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2012年10月

2012年10月26日 (金)

随想:この人・百話一芸 第18回「加藤武・俳優一代記」(長文)

 2012年10月20日14時~16時00分、第18回横浜能楽堂講座「この人・百話一芸」。ゲストは、俳優で文学座代表の加藤武、聞き手・進行は元NHKアナウンサーの葛西聖司。伝統芸能世界からの出演者が多いこのシリーズでは異色。面白い話で飽きさせない。私に下地がないので誤解もありそうですが、大雑把に話をまとめておきます。

 

 (呼び方は?)役者と呼ばれたい。「小田原町(登場時に掛声が、生まれた築地の旧町名)」に嬉しいね。役者60年。その前の早稲田の学生の時に『番場の忠太郎』を演じた。小田原町には芝居好きが多く『木阿弥・招魂社』を演ったこともある。(落語家の)桂伸治もいた。青梅線沿線のどこかへ行って、新舞踊・落語・最後に『番場』。自分達が楽しんで、それで500円貰った。当時は大金だった。

 (写真を写しながら)
 『用心棒(S36年)』。黒澤監督には足を向けて寝られない。思いやりがあった。後に三船敏郎の出番があるシーンで30何回も駄目を出された。三船は何も言わなかった。その後も呼んで貰った。
 『仁義なき戦い』。深作監督は好きなようにやらしてくれる。逃げ回る役だった。
 『勇者(日米合作、S40年)』。相手が(男はつらいよのたこ社長)太宰久雄。監督はフランク・シナトラ、ハワイで撮影。日本軍の武器をアメリカは持っていた、戦利品。役者を大事にしてくれ、名前入りの椅子を用意してくれた。
 『乱』。自分が出演した最後の黒澤作品。馬に1日中乗っていた。弁当の時も。兜も被りっぱなしだった。怒られっぱなし。トイレの時は降ろしてくれた。昔は竹筒で馬上から用を足した。
 市川昆監督。やさしい人柄。金田一、決め台詞の「良し判った」で胃薬を飲みながら噴出す場面、胃薬にクリープを使用したが湿り気があって跳ばない。龍角散を使った。

 NHKで植木等と野球少年で共演した。フランキー堺とは同期、良いバンドを持っていたが、役者になってしまった。残ったメンバーがクレージー・キャッツを結成。

 (野村万才(作?)の話によると英語を教えたとか)大学を出て新生中学校の英語教師を1年やった。その後、文学座へ。なぜか文学座に行きたかった。北村一夫はストレートで入ったので先輩になった。英語教師は事志が違っていたから。その時の生徒が総見に来てくれた。

 杉村春子との『遊女夕霧』は震えながらやった。びしびしと怒られた。声は小さくしても良く通る声を出すようにと。杉村は美声でなかったが、何にでもなる。怒ってくれる人がいるのは大事、今はいない。『女の一生』『降るアメリカに袖は濡らさじ』は、杉村のために書かれた。

 『降る』は岩亀楼の遊女の話。文学座初演、新派でも上演された。
 『松五郎伝』は文学座初演。ガンさん(丸山定夫?)が無法松。私の時は荒木道子だったが、出演前に杉村が「ガンさんは良かった」って言ったが、思いやりないな。(わざと言ったんでしょうね)。

 太地喜和子と『遊女夕霧』。太地の事故を最初に知った。『唐人お吉』を演じている時だった。後輩はかわいくなくちゃ。自分(加藤)は一場だけで帰れるのに、喜和子はいきなりふところに飛び込んできて「最後まで見ているの」と言った。注意すると翌日には直っている。普段はそうでもないのに舞台での色気。

 (今の)仁左衛門は格好良かった。初代水谷八重子は風流な(円玉の女房)。身内の役者に厳しいが、外部の者には優しかった。『降る』では、杉村が亀遊を見舞いに行く、八重子の亀遊は面影が最後まで残った。

