文楽:平成二十四年度十月地方公演『桂川連理柵』
演目 桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
六角堂の段
帯屋の段
道行朧の桂川
会場 神奈川県立青少年センター
公演 2012年10月7日(日)・昼の部
鑑賞 2012年10月7日(日) 14:00~16:20(休憩15分)
簡単にあらすじ。
長右衛門は5歳まで信濃屋で育てられ、隣の帯屋の養子に、長じて家督相続。信濃屋の遺言、ゆくゆくは娘お半に良縁を、との言葉を心に留め、二周り年下のお半を可愛がった。
ある日、商用の長右衛門と丁稚長吉などを供に伊勢から戻るお半は石部で出会い、宿を取る。夜、長吉に関係を迫られてお半は長右衛門の部屋に逃げ込んで戻らない。子供と思い自分の蒲団に入れるが思わぬことに。
長吉の意趣返し、先代の後添えとその実子で弟に当たる儀兵衛のいやがらせが絡む。信濃屋、妻・お絹に義理が立たず、悔恨の長右衛門はお半の縁談をまとめるが、お半は聞かず、妊娠を告白、家出する。後を追う長右衛門。二人は桂川へ。
横浜在住なので国立劇場公演に出かけることも可能だが、チケットが上手く取れない。と言うことで久々の鑑賞。昼の部は満席ではないけど、そこそこに埋まっていた。
「帯屋の段」、切場の前半を嶋太夫・富助、後半が咲太夫・燕三。人形は、清十郎の長右衛門、勘十郎のお半。名人世代に続く実力者たちで、私には名前と顔が一致する世代。
これがスタンダードと思って見聴きしたが、嶋太夫の語りがやや不鮮明に聴こえた。恐らく大夫のうちで最も聴いているのが嶋太夫、歯切れが良くて好きだがこの日は聴取りにくかった。
比翼連理の夫婦愛、育ての親と養家の親との関係、その中で犯した過ちに苦悩する長右衛門
に、一途な思いのお半。内面の表現が重きをなす段。二度三度と繰り返し見るうちに良さがじわじわと判ってきそうな気がする。そう簡単に深く判る訳はない。
「道行朧の桂川」、今生の別れ、生身の人間が演じては表現しきれない何かが感じられる。清々しさと言うのは危険かもしれないけれど。四月の大阪公演(TV中継で観た)では長右衛門を遣った勘十郎が、今回はお半。なかなか忙しいけれど次の世代を担う一人だろう。
まだ観たことのない演目が大半で、この演目も初めてだった。でも「桂川連理柵」は上演回数が多いのだろう、案内を良く目にする。しかし菅専助作の世話物、物語として起伏に富んでいるとは言い難いように感じた。それを魅力的に仕上げるのも技芸員の技か。
ところで文楽問題をご存知だろうか。2012年10月3日に行われた、橋下大阪市長と文楽技芸員の公開討論でひとまず小康状態に戻ったと思う。詳しく説明する能力は私にないので犬丸治氏のまとめた『橋下徹と大阪「文楽」問題を憂う』を紹介しておく。もちろん対峙する意見も参照願い、現在の状況を認識頂ければ幸い。
私はこの状況を、文楽に止まらぬ文化に対する危機と捉えてこれからもフォローしていく。
(2012年10月12日記録)
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