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2012年12月31日 (月)

舞踊:神奈川芸術劇場『中国の不思議な役人』アフタートーク (長文)

 公演の感想はこちらに掲載。ここでは、公演後に行われた写真家の篠山紀信と、本公演の演出振付を担当した金森穣の約40分間の対談についてまとめる。テープ起こしでなく、メモをもとに纏めたもので70点ぐらいの出来だと思うが、それを承知のうえで一読願う。
 なお発言の前の、Sは篠山紀信、Kは金森穣、Qは会場からの質問を示す。

 

S:こんなに緊張したクリスマスはない。人生で初めて(見た)と言う人が、良いと言っていた。
K:ありがたいこと。普段(の生活に)は緊張がない。緊張していれば良い訳でないが。
S:(この舞台は)写真には写らない、無理だ。
K:(でも)撮ってくれた。
S:あんなものは駄目だ。(舞台は)暗い、(動きは)速い。ライティング、黒子と(主要な役で)10倍ぐらいの差がある。人間の目で見ないと感動は味わえない。(見た人は)良いクリスマスですよ。今日の二つ(の作品)は素晴らしい。NHK(バレエの饗宴 2012のこと)で、他のカンパニーは大したこと無い。Noismが出てくると客席はしらっとした。終わると万雷の拍手でザマ見ろと思う。こういうのを見る人が、来年は良くなる。撮りにくいけど素晴らしい。
K:撮りやすいのは。
S:無いな。撮れないことが判った。記録写真みたいなものはあるが、精神みたいなものを撮りたい。一緒に踊ろう。客を入れないで僕のために一度、踊ってくれる(ゲネプロのこと?)。一緒に踊ると良くわかる。稽古を見て、金森の考えることぐらい判る。この前、(ダンサーが)さっと後ろを横切ったときはビビッタ。
K:写真はコンマ1秒まで(写し取る)。自分自身で気付かない瞬間が判る。メンバーに対してイライラしている時でも、写真を見て良い顔をしていると和む。
S:身体パフォーマーが自分を残すものは、決定的な一枚(の写真)。海外のバレリーナーの夫は、写真家が多い。いつも一緒だから、一枚ぐらいは良いものはある。僕なんかは一回だけ(の撮影チャンス)だから。
K:写真のシャッター音が気になる。照明とかのキューも気になる。
S:僕はポイントで(シャッターを)押しているから、気にならない。反って良い気分になる。今は音が出ないから、今度、本番中に撮らせなさいよ。
K:写真展(篠山紀信 写真力)を見てきた。撮られた時に死んでいるとか書いている。亡くなられたから生きている。最後に(3.11の)被災地(の写真)。写真は死んでいない。感動した。有名人だけなら、こんなに感動はしない。
S:やり手ですね。一番良い時に行って撮る。3.11、あれを無いことには出来ない。写真家としてどうなのよ。行って撮れない。津波の写真が(目に)入ってくる。50日後、背中を押してくれる雑誌があった。無意識に撮る。写真になっていない。?浜、防潮林が倒れている。今は平和な水の上の木が美しい。いろんな物を壊し、新しいものを作って行く。それを見てすごい(と思った)。新たな視点が出来た。皆が、何かこれってきれいよねと言う。まだ死体があるかも。失礼でさ。自然が美しい。人がいるけど、広い土地なのでぽつぽつ、修理する人とか。ボランティア・自衛隊などの(人の)顔とぜんぜん違う。がんばる・脱力感の両方(が見てとれる)。(撮影は)35mm(カメラ)でない。こっちに来てくれとは言えない。8バイ(10カメラ)で2・3枚づつ撮った。それを(写真展の)最後に(展示した)。
K:単純にそこに人がいるのを強烈に感じた。見に来た人に強烈に訴えかけている。有名力とは何か。すごく感じた。篠山紀信も凄い。
S:(津波に流されて)妻・子の手を握っていて、最後に離した。普通の人だったけど、(そういうことを)体験したら普通(の人)ではない。それが写真の前に立った。
K:有名人と言うより、その経験が大事か。
S:有名人もいろいろ。駄目なのもいる。写真力の強いものを出そうと思った。大空間で見たらどうなるのか。次に人間、皆の知っている人が良い。生きている時はどうだった。自分史を感じさせる力。それで有名人を選んだ。有名人よりもっと大きな体験をした。それを撮れるのは写真。良いものなんですよ。

Q:『solo for 2』で使用した椅子について。
K:家具デザイナーの友人に、座れなければ椅子では無い?と謎掛けをする。彼が興味を弾いて、人が掛けなければ座れないという椅子を考え、そこから発展していった。
Q:篠山さんに。瞬間を一枚に写しとめる。舞踊とは何か。
S:(それに答えるのは)金森さんが良い。僕は金森ワールドに浸っている。その中に一枚がある。
K:(篠山紀信は)基本的に高い(レベルの写真が撮れている)が、その中にある。
S:それは。
K:演出振付は装置、日常どこまでを生きるかという瞬間を(表現する)。ある瞬間がどこまで続くわけではないが。
Q:こちら(関東圏?)での公演が少ない。最近、あまり面白く(思える公演が多いとは)思わない。東京・横浜でもっと(公演して欲しい)。
K:新潟(りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館)に来てくれるともっと嬉しいが、東京のマーケットには緊張感がある。東京という妙な緊張感で。(Noismは)税金で運営されているので、他所で行って(公演して)どうなの。定期的にやるのはおかしいので、(皆さんが)それを打破して欲しい。貸館(公演)ではない、提携(公演)、もっと踏み込んでくれると(実現し易い)。
Q:完成形はあるのか。毎回違うのか。
K:流れとしてこれは良しはあっても、演者はこの一瞬。完成形は無い。だから修練できる。
S:金森さんは出演していないと、周りの人が言っていた。
K:体は一つ。誰かが責任を持って見ないといけない。
S:普通だね。
K:踊るときは踊る。見るときは見る。想像して欲しい。

 

 ジャンルは異なっても、一芸に秀でた人の対談には各所に刺激が含まれる。「身体パフォーマーが自分を残すものは、決定的な一枚の写真」なんて、なかなか言えない。身体表現とは、生まれた瞬間に消えゆくものなのだ。
 芸術が明日役立つか、明後日役立つかと言えば、そうは思わない。しかし、長い生活のどこかでふと蘇ることはあるだろう。残る人生において、生きる勇気を与えられるかも知れない。それが貴重なのだ。

 話は跳ぶが、今年の神奈川芸術劇場(KAAT)のダンス部門に限れば、池田扶美代、勅使河原三郎が記憶に残る。公演自体が重要であることは言うまでも無い。アフタートークのような関連企画も捨てがたい。2013年は開館3年目、更なる発展を期待して、2012年を締め括る。

   (2012年12月31日記録)

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