 (60年は悔いないですかに)60年は物足りない。もっと怒られなければ。この年になると重鎮と言われるが芸は奥深い。その後、教えてくれたのが(文楽の竹本)住太夫、言葉に奥行きがある。

 築地の魚河岸の三男坊。能舞台に立つのは初体験。(三味線を弾いた師匠が、通信教育のお弟子さんみたい)。あれこれ手を出している。父母が清元をやっていた。父が語りで母が三味線。小唄は清元から。歌舞伎などの内容が判っていないと、語るのは「いけないわよ(声色)」。

 小唄『高時』『いつしかに』、おまけで『?』。

 S20年、歌舞伎座閉館に立ち会う。空襲による炎で燃え落ちた。はなやかな光景が思い出されて悲しかった。大八車におばあさんを載せ避難した時、見ていた。落ち着いてから家に帰ったら、おばあさんが死んでいた。

 

 加藤武の名前を知らないことはないけれど、新劇は若い頃に何回か観たことがある程度。以降、ほとんど観ないから舞台の記憶はありません。しかし、それでも一芸に秀でた人の話しは興味深いものがあります。今になっていろいろ見聞きしておけば良かったと思っても後の祭り。この範囲内で言えば、太地喜和子の舞台を観なかったことが最たるものか。杉村春子は『華岡青洲の妻』で観ましたが、記憶に定かでありません。

   (2012年10月26日記録)

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2012年10月24日 (水)

随想:九万アクセス越えに感謝(2012年6月22日)

 九万アクセス超え、今までアクセス頂きました多くの方々に心より感謝致します。
90000
 ログによれば、九万アクセス目は『演劇:新国立劇場「リチャード三世」(長文)』へのアクセスでした。今までの経過は次のとおりです。

   ブログ開設   2006年 6月11日
   五万アクセス  2011年 4月20日、記事数 739件
   六万アクセス  2011年10月 1日、記事数 831件
   七万アクセス  2012年 3月13日、記事数 924件
   八万アクセス  2012年 6月22日、記事数 959件
   九万アクセス  2012年10月22日、記事数1013件

 九万アクセスに至る途中で、掲載記事数が1000件を越えました。1000件目が『美術:横浜美術館「奈良美智」展』、1001件目が『音楽:神奈川フィル第283回定期演奏会』。テーマも特定せず、文体も定まりませんが、随分と続いたものです。ただし、まだまだ続く予定です。

 最近の4ヶ月の参照ページのトップ10は次のとおりです。

  1 トップページ
  2 講演:川上弘美×高橋源一郎(対談編)(2009年10月26日)
  3 路上観察:横浜三渓園ザリガニ釣りのご案内(2011年)(2011年8月 2日)
  4 路上観察:さらば「Y市の橋」(2012年1月10日)
  5 演劇:新国立劇場「リチャード三世」(長文)(2012年10月 7日)
  6 音楽:みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.39(2012年6月14日)
  7 路上観察:横浜三渓園ザリガニ釣り(2011年)(2011年8月15日)
  8 路上観察:横浜開港祭花火大会・2012年(2012年6月 2日)
  9 世田谷美術館「ある造形家の足跡:佐藤忠良」展(2011年1月21日)
  10 随想:文楽協会への補助金停止か、橋下市長「会談しなければ」(2012年7月 6日)

 『トップページ』は、その瞬間の最新記事ですから情報量は少なく、味気ない思いがします。個別記事にアクセスを振り分けてくれれば良いと思っています。ココログさん、如何でしょうか。

 『講演:川上弘美×高橋源一郎(対談編)』は3年前の掲載なのに、「川上弘美」「高橋源一郎」が検索でヒットする確率が高いのでしょう。どこまで読まれているかはログで判りません。それにしても、これだけ長く参照される可能性があるから、記事は丁寧に書かなければいけないと思います。常にそう思ってはいますが。

