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2014年2月

2014年2月27日 (木)

音楽:神奈川フィル第296回定期演奏会

  指揮     飯守泰次郎

  演奏     神奈川フィルハーモニー管弦楽団

  曲目     W.ワーグナー :
           楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死
         ブルックナー :交響曲第7番

  会場     横浜みなとみらいホール(1階13列22番)
  公演     2014年2月22日14:00~16:00(休憩20分)

 

 心に沁み入る演奏だった。飯守は、艶やかながらも少しくすんだ、渋味ある音を引き出したと感じた。他人の言葉を借用すれば「何も足さない何も引かない」。こういう演奏がスタンダードと言えるのだろう。ここでスタンダードは平凡を意味しない。

 生の演奏は良い。そう思っても、演奏会場に足を運べないファンもいるだろうし、私自身も先の予定など立たない時期もあった。最近、生演奏を聴ける幸せを感じている。まして、それが名演奏ならば。

 記憶に新しい前回定期のゲッツェルは艶やかで張りのある音を引き出した。それにしても神奈川フィルは、各指揮者の要請に答えつつ、深みのある美しい音を響かせている。最近の響きを特に好ましく感じる。

交響曲第7番

 ライブで聴く初めてのブルックナー。

 第1楽章、チェロにホルンが重なって奏でられる第1主題、厳粛さを感じた。チェロは言わずもがな、ホルンも私が聴きだした4年前より実に堂々として、見事な演奏と感じた。オーボエとクラリネットが奏でる第二主題、その後の意外性のあるフルートとクラリネットの動機も美しい。各パートの充実が輝かしいトゥッティで結実、早くもオーケストラの醍醐味を感じた。
 今まで疎遠であったブルックナーが、急に身近に感じられた。

 第2楽章、チューバが悲しげな動機、続く弦の響きの荘厳さ。ヴァイオリンの第2主題の後にも繰り返される。ワーグナーの病気と死が背景に横たわっていることを知らなくても、荘厳さと厳粛さを十分に感じられただろう。そして消え入るように終わる。ブルックナーの思いを、飯守と神奈川フィルが見事にリアライズした。

 第3楽章、トランペットとクラリネットがリードする第1主題、力強いトゥッティが繋がる。まるでワーグナーの死を乗り越えて行く意思を顕示しているようだった。トランペットを初めとする管が見事。まさに管弦楽だが、コーダで長く打ち鳴らされるロール打ちのティンパニーもまた印象深かった。管弦打楽だ。

 第4楽章、弾むように第1主題、たゆたうように第2主題。そして第1主題の動機のトゥッティで断ち切って、力強くあるいは穏やかに展開する。そして輝かしいトゥッティで終わる。
 多くの死を乗り越えなければならないことを音楽に託しているかのようだ。まあ、私の感じ方に過ぎないけれど。

 繰り返しになるが、飯守と神奈川フィルが見事。そして、私にとっては、疎遠であったブルックナーを身近に感じられたことが大きな成果だった。

楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死

 演奏順と逆になるが。
 ブルックナー7番の第2楽章が、ワーグナーの死を契機として作曲されたことを印象付けるプログラム。脈絡の無いプログラムの時もあるけれど、今回は切り離せないだろう。そして、良く知るわけでもないが、ワーグナーから選ぶとすれば、内容的にも時間的にも、この曲に行き着くだろう。的を射ているか否かは定かでないが、そういうことを考える面白さも少し感じ始めている。

 演奏については、ブルックナーで感じた印象と変らない。文頭の総括に尽きる。

   (2014年2月27日記録)

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2014年2月22日 (土)

美術:「写真の境界」

  名称   写真の境界 Boundaries of Photgraph
  会場   横浜市民ギャラリーあざみ野 展示室1
  会期   2014年2月1日(土)~2月23日(日) 、詳細は要確認
  鑑賞日  2014年2月19日(水)

  参考   公式HP

 写真の境界とは何か、興味をそそられて出かけた。そして、写真技術と作品処理の境界の存在を感じた。

 ダゲレオタイプに始まる写真技術を長いこと支えたのは、光学と化学技術。近頃は、電子技術が化学技術を大分侵食したが、化学技術が全く廃れた訳でない。これに撮影技術が加わる。

