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2012年11月12日 (月)

文楽:11月公演「通し狂言・仮名手本忠臣蔵」(やや長文)

  作   二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳

  出演  竹本源大夫
      鶴澤寛治
      鶴澤清治
      吉田簑助
      吉田文雀 ほか

  会場  国立文楽劇場
  公演  2012年11月 3日(土)~25日(日)、詳細要確認
  鑑賞  2012年11月 6日(火)  第一部 10:30~16:10(休憩25分・5分)
                第二部 16:30~20:55(休憩25分・5分)
  参考  国立文楽劇場公式HP

 

 国立文楽劇場は9年ぶり、桐竹勘十郎の襲名披露公演以来だ。その後で横浜に戻った。横浜では地方公演もあるし、国立劇場にも稀にでかけるけど、周囲の雑踏を含めて国立文楽劇場の雰囲気にかけがえないものを感した。

 「仮名手本忠臣蔵」は文楽三大傑作の一つ。他は「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」。故吉田玉男の「菅原伝授手習鑑」の第一部だけ観て、第二部を見逃したのが今でもくやしい。などと、開演前の短い時間に思い出したり、考えたり。

 

 「仮名手本忠臣蔵」は、史実の元禄赤穂事件を「太平記」の世界の置き換えて描かれた物語で、あらすじは何となく知っている。

 『大序 鶴が岡兜改めの段』。足利尊氏の弟・忠義が鶴が岡八幡宮に代参する。華やかな幕開け、大夫が「佳肴ありといえども食せざればその味を知らずとは」と語りだすので、大阪市長の的外れな文楽批判を思い浮かべた。二度は食べた(見た)ようなので『心焉に在らざれば、食らえども其の味を知らず』が適当だろう。

 兜を改める塩谷の内室・顔世が「義貞殿拝領にて、蘭奢待(らんじゃたい)といふ名香を添へて賜はる」。蘭奢待(*1)は正倉院御物、次の日に正倉院展鑑賞を予定していたのも何かの縁か。御物の経緯は広く知られていたのだろうか。

 『三段目 殿中刃傷の段』。「鮒よ鮒よ鮒だ鮒だ鮒侍だ」と罵倒された塩谷判官が、高師直に斬り付ける。人間が演ずるよりリアル。様式化が余計にそう感じさせる。大夫・三味線と人形遣いが高度な同期、この段だけではないが。

 『四段目 塩谷判官切腹の段』。殿中刃傷を動とすれば、この段は静。大夫・三味線は、黒の裃に黒の座布団。凄いと感じたのは、大夫・三味線が長く語りを止める箇所がいくつかあった。迎える死、家来を路頭に迷わせることを語りつくせないか。静寂もまた雄弁。三味線の鶴澤燕三、好きだ。

 『九段目 山科閑居の段』。エピソードは色々あるが、討ち入りを明日に控えて、大石力弥と一夜限りの祝言を遂げる許婚の小浪、涙を誘う。豊竹嶋大夫の語りは好きだが、今回は多少クリアさを欠いたように感じられた。まあ、私の感じはあまり当てにならないけれど。

 『大詰 花水橋引揚の段』。見事に塩谷判官の敵を討ち取って凱旋。私も気持ちを弛緩させる。

 

 どの段も興味深い。特に素晴らしく感じたのは、山科閑居から花水橋引揚に跳ぶこと。討ち入りに向けてクレッシェンドしてきて、討ち入り場面は省略。結果、山科閑居に代表される四十七士や周辺の人間模様が、色濃く印象に残った。展開のスピードも緩まない。私は、そこに現代演劇のような斬新さを感じた。

 技芸員たちは、文楽批判にさらされた中でも真摯だ。確か『三段目 裏門の段』の三味線・野澤喜一郎、糸が切れて、残る二本で何事も無いように弾ききった。そういうものかも知れないが、訓練の賜物だろう。初めて見た光景。
 人間国宝、竹本源大夫、鶴澤寛治、鶴澤清治、吉田蓑介、吉田文雀が要所に登場。若手・中堅は総出だろう。残念なことは、竹本住大夫の欠場、竹本千歳大夫が豊竹呂勢大夫に交代、共に早く元気になって欲しい。

 私は舞台から床までを見渡しているのが好きだから、今回も最後列の二等席。各部2300円(東京は異なる)安すぎて申し訳ない。募金箱があれば、ささやかだが気持ちを表わしたいけど如何だろうか。
 これからは年に一度くらいは大阪に出かけよう。チケットが入手し難いなどと言わずに国立劇場にも出かけよう。

 

(*1) 正倉院御物。黄熟香(香木)、蘭奢待は別称だが、そこには東大寺の文字が隠されている。足利義政、織田信長、明治天皇が截りとった付箋があり、他に足利義満、足利義教、徳川家康が截りとったことが記録されているそうだ。参考まで。写真は平成九年正倉院展図録から引用。
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   (2011年11月11日記録)

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