 対照的に『新国立劇場「リチャード三世」(長文)』は、掲載後2週間ほど。演劇界において大きな出来事だから関心も高かったのでしょう。自分なりの感想を掲載するのも意味ありそうに思います。その後で、他人の感想を参照するのも楽しみです。

 『さらば「Y市の橋」』は、夭逝の画家・松本竣介が残した絵のモティーフが、横浜駅北東口にかろうじて残る現状をまとめています。常に工事中の感のある横浜駅ですが、近々、西口の再開発工事が始まるでしょう。近所に住む松本竣介ファンとして、これからもフォローするつもりです。

 『横浜三渓園ザリガニ釣りのご案内(2011年)』『横浜三渓園ザリガニ釣り(2011年)』を合わせると、トップになりそうです。横浜名所案内は、横浜市民としてこまめに情報発信するよう心がけます。

 次は十万アクセスを目指します。種々雑多な内容を特徴としますが、これからも『変様する港街から』をよろしくお願いします。

   (2012年10月24日記録)

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2012年10月21日 (日)

音楽:韓国音楽「歌い語るソリの世界」

  演奏  チ・ソンジャ(池成子)    (カヤグム・唱)
      チェ・ギョンマン(崔慶萬)  (ピリ) 
      ウォン・ジャンヒョン(元長賢)(テグム)
      チェ・ジョンガン(崔宗官)  (アジェン) 
      キム・キジャ(金貴子)    (カヤグム)
      チャン・チヘ(張智恵)    (僧舞)ほか

  曲目  1. カヤグム合奏
        『成錦鳶(ソングムヨン)カラク カヤグム散調(サンジョ)』
      2. 器楽合奏 『シナウイ』
      3. 『僧舞(スンム)』
         休憩(20分)
      4. 唱劇『沈清歌』より「父娘再会の場面」
      5. カヤグム併唱 丁貞烈制『春香伝歌』より
        「千字(チョンジャ)トウィプリ」
        「ヘソシック(時を尋ねる)」
      6. 唱劇 『水宮歌』より「うさぎを捕らえる場面」
      7. 民謡併唱と器楽合奏(メドレー)
         「梅打令(メファタリョン)」「漢江水打令(ハンガンスタリョン)」
         「太平歌(テピョンガ)」「陽山道(ヤンサンド)」
         「ぺンノレ(舟歌)」ほか

  会場  神奈川県立音楽堂(22列17番)
  公演  2012年10月14日15:00~17:30(休憩20分)

 

 チ・ソンジャの演奏は2回目。最初は2010年利賀フェスティバルに於いて、高田みどり(打楽器(マリンバ))との共演。韓国伝統音楽の形式で聴くのは初めて。

 「韓国全羅北道指定無形文化財第40号伽?琴散調保有者、成錦鳶カラク保存会代表、ソウル大学校国楽科講師」、短い紹介でも判らない言葉が多い。ソリとは音。カヤグム(伽倻琴)は、片側を膝の上に置いて奏する小型の琴。散調は、伽琴等の旋律楽器独奏とチャンゴ(杖鼓)の伴奏による楽曲。

 使用楽器を、()内は私の印象。ブク(太鼓)、ビリ(ひちりき)、テグム(横笛)、アジェン(弓弾き琴)、ヘグム(二胡)、カヤグム、チャンゴ(杖打ち太鼓)、チン(鉦)、ホジョク(胡笛)。他に西洋楽器のフロア・タム。

 

 1.『成錦鳶カラク カヤグム散調』は、カヤグム二丁とブク(太鼓)。チ・ソンジャ演奏。次の音が待たれるほどの遅いテンポから四段階ほどテンポを速めて演奏。背後に八曲一双の屏風、白地に墨蹟あざやかな漢詩(?)。