 さらに、プリントされた作品に処理を施したりして、ディジタルとアナログ世界を行き来したりもする。複雑な境界と言えるし、確固たる境界などないとも言える。

 作品展示は、順に多和田有希・春木麻衣子・吉田和生。

 春木は伝統的な写真技術による作品作り。作品は、ネガポジ法によるタイプCプリントで制作されている。こだわりは、撮影対象の厳選のようだ。

 暗い室内から明るい外の風景を撮影した作品「okinawa01」。開口部は添え物と思えるほど黒地が多い。あるいは、大半が白く抜けて残るわずかな部分に風景が留まる作品など。白い部屋に白基調の作品、黒い部屋に黒基調の作品が展示されていた。
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 多和田はインクジェットプリント使用。加えてニードル・消しゴム・サンドペーパー。ニードルは彫刻用具だろう。すなわち、インクジェットプリントで仕上げた作品を、ニードル・消しゴム・サンドペーパーで加工する。プリントを素材にした彫刻か。

 「White Voice 2」。この光景は岡山県西大寺の会陽だろうが、それに大きな意味はないだろう。人と人の隙間などに白い何かが塗られているようで、実は作品を引っ掻く・擦るなどして色を消し去っている。発露されたエネルギーの表現か。
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 「Continental Drift Theory 3」。これも同様に処理。道路は自動車のライトで明るく輝き、ビルからは上空に向けて投光されているようだ。都市が放出するエネルギーか。
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 吉田もインクジェットプリント使用。ただし画像加工している。

 集めた写真をPhotoshopで重ねた作品「Air Blue」。雰囲気は感じられるが、ベースの写真は「富士の原生林、木があって、その上に空がある。木と木の葉っぱの間にできている空を撮影」だそうだ。
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 「Makros」。空の写真を、インクを全く吸収しない紙に出力したら、インクが水滴のまま紙に乗った状態になった。それを撮影したり、スキャンニングしたそうだ。撮影・プリント・撮影・プリントの過程を経ている。さらに繰り返されているだろうか。
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 伝統的な写真技術を取り囲む境界を仮定すれば、その内側で作品処理の境界に抗おうとするのが春木。ハイキー、ハイコントラストな写真とも言えそうだが、対象への迫り方に独特な心構えがあるようだ。

 境界の外側にいるのが多和田・吉田。写真は作品制作の素材で、もはや写真の言葉を使わなくても良いだろう。別に否定する訳でなく、固有の名称・ジャンルが形成されても良いとの意味だ。

 私は多和田の作品に親近感を抱いたが、それは別にして、新しい世界を垣間見ることは刺激になる。私と同時に鑑賞していたのは数名、もう少し入場者がいても良いように思った。

   (2014年2月21日記録)

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2014年2月15日 (土)

俳句:本尊は未完の鉈彫り春の雪

 とにかく3年間は黙々と続けようと思ってカルチャースクールの俳句教室に通い初めました。早いもので、昨年末で3年が過ぎました。これからは、少しまともな句が出来たらお披露目しようかと思います。もっとも、まともと思うのは本人の主観で、よそ様がどう思うかは無視します。図版・写真と組み合わせて、季節季節の雰囲気が伝われば良いかと思います。自句への言及はしませんが、参考になることがあれば多少は付記をして。
Photo

 今回使用の図版は、「瑞應山蓮華院弘明寺」の木造十一面観音立像です。未完に見えて、実は完成しているとも。お顔の彫りは、お体よりさらに細かい。
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 京浜急行弘明寺駅至近、子どもの頃から国宝弘明寺観音として認識していました。と言っても寺で拝観したことは無く、東京国立博物館の企画展(*1)に出展されていたのを観ただけです。円空とも木喰とも随分と違う鉈彫り。常時拝観できるか否かは未だ未確認です。もう一度拝観したいと思っていますので、今度、確認します。

 *1 特別展 仏像 一木に込められた祈り
       2006年10月3日-12月3日 東京国立博物館

  (2014年2月15日記録)

