« 演劇:劇団MODE「失踪者」 | トップページ | 演劇:チェルフィッチュ「地面と床」 »

2013年12月13日 (金)

演劇:劇団MODE「審判」

  原作    F.カフカ
  構成・演出 松本修
  音楽    斉藤ネコ
  振付    井手茂太

  出演    ヨーゼフ・K  斎藤歩
        監視人ヴィレム 小嶋尚樹
        画家ティトレリ 福士恵二
        弁護士フルト  高田恵篤
        聖職者     宮島健
        グル-バッハ  石井ひとみ
        洗濯女     山田美佳  、他

  会場    座高円寺
  公演    2013年12月7日(土)~10日(火)
  鑑賞    2013年12月9日(月) 19:00~21:20(休憩10分)

 

 舞台奥の上手から下手まで2階相当の作業床、左右に階段、柱で支えているので下部の移動は自由。門を思わせる大きな作り物が左右に置かれているが、これは場面ごとに移動する。あとは、小道具を役者が持ち込んだり・持ち出したりして場面転換する。まるで「失踪」の舞台そのままと言って良いのだが、当然のことながらまったく別の世界が生まれる。

 舞台中央手前にベッド、その奥にドアー。銀行員ヨーゼフ・Kは、30歳の誕生日の朝目覚めると、見知らぬ二人組みの訪問を受けて、逮捕されていると告げられる。理由は知らされない。その様子を、天井近くから数人が眺めているのが不気味。一瞬で演劇と現実が交錯するのは、演出意図の内だろう。そして今、カフカ三部作を上演する意義も象徴しているようだ。

 ヨーゼフ・Kは隣室で監督に面会、不当逮捕を言い立てるが、それまでと変らず勤めに出て良いと言われ、傍らには同僚三人が立っている。30分ほどの遅刻で、彼らと共に銀行に辿り着く。日常に戻ることで不条理さが充満する。

 

 全体の印象は疾走、テンポ良く進行したと感じた。ただし、同行の妻は刈り込みすぎとの感想をもらした。同じものを見ても、受け止め方は各々だ。

 ちなみに、2007年は途中と千秋楽の2回鑑賞、公演中に正味3時間が15分ほど短縮している。その時の印象を『休憩後の最初の場面の印象が変わりました。前回の印象を『ヨーゼフ・Kの笠置(ママ)誠は、見えざる何かに対峙する焦燥感を良く感じさせます。』と書きました。ぎらぎらするような演技で、権力と対峙する表現でした。しかし、今回は、ぎらぎら感が薄れて、権力に対する諦観のようなものが垣間見えました。これが後半、淡々と進行するように感じる伏線のように思います。』と記録した。

 今回の上演時間は2時間10分ほど、テンポ良くも、刈り込みすぎも的を外していない。妻は「初めて見る人は判りにくい」とも言っていた。カフカの迷宮感は薄れているかも知れない。ただ、MODEは「かるみ」の世界に向かっているとも言えそうだ。確かに、他の小劇場系より客席には年配者が多いし、何の根拠もないが、MODEと一緒に年を重ねてきた人が多いようにも感じた。それを前提にしたコミュニケーションは十分に成立していると言えそうだ。

 ヨーゼフ・Kを演じた斎藤歩、理不尽に巻き込まれる実直な銀行員が良く伝わる。それは、ベテラン達の脇役の重厚な演技が支えていたとも言える。ここはベテラン達を大きく讃えたい。登場する役者は24名、ヨーゼフ・Kを除いては何役も兼ねていて、お疲れさま。

 音楽は、トランペットをフィーチャーしたジャズコンボと捉えたが、オリジナル曲か何かの音源を利用したかは判らない。大聖堂の場面では荘厳なオルガン曲が響いた。踊りは、控え目であった。

 最後、大聖堂でヨーゼフ・Kと聖職者が対峙する場面、2階への階段が正面に据えられ、その前に作り物の門が置かれた。私の位置からは、階上の聖職者が全く見えず、さながら天井から降る声のみが響くようであった。ここは姿を見たい所。

 全裸にされたヨーゼフ・Kが階段を上り、ポーズを付けられたあげくに心臓にナイフを突き刺される。そして「犬のようだ」と叫ぶ。
 全ては、この叫びに向けてクレッシェンドしてきた。深い意味を考えよう。

   (2013年12月13日記録)

|

« 演劇:劇団MODE「失踪者」 | トップページ | 演劇:チェルフィッチュ「地面と床」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/180824/58749206

この記事へのトラックバック一覧です: 演劇:劇団MODE「審判」:

« 演劇:劇団MODE「失踪者」 | トップページ | 演劇:チェルフィッチュ「地面と床」 »