2.『シナウイ』は、ほとんどの楽器が登場しての演奏。3.『僧舞(スンム)』は、腕の長さも倍もある長い袖を投げ出すような仕草の踊りを伴う。

 4.『沈清歌』、6.『水宮歌』は、物語を器楽合奏つきで複数が歌い演じる音楽劇。中国の京劇風。パンソリは一人の歌い手と太鼓の掛け合いで伝説や説話を語る形式。パンとは広場。
『沈清歌』は、父の目を直すために身を売った娘が末に王妃になり、父の目も治るという話、「父子有親」の徳目を表わす。『水宮歌』は、竜王の病に兎の肝が利くとのこと、命じられたスッポンが兎を騙そうとする話、逃げ延びようとする兎が主役のようでスッポンの忠が主題、「君臣有義」という徳目を表わす。

5.『春香伝歌』よりは、チ・ソンジャがカヤグムを奏しながら唱う。実に声量豊か。百年の契りを結んだ娘が、ゆえ有って別離の憂き目に会うが、苦難の末に結ばれる話。

 7.「民謡併唱と器楽合奏」は、カヤグム合奏が加わり、主にチ・ソンジャが唄う。

 

 韓国語は判らないけれど、唄は訳が投影されて大意は理解した。音楽としてはまだ良く判らないが、高揚する何かを感じた。日本・韓国・中国、東南アジアの漢字圏という括りには、考え方の近いものがあると改めて思った。
 チ・ソンジャの途中の話(韓国語)に会場の半数ぐらいは反応したと感じた。韓国の方も多かったのだろう。「民謡併唱と器楽合奏」の際、会場から合の手が入った。間も好し、声も通り見事、パンソリは生活の中にあるのだろう。自分に判らないから、少数だからと言って絶やすのは文化の損失、国がどこかを問わない。

   (2012年10月20日記録)

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2012年10月14日 (日)

美術:三井記念美術館 「近江路の神と仏」

  名称   特別展「琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」
  会場   三井記念美術館(東京日本橋)
  会期   2012年 9月 8日(土)~11月25日(日) 、詳細は要確認
  鑑賞日  2012年10月 8日(月・祝)

  参考   公式ホームページ

 

 三井記念美術館を訪れるのは初めて。展示面積はそれほど広くはないが、それでも作品をじっくり観れば軽い疲労感を覚える。祝日のためか客は多かったが、人の頭越しに観るほどでもなかった。

 

 高月の渡岸寺、膳所の義仲寺は何回も訪れた。園城寺、石山寺、日吉大社、延暦寺などにも足を向けている。それらの一部名宝と、さらに広範な社寺からの名宝が展示されている。

   第1室 小金銅仏・金工品
   第2室 金工品
   第3室 広重の近江八景の写真展示
   第4室 仏像・神像
   第5室 絵巻・経巻・神像
   第6室 パネル展示
   第7室 仏画・垂迹画

 第1室。「誕生釈迦仏立像(善水寺)」はふくやか、おおらか。「金銀鍍透彫華籠(神照寺)」「金銅透彫華鬘(長命寺)」などの精巧さ・美しさ。

 第2室。「金銅経箱(延暦寺)」のみを展示。華紋の繊細さが何となく判るが、次の機会までに単眼鏡を用意しよう。

 製作用工具・治具は今よりはるかに拙劣の筈なのに何とも見事。確かな職人技だが、金も時間もかかっているだろう。権力者と庶民の関係も伺えそう。

 

 第4室。3面が展示ケース、高さに制約はあるが、わりと間隔をつめた展示が圧巻。

 琵琶湖周辺と十一面観音が結びつくけど、長福寺・飯道寺・円満寺・櫟野寺から。地蔵菩薩も同様、東南寺・永昌寺・長命寺から。全体的に平安時代の重文指定の像が多い。各々に味わい深いが、これだけ並ぶと頭の中が混乱。

 

 第7室。難しい分野だが、「弥陀三尊二十五菩薩来迎図(安楽律院)」の逆くの字に配置された仏のデザインはユニーク、「涅槃像(長命寺)」の嘆き悲しむ諸仏は華麗。

 

