美術:トミオカホワイト美術館(2012年8月9日)
「個人美術館への旅(*1)」など類書を多く見かける。個人美術館に限らないが、興味惹く美術館が各地に開館され、その訪問を目的に旅行する方も少なくないようだ。私もその一人。
先日、新潟からの帰路、興味惹く何箇所かに寄ったので順に紹介する。往路は、少し後にもう一度出かけるので今回は省略。
新潟南魚沼の稲の波の寄せる中に「トミオカホワイト美術館」の白い姿が確認できる。遠くにスキー場も見え、冬に白銀の世界に一変することは容易に想像できる。
八海山が間近に見える。ロープウェーが架かるそうで、美術館からもう少し奥まった所に乗り場がある。
名称の「トミオカホワイト」も、知らなければ外人?と間違えそうだ。「トミオカ」は画家・富岡惣一郎から、「ホワイト」は白銀の世界を多く描いたことから取られたのだろう。
9時過ぎに到着、小一時間を館内で過ごす。その間に訪れる人はなく、私一人で借り切り状態。何と贅沢な美術鑑賞。しかし運営は紆余曲折、現在は南魚沼市管理のようだ。訪れたのは週日だが、週末に多くの方が訪れるのだろうか。とても心配だ。
展示室は長方形の一室のみ、中央スペースに富岡使用の画材などの展示。富岡が作った「ジンクホワイト」など数種類の白絵具、長さ60Cmほどのペインティングナイフが目を引く。白銀の世界を描くために、既存の画材では足りなかった。
展示室の壁面に作品展示。大半は白と黒の無彩色の世界、色彩があれば紺色だったり濃い灰色だったり、時に小さな枯れ木の茶であったり。
例えば、白銀の世界に川の蛇行する様子を想像されたい。白銀の山の斜面に木が点々と連なる様子を想像されたい。
多くは抽象画のようだが、目を凝らすと、川の筋や山のひだが見えてくる。じっくり作品と対峙する。借り切り状態の静寂な環境は、何ものにも変えがたい時間だった。
富岡を雪を描きたかった。雪の白さも様々で、その表現のために様々な白の絵具を作り、雪を際立たせるために風景を選んだ。暖国育ちの私に、雪の見分けができないけど。富岡の画壇に占める位置を良く知らないが、私は好きだ。雪国の厳しさと、それゆえに豊饒の実りを約束する世界が見えるから。
今回が二回目の訪問。機会があれば白銀の時期に訪問したいものだ。
(*1) 個人美術館への旅・大竹昭子・文春新書272・平成14年発行
(2012年8月10日記録)
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