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2013年12月 6日 (金)

演劇:劇団MODE「失踪者」

  原作    F.カフカ
  構成・演出 松本修
  音楽    斉藤ネコ東欧ユダヤ系のクレズマー音楽
  振付    井手茂太

  出演    カール3、他  笠木誠
        カール5、他  泉陽二
        カール4、他  小谷真一
        カール1、他  江藤修平
        カール2、他  力徳朋   他

  会場    座高円寺
  公演    2013年12月1日(日)~4日(水)
  鑑賞    2013年12月1日(日) 17:00~19:50(休憩10分)

 

 「MODEカフカ・プロジェクト2013」と銘打ち、「失踪者」「審判」「城」を半月余りで連続上演する。2001年の「アメリカ(失踪者)」を皮切りに、カフカ作品をたびたび取り上げてきたMODE。2007年には「審判」「失踪者」を連続上演している。それにしても、過去上演では3時間以上を要した3部作の連続上演は衝撃だ。

 折りに触れてMODOを観てきた私としては、3部作連続上演を知った時点で、それが無謀か快挙か、見届ける義務があるように感じていた。MODEがカフカを取り上げなければ、恐らく私がカフカ作品を読むことはなかっただろう。この刺激に満ちた作品、暗雲漂う現代にも通じる作品に触れた喜びは大きい。「読んでから観るか、観てから読むか」、どちらからでも繰り返せば、一歩づつカフカの迷宮にはまり込んでいくだろう。

 

 舞台奥の上手から下手まで、2階相当の客席に向けて凸状の作業床、柱で支えているので下部の移動は自由。上・下手に固定の、中央に移動可能な階段が架けられている。場面転換は、テーブル・椅子などの小道具を役者が持ち込んだり・持ち出したりして行う。これだけの大道具小道具で、ニューヨークに入港した船のデッキにもなるし、ホテル・オクシデンタルのエレベーター・ホールなどにもなる。

 井手茂太振付の変な踊りが、場面転換で効果的に使われる。変な踊りは賛辞。ここで本格的なダンスを用意したら全てがぶち壊しになる。照明を落としての場面転換ばかりでは愛想がない。しゃれっ気があって素人っぽい、変な踊りがマッチする。
 蛇足だが、みんなが踊ると、その振動が客席に伝わる。(ちょっと立派過ぎる)小劇場の連帯感が感じられる。

 斉藤ねこのクラリネットをメインにした東欧ユダヤ系のクレズマー音楽も、もうのうい感じを充満させて雰囲気を盛り上げる。
 ここに取り上げないスタッフも含めて、チームワークの良さが感じられる。

 

 さて役者。配役表で数えれば26人の出演、一人が6・7役を兼ねる。主人公のカール・ロスマンは、5人が場面ごとに交代で演じ、2番目は女性。混乱しないかと問われたら、混乱しないと答えよう。もちろん、全ての役を認識しないが、主要な役は追いかけられる。原作も読んだし、2007年の上演も観ているからかも知れないけれど。

 カール・ロスマン3を演じる笠木誠が中心。他の演目で何回か見る機会があったけれど、彼は朴訥な表現の下手巧。2007年は他の役者が演じていたけれど、カフカの迷宮的な雰囲気に良くマッチする。
 他の役者も全体的に下手巧と感じられるけれど、これは演出や創作方法にも関係するのだろう。小嶋尚樹、宮島健のベテランも味わい深い。カール・ロスマン2を演じた力徳朋がフレッシュ。クララを演じた太田緑ロランスはちょっと目立ちすぎと感じたのは、いつになく前方席に位置取りしたからか。彼女の責任と言うより、華を隠し切れないと言って良いだろう。場を改めて観たい気がする。

 

 自分の意思に従う限りは寛大な叔父ヤーコブに、時の為政者を思う。オクラホマ劇場の団員募集の場で、白い天使たちが高い所でトランペットを吹き鳴らす場面は印象深い。しかし、面接官たちが頭に角を生やし、お尻に尻尾を生やしているのは先行きを暗示しているのか。身分証明書を持たないカール・ロスマンも何とか合格し、汽車でオクラホマへの長い旅を開始する。

 2007年より上演時間が30分ほど短縮されている。細かく記憶する訳ではないから比較できない。ただ、随分とすっきりした仕上がりになっていると思う。「審判」「城」も期待できそうだ。

 結論のないカフカの世界に今を重ねる。日曜日夕方開始にもかかわらず、客席はほぼ埋まっていた。演劇の楽しさを知る人たちが寄り集まったと感じられた。ささやかな楽しみが、奪われることのない未来に繋げなければならない。

   (2013年12月6日記録)

注:音楽に関して、MODE制作より指摘を頂きましたので、訂正してお詫びいたします。多少の疑義を抱いていましたが、確認せずに記載してしまいました。読んでいただいた方にもお詫びいたします。

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コメント

いつもMODEの舞台をご覧いただき、ありがとうございます。今回の座・高円寺『失踪者』に関してのコメントもありがとうございます。一か所、文中にあります音楽に関してですが、『失踪者』で使用しております音楽は斎藤ネコ氏の作品ではありません。すべて東欧ユダヤ系のクレズマー音楽でトラディショナルなものです。『審判』『城』が斎藤ネコ氏のオリジナル曲です。チラシの記載方法に不備がありましたことをお詫びいたしますとともに訂正いただければありがたいと存じます。今後もMODEの作る舞台をよろしくお願いいたします。MODE 制作

投稿: | 2013年12月 9日 (月) 09時06分

ご指摘ありがとうございました。お詫びして訂正いたします。三部作連続上演の成功と今後のご発展を祈念いたします。

投稿: F3 | 2013年12月 9日 (月) 12時27分

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