 「これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関 蝉丸」。京都から一山越えると雰囲気は随分変わる。それでも石山寺や園城寺などは、まだ京都か。琵琶湖の西岸でも東岸でも北上すれば鄙びた世界に変わる。数少ない体験だから的を射ているかは定かでない。改めて、随分と多くの社寺が点在することを認識した。

 京都を金に例えれば、琵琶湖周辺は銀か、それもいぶした銀。のんびりと巡ってみたいものだ。あわせて湖上から眺める海津大崎の桜も見たいし、叡山回峰行の極めて一部でも間近に接してみたい。交通不便で自動車利用が前提になりそうだが、所定めて山に分け入りたい。
 そのような思いを沸き立たせる特別展だった。

   (2012年10月14日記録)

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2012年10月12日 (金)

文楽:平成二十四年度十月地方公演『桂川連理柵』

  演目  桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
        六角堂の段
        帯屋の段
        道行朧の桂川

  会場  神奈川県立青少年センター
  公演  2012年10月7日(日)・昼の部
  鑑賞  2012年10月7日(日) 14:00~16:20(休憩15分)

 

 簡単にあらすじ。
 長右衛門は5歳まで信濃屋で育てられ、隣の帯屋の養子に、長じて家督相続。信濃屋の遺言、ゆくゆくは娘お半に良縁を、との言葉を心に留め、二周り年下のお半を可愛がった。

 ある日、商用の長右衛門と丁稚長吉などを供に伊勢から戻るお半は石部で出会い、宿を取る。夜、長吉に関係を迫られてお半は長右衛門の部屋に逃げ込んで戻らない。子供と思い自分の蒲団に入れるが思わぬことに。

 長吉の意趣返し、先代の後添えとその実子で弟に当たる儀兵衛のいやがらせが絡む。信濃屋、妻・お絹に義理が立たず、悔恨の長右衛門はお半の縁談をまとめるが、お半は聞かず、妊娠を告白、家出する。後を追う長右衛門。二人は桂川へ。

 

 横浜在住なので国立劇場公演に出かけることも可能だが、チケットが上手く取れない。と言うことで久々の鑑賞。昼の部は満席ではないけど、そこそこに埋まっていた。

 「帯屋の段」、切場の前半を嶋太夫・富助、後半が咲太夫・燕三。人形は、清十郎の長右衛門、勘十郎のお半。名人世代に続く実力者たちで、私には名前と顔が一致する世代。

 これがスタンダードと思って見聴きしたが、嶋太夫の語りがやや不鮮明に聴こえた。恐らく大夫のうちで最も聴いているのが嶋太夫、歯切れが良くて好きだがこの日は聴取りにくかった。

 比翼連理の夫婦愛、育ての親と養家の親との関係、その中で犯した過ちに苦悩する長右衛門
に、一途な思いのお半。内面の表現が重きをなす段。二度三度と繰り返し見るうちに良さがじわじわと判ってきそうな気がする。そう簡単に深く判る訳はない。

 「道行朧の桂川」、今生の別れ、生身の人間が演じては表現しきれない何かが感じられる。清々しさと言うのは危険かもしれないけれど。四月の大阪公演(TV中継で観た)では長右衛門を遣った勘十郎が、今回はお半。なかなか忙しいけれど次の世代を担う一人だろう。

 

 まだ観たことのない演目が大半で、この演目も初めてだった。でも「桂川連理柵」は上演回数が多いのだろう、案内を良く目にする。しかし菅専助作の世話物、物語として起伏に富んでいるとは言い難いように感じた。それを魅力的に仕上げるのも技芸員の技か。

