演劇:タイニーアリス「韓国新人劇作家シリーズ第二弾」
1.「ピクニック」
作 キム・ヒョンジョン
演出 金世一
出演 母親 久保庭尚子
女 生井みずき
映像・人形遣い 前川衛
2.「罠」
作 ホ・ジンウォン
演出 鈴木アツト
出演 カメラ屋の客 本家徳久
カメラ屋の店員 保亜美
カメラ屋の店長 広田豹
警察官 加藤亮祐
会場 タイニーアリス
公演 2013年11月27日(水)~12月1日(日)
鑑賞 2013年11月28日(火) 15:00~17:00
参考 公式HP
三作品のうち二作品を組み合わせて上演している。今回見られなかった一作品は、作:イ・シウォン、演出:荒川貴代の「変身」。
1.「ピクニック」
作品を貫く主題は、「老人性痴呆の進んだ母親。我が子を亡くしながら、母親を見続けて来た娘。緊張と弛緩を繰り返しながらも二人は生き続けなければならない」と言うことだろう。
芸達者な二人の対峙は、いやがおうにも緊張感を高める。母親の髪の毛を掴んで引きずり回すような、激しい瞬間もある。弛緩した状態は、二人とも真っ白な衣装に着替えて表現する。亡くなった子供は操り人形で演じるが、母親は虚実の境で認識し、女には深い傷跡として残っている。
家族単位が小さくなって、一人一人が分担する役割が大きくなっていることは事実だ。多くが直面する、韓日の、洋の東西を問わない普遍の課題のように思える。社会の変化と言ってしまえばそれまでだが、ホ・ジンウォンが大きな課題に果敢に挑戦した意欲は十分に感じられた。ただ報道等で知る現実世界が、実はもっと劇的であることをどう捉えるか。その辺りが窺えるようになると、より興味は増すだろう。
2.「罠」
カメラ店のカウンター。閉店間際にやって来た客が、昨日白いカメラを買った筈だが、箱の中身が黒だったので交換可能かと訊ねる。店員が、もちろん交換可能だと言うが、何かそれ以上を要求したそうな客。その煮え切らない態度に手を焼く店員。店長、警官を巻き込んで、言葉の戦いが続く。
キャスター付きカウンターは舞台上を自由に移動・回転し、客と店員の位置関係は固定しない。そればかりでなく、言葉の戦いの優劣ささえ暗示するように動き回る。現代の様相を巧みに取り込んだコメディーだが、店員役の保亜美(たもつあみ)の存在が時代を特定していると感じた。
どちらも現代をよく観察した作品。韓国も日本も、生活や考え方の差は無くなりつつあるのだろうか。恐らくそうなのだろう。ただ、そこで留まっているように感じられ、そこから如何にはみ出して行くか、それを今後期待したい。「韓国新人劇作家シリーズ」と銘打った舞台だが、韓国を除いたとしても十分通用すると思う。国同士の関係がギクシャクする中、ささやかであっても、このような企画が継続することは貴重だ。さらなる発展を祈念しておく。
(2013年12月2日記録)
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