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2014年2月 5日 (水)

路上観察:横浜金沢の古道・白山道(2014年2月3日)

 横浜金沢と鎌倉を結ぶ古道に、海を迂回する白山(しろやま)道がありました。往時、金沢周辺の地形は現在と大きく異なり、海が奥深く入り込んでいました(途中の福祉施設前の掲示「福祉施設周辺の史跡案内」から。設置者:横浜市健康福祉局生涯支援課)。
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 現在の白山道は、宅地開発などに影響されて途中で途切れています。それを承知で行ける所まで歩きました。何か古を思わせるものがあるのではないかと思って。当日の歩行ルートは次のとおり、約8Kmでした。なお、歩くに際しては横浜金沢観光協会の「白山道(*1)」を参考にさせて頂きました。

 

 起点は京浜急行金沢文庫駅。

 「稲荷社」。案内がなくて詳細は不明。新しいもののようでした。
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 「正法寺」。奥の「赤井不動尊」まで登りました。見下ろせば家並みが続きますが、往時は海が広がっていた筈です。
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 「手子神社」。文明5年(1473)、釜利谷の領主・伊丹左京亮が瀬戸神社の御分霊を宮ヶ谷の地に勧請したのが創始と案内にあります。金沢八景「小泉夜雨(*2)」はこの付近を描いたようで、松の下の祠が移築されたのが境内社の「竹生嶋弁財天社」だそうです。
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 「六郎橋」で右手に進みます。そのまま進めば六浦方面に至ります。

 「東光禅寺」。山号は白山。この辺りまでくると崖沿いに曲がりくねった道が続き、古道の雰囲気を感じます。ただし、住宅が途切れることはありません。
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 「日月社?」。やぐらに六地蔵などが祀られていました。周辺に案内もなく詳細は不明。
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 「白山社」。四つのやぐらに様々なものが祀られていました。左から二つ目のやぐらが一回り大きく、その右側の石柱に「鎮守 白山妙理大権現」と刻まれていました。妙理はすぐれて奥深い道理の意。
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 「白山磨崖仏」。しっかりした案内があったのですが実物は確認できませんでした。写真の案内板の奥の崖の草に覆われた辺りだそうです。しげしげと眺めていたら、通りかかったおばあさんが「見えなくなっちゃって」と、気の毒そうに声を掛けてくれました。
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 さらに進むと、道は関東学院大学の構内に突き当たります。塀に沿って左手に回ると、山への登り口がありました。この山道は「鼻欠地蔵」にいたる筈ですが、当日は進むのを止めて戻ることにしました。
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 「六郎橋」まで戻ってから六浦方面に進みました。

 「六郎重保五輪塔」。道から少し奥に入ったところなので、進行方向左側に要注意です。
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 「白山トンネル」。信号による交互通行、抜ければ六浦。
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 「上行寺東遺跡」。上行寺の背後の丘の上でした。確かマンション建設の際に見つかったのだと思います。案内に寄れば、元の遺跡を正確にコピーしてGRC(ガラス強化コンクリート)で復元したものだそうです。道理で歩いた時にボコッという音がしました。
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 見下ろせば上行寺の大屋根、民家の家並み。上行寺の門前が海だったなど思えません。後は、京浜急行金沢八景駅を目指します。
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 家並みの途切れることはありませんが、想像を逞しくすれば、やぐら、古寺、曲がりくねった細い道から古が蘇ります。白山道は関東学院大学の敷地で行く手を阻まれましたが、地図上を直進すれば、横浜横須賀道路の朝比奈ICを横切って鎌倉天園に向かうハイキングコースに繋がります。左手に90度折れて六浦道から朝比奈峠に向かうと解説する案内もありますが、私は直進する道が白山道であると確信しました。朝比奈をその一帯の地名と考えれば矛盾も生じません。今後、そこに言及した文献等を見つけたいものです。

 *1 http://www.yokohama-kanazawakanko.com/course/course_list/course004.html
 *2 http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Hiroshige,_Two_men_on_a_sloping_road_in_the_rain.jpg

  (2014年2月4日記録)

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