 ところで文楽問題をご存知だろうか。2012年10月3日に行われた、橋下大阪市長と文楽技芸員の公開討論でひとまず小康状態に戻ったと思う。詳しく説明する能力は私にないので犬丸治氏のまとめた『橋下徹と大阪「文楽」問題を憂う』を紹介しておく。もちろん対峙する意見も参照願い、現在の状況を認識頂ければ幸い。

 私はこの状況を、文楽に止まらぬ文化に対する危機と捉えてこれからもフォローしていく。

   (2012年10月12日記録)

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2012年10月 7日 (日)

路上観察:さわやか横浜・オランダ客船出航(2012年10月5日)

 横浜港大桟橋に接岸中のオランダ客船・アムステルダム号は、5日正午の出航予定でした。颯爽と進む姿を写真に撮ろうと、横浜港シンボルタワーに向かいました。

 正午過ぎにベイブリッジ下を通過する客船がありました。様子がちがうのでおやっと思いましたが、ふじ丸が先に出航しました。
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 さらに15分ほど、ベイブリッジ下にアムステルダム号の姿が確認できました。やがて赤白灯台、そして目の前を通過しました。やはり大きい。
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、磯子沖で先導のタグボートが脇によって甲高い汽笛を3回吹鳴、アムステルダム号が重低音の汽笛を3回吹鳴しました。確認するようにタグボートが汽笛を1回吹鳴、アムステルダム号が汽笛を1回吹鳴しました。お別れの儀礼だったのでしょう。タグボートは航路を離れて停船、速度を上げるアムステルダム号を長いこと見送っていました。
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   (2012年10月7日記録)

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演劇:新国立劇場「リチャード三世」(長文)

  作    ウィリアム・シェイクスピア
  翻訳   小田島雄志
  演出   鵜山仁
  美術   島次郎
  音響   上田好生

  出演   リチャード三世 岡本健一
       マーガレット  中嶋朋子
       リッチモンド泊 浦井健治 他

  会場   新国立劇場・中劇場
  公演   2012年10月3日(水)~10月21日(日)、詳細要確認
  鑑賞   2011年10月3日(水) 18:30~22:10(休憩20分)
  参考   公式HP
  注    『 』内は、小田島雄志訳・リチャード三世・白水ブックスより引用

 

 リチャードの王位簒奪の野心は、妻・身内・家来・市民、ありとあらゆるものを踏み台にして省みない。その伏線は、冒頭のリチャードの独白に潜む。

 『ペテン師の自然にだまされて寸詰まりのからだにされ、醜くゆがみ、できそこないのまま、未熟児として、生き生きと活動するこの世に送り出されたのだ。』
 『おれは色男となって、美辞麗句がもてはやされるこの世の中を楽しく泳ぎまわることなどできはせぬ、となれば、こころを決めたぞ、おれは悪党となって、この世の中のむなしい楽しみを憎んでやる。』

 岡本健一は、厭世観をばねに詭弁を弄し残虐な行為を繰り返し、時に幼児性や愛情の切望を表出してリチャードの屈折した精神を描いた。2009年のヘンリー六世におけるリチャードの配役の際に今回を見通していたのだろうか。壷にはまった好演。

 リチャードの狂気はリチャード一人で成し遂げられたものでなく、忖度する取巻きの存在があってこそ。その関係が岡本を中心に良く伝わってきた。初日ながら良い仕上がりと感じた。

 前半は第三幕まで、クライマックスに向けて期待を大いに膨らませた。

 

 第4幕。リチャードは王位に就くも地位の安泰に不安を抱く。地位を確固たるものにするため、新たな殺戮、姦計を画策。
 ヘンリー六世の妻・マーガレットは、怨念を抱いて辺りに潜み、リチャードの命運の傾きを見守ったが、その序章を見届けてフランスへ渡ろうと心を決める。が、エリザベスたちと出くわし、女たちは身の回りに起きた殺戮の過去を顕にする。

 女優陣は、男性社会における女子供の立場を描き出す。なかでも中嶋朋子は、落ちぶれてなお尊大な気持ちを失わず、悲劇のマーガレットの執念を漂わす汚れ役を好演。

 

