあるいは穏やかに展開する。そして輝かしいトゥッティで終わる。
多くの死を乗り越えなければならないことを音楽に託しているかのようだ。まあ、私の感じ方に過ぎないけれど。
繰り返しになるが、飯守と神奈川フィルが見事。そして、私にとっては、疎遠であったブルックナーを身近に感じられたことが大きな成果だった。
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
演奏順と逆になるが。
ブルックナー7番の第2楽章が、ワーグナーの死を契機として作曲されたことを印象付けるプログラム。脈絡の無いプログラムの時もあるけれど、今回は切り離せないだろう。そして、良く知るわけでもないが、ワーグナーから選ぶとすれば、内容的にも時間的にも、この曲に行き着くだろう。的を射ているか否かは定かでないが、そういうことを考える面白さも少し感じ始めている。
演奏については、ブルックナーで感じた印象と変らない。文頭の総括に尽きる。
(2014年2月27日記録)
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