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2013年8月15日 (木)

美術:神奈川県立近代美術館葉山館 「戦争/美術 1940-1950」 (やや長文)

  名称   戦争/美術 1940-1950
         モダニズムの連鎖と変容
  会場   神奈川県立近代美術館葉山館
  会期   2013年7月6日(土)~10月14日(日・祝) 、詳細は要確認
  鑑賞日  2013年8月8日(木)

 

 日本人が忘れてならない1945年8月6日・9日・15日、その日々を挟む1940-1950年に制作された作品に焦点を当てて戦争/美術を追求する企画展です。

 それらに、序章として1935年以降に制作された作品、終章として1960年までに制作された作品も加えて、連続性を確保する配慮があります。

 展示は編年体の体裁、すなわちある年に描かれた作品が纏められています。すなわち、ある作者の作品は一纏まりに展示されず、年毎に点在します。

 作品の約9割が神奈川県立近代美術館所蔵品。所蔵品による企画展は、何となく繋ぎの思いも湧きますが、それは皆無です。埋もれていた作者の発掘など、日本初の公立近代美術館として大きな役割を果たしてきた結果としての、充実した所蔵品と再認識させられます。

 

 戦争記録画に少し触れます。企画展の掉尾を飾る作品が「丸木位里・俊:原爆の図(第一~四部):1950年」。

 増子(*1)は『戦後、丸木位里・俊の《原爆の図》が国中の賞賛を浴び、藤田(嗣治)は画家の戦争責任を一人で負わされる形で日本を離れた。反戦や悲劇がテーマの絵画は多く公開され、人々の共感を得るが、戦時下における美術の実態については明らかになっていない』と述べています。

 指導者層の責任回避の一億総懺悔、その中で見解の分かれる事実を基に、個人が戦争加担したと言って責任追求されてはたまらない。藤田嗣治が日本を追われるように去ったのは、その帰着でしょう。戦争記録画についての私の知識は無に等しいものですが、増子の見解は妥当と受け止めています。

 

 作品中に戦争の影を宿したものを見つけるのは容易です。しかし、困難な状況の中で、自分の描きたいものを描く、巧妙に取り繕って自分の描きたいものを描くと言う、芸術家の本性を吐露したような作品も多くあります。時を隔ててその偉業を再確認できる、そのことに少なからず感動します。

 松本竣介の作品群は神奈川県立近代美術館の代表的な所蔵品ですが、編年体の並びで見ると、漂う静謐・寂寥に、時代も加担していたと受け止められます。聴力を失ったことだけではないでしょう。

 靉光は、1941年の「警察病院」で展示が尽きます。後の作品も10点近くあるようですが。1944年応召、1946年戦病死、39歳。故郷広島に残しておいた作品は、原爆により灰燼に帰したとのこと。分身である作品の被爆、早すぎる死。輝かしい未来が待っていただろうに、酷な人生です。

 「イサム・ノグチ:広島原爆慰霊碑のためのマケット」。この案が実現しなかったのは、イサム・ノグチがアメリカ人だからとの横槍によるもの。ララ物資のことなど併せ考えれば、随分と理不尽な理由です。現在の原爆慰霊碑に面影を留めるのは、この案を生かして丹下健三が設計したからです。

 「佐藤哲三:みぞれ」は、かって「洲之内徹・気まぐれ美術館」収蔵品で、少なくとも宮城県と兵庫県の県立美術館で見ています。往時、仕事の合間に出かけたことを思い出します。心にじわっと染み入る風土性は、かって裏日本と呼ばれた新潟にしがみついた人生の表出のようです。

 そう言えば、松本竣介・靉光・原精一・朝井閑右衛門なども、「気まぐれ美術館」で認識を確かにしました。私には、この企画展と洲之内徹が交錯していますが、それはまたの機会に。

 楽しいと言える企画展ではありませんが、かっての戦争を、そして現在を、見つめなおす良い契機になるでしょう。会期も残るし、一部作品の展示変えもあるし、私はもう一二度、訪れるつもりです。

  *1 引用:日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 No.7, 13-22 (2006)
       GHQと153点の戦争記録画 -戦争と美術-
       増子保志 日本大学大学院総合社会情報研究科

   (2013年8月14日記録)

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