美術:横須賀美術館 日本の「妖怪」を追え!
名称 日本の「妖怪」を追え!
北斎、国芳、芋銭、水木しげるから現代アートまで
会場 横須賀美術館
会期 2013年7月13日(土)~9月1日(日) 、詳細は要確認
鑑賞日 2013年8月 8日(金)
妖怪の定義はさまざまだが、ここでは幽霊を含む。幽霊の類語に亡霊・悪霊・怨霊などあるが、いずれにしろ成仏できない人の魂が、それらしき姿・形を伴って現世に出現すると考えて良い。妖怪で想像を巡らす範囲を大いに逸脱、いや拡大していてユニークな企画展。
時代は江戸から現代まで、技法は自筆画・錦絵・漫画・写真・ミクストメディアなどと幅広い。
150点ほどの作品は次のように区分される。
1章 妖怪登場 大都市・江戸に生まれた物語
2章 妖怪変化 近代にあらわれたさまざまな妖怪像
3章 妖怪はここにいる 現代アートに見る妖怪像
「1章 妖怪登場」。畏怖されるものとして描かれるが、どこかに逃げ場が残されている。ちらしに登場する「葛飾北斎:お岩さん百物語」(*1)、提灯から現れる顔は異形だけれど、ユーモラスでもある。作品の多くが色鮮やかな錦絵であることも、印象を和らげる。
歌川広重・葛飾北斎など、浮世絵のビッグネームも「妖怪」を描いている。それなりの需要があったのだろう。不忠不孝への戒めか。
今回も「歌川国芳:相馬の古内裏(千葉市美術館所蔵)」(*2)を観た。多くの会場で見かけるのは名作の証明だろう。描かれた骸骨は、解剖学的に見てかなり正確らしい。「杉田玄白:解体新書」の出版が1774年、その100年後に描かれている。
「2章 妖怪変化」。水木しげるをここに含めるのはなぜ。伝統的表現だからか。とにかく、漫画家・妖怪研究家の作品が、他の作品と同等に扱われることは、この企画展に対する親近感を増す。
河童の小川芋銭の作品の展示が意外。河童も妖怪に違いないけれど、展示作品は河童でない。
錦絵の月岡芳年の作品が多くあって、1章との差異が判らない。水木しげるを3章に回して、1+2章と3章の2区分も成り立ちそう。理由はあるのだろうが判らない。
「3章 妖怪はここにいる」。絵・版画以外の種々の技法による作品が登場。
松井冬子の描く幽霊は怖い。足のない伝統的な幽霊を描くが、逃げ場のないピュアな表現がそう思わせる。
鎌田紀子はミクストメディアによるいわば人形。妖怪と言われなければ、少し不気味な人形で終わりそうだ。他に、写真・油彩などの作品があって、鎌田と同様の思いがする。
漆黒の闇に恐怖心を抱くけれど、漆黒の闇に出くわす機会がない。宗教観や倫理観も大きく変化しつつあるようだ。妖怪が怖いものとすれば、怖さを感じる対象が変化している。
伝統的な妖怪が人に対する戒めの表現と考えれば、現代の妖怪は人を苦しめる。振り込め鷺なはどんな姿・形に描かれるだろう。収束の目処の立たない原発事故、平和から遠ざかりそうな動きなども、妖怪と言えそうだ。伝統的な妖怪から、一緒にするなと言われそうだが。観終えてそんなことを思った。
横須賀美術館は明るい三浦の海に面しているが、背後の丘陵地には戦争の残骸が残る。第4章として、散策をお勧めしたい。妖怪が現れるかも知れない。話はが少し跳んだが、暑さに注意しながら是非。
*1 横須賀美術館HPより引用
*2 横須賀美術館HPより引用、山口県立美術館浦上記念館所蔵の作品
(2013年8月11日記録)
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