 第5幕。ポズワースの平原、対峙するリチャードとリッチモンド。決戦を翌日に控えて幕営する二人にヘンリー六世たちの亡霊が現れる。

 ヘンリー六世の亡霊が叫ぶ。『(リチャードに)思い起こすがいい、ロンドン塔にあったこの身を。絶望して死ね。ヘンリー六世がおまえに命じるのだ、絶望して死ね!』『(リッチモンドに)おまえを将来の王と予言したヘンリーが、こうして眠りにあるおまえを励ますのだ、生きて栄えよ!』。凄い場面だと思う。それまでの歴史が凝縮されているようだ。

 ヘンリー七世となるリッチモンドは、まだ頭上に翳されない王冠の上に赤バラと白バラを重ね、長かった薔薇戦争を終結を示す。心安らかになる場面だ。

 浦井健治は、リッチモンドを上品に演じてリチャードとの対比を明確にした。ヘンリー六世ではタイトルロールを好演したが、その雰囲気を引き継いでいる。良い役回りであることは確かだが、持って生まれた雰囲気もありそうだ。

 

 美術は、ポズワースの平原を意識しているだろう、荒涼とした雰囲気が基調。リチャードとリッチモンドの幕営は、舞台中央の回転舞台で表現。一方向への回転は、巻戻せない時の流れを表わすようでもあるが、私は回転舞台に多少の違和感を感じた。舞台機構を用いない演出は考慮されなかったのだろうか、素朴さを損ねたように思う。
 戦いの最中に、一時、照明を吊ったバトンが下がって上がった。ハプニングではないだろう。面白いと思ったが、二階席からは視野が妨げられた。問題になるほどのことはないけど。

 音楽はショパンとシューマンのピアノ曲を認識したが、他もあっただろうか。意外性を感じたけど悪くはない。リチャード三世が消え去る時の「シューマン:子供の領分から見知らぬ国と人々について」はちょっと付きすぎか。

 衣装は、主要な役が往時を思わせる服装、他は背広だったり、S.ジョブスを思わせるTシャツにGパンだったり。違和感はない。役柄が識別できれば目的は達成する。

 

 良く判ってはいないけれど、新国立の「ヘンリー六世」「リチャード三世」はシェイクスピア演劇のスタンダードではないかと思っている。
 例えば、新国立のヘンリー六世の後に観た「蜷川幸雄演出・ヘンリー六世」は圧縮上演。新国立のリチャード三世の前に観た「野村萬斎演出・悪三郎」は翻案上演。いずれも見事だったが、商業的に折り合いをつけているところはあっただろう。商業性を無視して良いとは思わないが、新国立が古典を古典のままに上演する使命は大きい。その意味で大きな成果だが、俳優・スタッフがさらに大きな成果に膨らませた。

 シェイクスピアにしろギリシャ悲劇にしろ、文楽を始めとする日本の伝統芸能にしろ、古典は古典として次世代に引き継ぐべきものだと強く思った。

   (2012年10月7日記録)

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2012年10月 5日 (金)

路上観察:さわやか横浜・イタリア客船出航(2012年10月4日)

 イタリア客船「コスタ・ビクトリア(75,116t)」は、3日昼過ぎに横浜港に初入港、赤レンガ倉庫側に着岸しました。4日朝には、オランダ客船「アムステルダム(61,000t)」も入港、山下公園側に着岸しました。
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 「コスタ・ビクトリア」歓送のドラム・パフォーミング開始。
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 「パシフィック・ヴィーナス」入港、「コスタ・ビクトリア」の出航後に着岸するようでしばし待機。
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 「コスタ・ビクトリア」は、予定より少し遅れた13時過ぎに離岸、後進してから向きを変える。
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 前進を始めた「パシフィック・ヴィーナス」と同一視野に。その後、船足を速めベイブリッジ下を通過して外港へ。
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 「アムステルダム」の雄姿、船員はしばしのんびり。
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   (2012年10月5日記録)

