« 演劇:チェルフィッチュ「地面と床」 | トップページ | 2013年回顧(1)  ヴェルディ・ ワーグナーと世阿弥  »

2013年12月25日 (水)

演劇:劇団MODE「城」

  原作    F.カフカ
  構成・演出 松本修
  音楽    斉藤ネコ
  振付    井手茂太

  出演    K(測量士) 笠木誠
        フリーダ   山田美佳 ほか

  会場    座高円寺
  公演    2013年12月14日(土)~18日(水)
  鑑賞    2013年12月16日(月) 19:00~21:50(休憩10分) 

 城に雇われた測量士・Kは、城のある雪深い村にようやくたどり着き、空部屋がないと言う宿屋の酒場で眠らせて貰う。翌日、城を目指すが辿り着けない。やがて、Kの直属上長は村長だと知るが、村長は測量士など全く必要としていないと言う。
 Kは色々な出来事に遭遇する。城の役人が泊まる宿屋のホステス・フリーダに一目ぼれしてカウンターの下で愛し合ったり、学校の小使いとして雇われたり。測量士としてこの地を訪れた筈なのに。そして、常に誰かに見張られている。

 

 劇団MODEによる「城」は、2005年の新国立劇場、本年3月のあうるすぽっと、そして今回と三度の公演があり、三度とも観る機会に恵まれた。未完の不条理な長編小説の劇化、三度も観るほど面白いかと言われれば、面白いと答えざるを得ない。

 舞台奥の上手から下手まで2階相当の作業床、左右に階段、柱で支えているので下部の移動は自由。これは連続上演された「失踪者」「審判」と基本的に同じ構造だが、左右が斜め前方に向けられているところは異なる。これは多くの部屋を有する宿屋などをイメージしてだろう。それにドアーの作り物で、宿屋や事務室を表現する。鑑賞に不足することのない最小限の舞台作り。それがまず面白い。

 笠木誠は不条理に巻き込まれてもがくKの雰囲気を巧みに醸し出して熱演と感じたが、それは笠木の素朴で多少とぼけた雰囲気が相乗していると思う。山田美佳も淡々と演じて、新しい世界に逃れたい幸薄い女性が反って良く伝わってきた。
 俳優は25人が登場する。笠木を除いて一人何役もこなす。ベテランは重厚さをもって舞台に深みを与えるし、若手の軽快さも心地よい。全体にうまく噛合っているし、また噛合うように仕上げたと思う。
 私は熱心とは言えない劇団MODEのファンだが、四半世紀に渡って時々鑑賞する機会があった。役者、特に主演女優も変っているが、家族的な雰囲気は健在だと思う。それが次に面白い。

 カフカの死後に出版された未完の長編三部作、今回は執筆順に上演された。すなわち、「失踪者(1912年)」「審判(1914年-15年)」、そして「城(1922年)」。第一次世界大戦は1914年-18年、カフカはプラハのユダヤ人家庭に生まれている。三部作の主人公は各々、カール・ロスマン(失踪者)、ヨーゼフ・K(審判)、K(城)と匿名性が、というより個性喪失の進行過程だろうと。
 それがカフカの心境と結びついているか、考察は今後の私の課題。今、劇団MODEがカフカ三部作を連続上演するのは偶然だろうか。私は必然と感じた。現実が劇的なものに先行する現在、今の機会を逃しては遅きに失するだろう。こう言うことを考えるのも面白い。面白いは語弊あるかも知れないけれど。

 

 三部作の各々の作品が興味深く、各々の主演・助演の俳優達が味わい深かった。もちろんスタッフを含めて。そのことを前提にして、やはり意義は三部作連続上演にあったと感じる。心しよう。

   (2013年12月25日記録)

|

« 演劇:チェルフィッチュ「地面と床」 | トップページ | 2013年回顧(1)  ヴェルディ・ ワーグナーと世阿弥  »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/180824/58821232

この記事へのトラックバック一覧です: 演劇:劇団MODE「城」:

« 演劇:チェルフィッチュ「地面と床」 | トップページ | 2013年回顧(1)  ヴェルディ・ ワーグナーと世阿弥  »