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2013年4月 9日 (火)

音楽:ブリュッヘン・プロジェクト 第1回

  指揮     フランス・ブリュッヘン

  演奏     18世紀オーケストラ

  曲目     ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調
         ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調
         シューベルト :ロザムンデより間奏曲第3番(アンコール)

  会場     すみだトリフォニーホール(1階6列23番)
  公演     2013年4月4日19:00~21:10(休憩20分)

 

 ブリュッヘンの肩越しに振り上げた両手が見えた。指先を伸ばした両手がナイフのように振り下ろされて、変ホ長調の主和音の強奏、「第3番」の始まり。

 一番大きく鋭い動作がこの場面だった。右手を少しづつ前に押し出してチェロに指示するような類はあった。しかし、総じて体の正面で手を控えめに振って、オーケストラをコントロールした。

 時間を戻す。ブリュッヘンは、介助者に押された車椅子で登場した。介助を受けて指揮台に移動、椅子に腰掛けた。2008年2月にブリュッヘン・新日本フィル「ヘンデル・天地創造」を聴いたが、その時の登場がたどたどしかった。よってある程度の想像はしていたが。今回が「farewell concert」であることが痛いほど良くわかった。

 18世紀オーケストラは、2管編成、弦は3-3-2.5-2.5-1.5プルトで対向配置、ティンパニーは小太鼓を思わせる極めて小さな一対。管は見て判るが、弦を含めてピリオド楽器であることは言わずもがな。

 

 交響曲第2番。ニ長調の主和音がトゥッティでダダーンと強奏され、管が引き継ぐ。音色は柔らかく、音量もたっぷり。席が6列目中央、ステージ後方席がなくて音が吸収されないことも関係するだろう。ただ、その傾向は、後になるに従ってさらに大きなものになる。もう一度、主和音が強奏されるまでの数小節で、ブリュッヘンの世界に引き込まれた。

 魅力的な響きの連続。思った以上の音量は間違いではないけれど正確さを欠く。弱奏はこれでもかというほどに抑制されていた。九つの交響曲の中で2番は冷遇されていると思う。しかし、こんなにも魅力的なのだ、と言うのがブリュッヘンのメッセージだろう。何も足さない、何も引かない、あるがままに。

 

 交響曲第3番。ホルンが3管に。変ホ長調の主和音の連打の始まり、途中の6連打、豪快、快活な第1楽章。それに比して第2楽章の葬送行進曲の荘重なこと。多くを聴いたわけでもないが、これは深く心に染み入る名演奏だ。第3楽章のホルン・トリオ、ピリオド楽器の馥郁たる音の魅了が相乗する。そして、堂々として哀愁を帯びた第4楽章。まさに「英雄」。

 

 モダン楽器では得られない管楽器、ティンパニーの魅力。ふくやかで澄んだ音色の弦楽器。抑制されたブリュッヘンの指揮から、どれだけ豊かな音楽が生み出されたことか。

 ブリュッヘンが登場した時、リコーダーを吹いていた頃の威圧感のある容貌を思い出して、時の流れは残酷と思った。しかし、18世紀オーケストラと共に紡ぎ出す音楽を聴くと、時の流れは偉大だと思った。深い信頼関係は一朝一夕に築かれるものではないだろう。

 これが聴き納めとは残念だが、なんとも見事に最後を締め括ってくれた。いつまでも記憶に残るだろう。「farewell concert」が実現したことを感謝したい。

 アンコールの「ロザムンデより間奏曲第3番」が、何とも美しく響いた。

   (2013年4月5日記録)

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