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2012年10月 2日 (火)

音楽:東京都交響楽団マーラー・ツィクルス第1期 ツィクルス2

  指揮  エリアフ・インバル

  独唱  澤畑恵美(ソプラノ)
      竹本節子(メゾソプラノ)

  合唱  二期会合唱団(合唱指揮=長田雅人)

  演奏  東京都交響楽団

  曲目  マーラー :交響曲第2番ハ短調「復活」

  会場  横浜みなとみらいホール(3階1列4番)
  公演  2012年9月30日15:00~16:45(休憩なし)

 
 

  台風接近の怪しげな空模様でした。その影響でプログラムが間に合わず、終演後に配布されるハプニングがありました。
 それはともかく、目見当で客席の九割以上が埋まっていました。16日の第1番「巨人」では結構空席が目に付きましたけど、名演奏の評判が広まって客を呼び寄せたのでしょうか。

 

 インバルはテンポを随分動かしていましたが、後姿を見ていて、テンポに限らず実に明確に指示を出しているように感じました。ソプラノ・アルト・合唱、巨大な編成のオーケストラにはオルガンや舞台袖でのホルン等の演奏も加わり、いくらプロのとは言え一糸乱れぬ演奏の実現のためには不可欠な事なのでしょう。

 「巨人」を聴いた時の興奮、それは初めて都響を聴いた興奮でもありました。その時には及びませんが、それでも演奏は見事で幸福感に浸りました。都響は、インバルの要請に的確に答えていただけではないように思えます。都響の音楽性・機能性が根底にあると思います。インバル・都響のマーラーに興味がありましたけど、こうなると他の指揮者、曲も聴きたくなります。

 3楽章の前にソリスト・合唱が舞台に登場します。そこで多少間が空きますけど休憩ではなく、演奏は100分ほどに及びます。この長い時間、緊張を切らさないようにするのは難しく、3楽章辺りで一旦気が緩んでしまうのは修行がたりないのでしょう。

 4楽章、アルトが「小さな赤いバラよ」と歌いだすのを聴きます。2010年5月の神奈川フィル創立40周年記念演奏会の復活」も竹本で、「地の底から響くように感じる」との感想を抱きましたが、今回も同様、実に魅力的で、緩んだ気が引き締まります。

 5楽章、ソプラノの澤畑も神奈川フィルと共演していましたが、ソプラノは活躍の場が少なくて気の毒のようなものです。合唱は力強く重厚、かと言って繊細でもあります。合唱が良くなくては、この曲は大団円に終わりません。インバルが最大限にドライブして「おまえを神の御許に運ぶであろう」が響きます。

 感動が満ち溢れて終わる筈でしたが「ブラボー」が早すぎ。暫しの静寂が会場を支配したならば、もっと深い感動が味わえたと思います。

 

 三階席は初めてでしたが、最前列は一応A席です。舞台を鳥瞰し、管のベルアップなど、細かい様子も良く見えました。音がか細くなることはありません。今回は下手側でハープが見えませんでしたけど、もう少し中央寄りの席を選べば最高でないかと思いました。次の機会に試したいと思います。

   (2012年10月2日記録)

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2012年10月 1日 (月)

路上観察:さわやか横浜・本牧海釣り施設(2012年9月29日)

 本牧埠頭D突堤に本牧海釣り施設があります。D突堤の先端に位置する横浜港シンボルタワーの1Kmほど手前です。入場料は、釣人が800円か900円、見学だけなら100円です。
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 施設は護岸に沿った部分と、海に100m突き出て、そこから直角に300m延びる桟橋があります。私が行った時は500人ほど入場していて、入場制限しているようでした。ちょうど日が翳って暗い感じになってしまいました。
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   (2012年10月1日記録)

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