路上観察:鈴木牧之記念館と三国街道塩沢宿(2012年8月9日)
「北越雪譜(*1)」は北越の雪を主題とし、風俗習慣、科学的随筆も交えて興味深い一編。時は江戸後期、現在の生活はおよそ一変しているだろうゆえに民俗学的な色彩も漂わして名著。一読して、暖国人の私に雪国の生活は興味深く刻み込まれた。
著者・鈴木牧之(ぼくし)は、越後塩沢の人、1770年(明和7年)生まれ、幼い頃から学問・俳諧・書画に励み、長じて家業の縮仲買・質屋に精励、鈴木家を塩沢屈指の地位に築きあげた一面も持つ。ちなみに牧之は俳号、本名は儀三冶(ぎそうじ)。
「鈴木牧之記念館」はJR塩沢駅近くにあって、「北越雪譜」の初版本、遺墨、雪国に関する民俗学的資料などが展示されている。どなたもお出かけ下さいとは言い難いけれど、「北越雪譜」に心惹かれる方は一度立寄られては如何か。
写真は左から、記念館全景、俳碑(そっと置くものに音あり夜の雪)、友人の証言、牧之生家(牧之通り)。
三国街道塩沢宿に入ると、古い民家風の建物が左右に連なる。雪国特有の雁木も見られる。建物は新しいものだが、景観条例に添って統一感が確保されている。素朴な意匠ではあるけれどけばけばしい広告類もなく、空中に架線もなく、大きな空に良くマッチする。飲食店や土産屋も点在するが、多くの観光地に見られるけばけばしさもなく、落ち着いているところが美しい。
牧之通りの名が冠されていて、建物に「北越雪譜」などから採られた小文が掲げられている。たどって歩くのも楽しい。
写真は左から、牧之通り、お医者さんも(右側)、家先の掲示、雁木。
牧之通りからそれた所に甍が聳える「信受山長恩寺」の一角で、鈴木牧之は永眠する。特に案内があるわけでなく、墓所を一周して見つからず、本堂で声がしたのを幸い確認してようやく探し当てた。墓石には何名もの法名が刻まれており、牧之の法名は左下に刻まれていた。縁といえば著書に感銘したことだけだが、敬意を表した。墓マイラーの末席に加わったかも知れない。
(*1) 北越雪譜・鈴木牧之著・岩波文庫 黄226-1
(2012年8月11日記録)
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