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2012年6月30日 (土)

美術:神奈川県立近代美術館葉山館「松本竣介展」 (やや長文)

  名称   生誕100年 松本竣介展
  会場   神奈川県立近代美術館葉山館
  会期   2012年 6月 9日(土)~ 7月22日(日) 、詳細は要確認
  鑑賞日  2012年 6月27日(水)

  参考   巡回は次のとおり、詳細は要確認
         岩手県立美術館(終了)、
         神奈川県立美術館葉山館(~ 7月22日)、
         宮城県美術館(8月4日~9月17日)、
         島根県立美術館(9月29日~11月11日)、
         東京世田谷美術館(11月23日~2013年1月14日) 

 
 
 2012年は松本竣介の生誕100年にあたる。両手で数えるほどの作品は鑑賞したが、個人展に接するのは初めて、貴重な機会になった。作品は「Ⅰ前期」「Ⅱ後期人物」「Ⅲ後期風景」「Ⅳ展開期」に大分類され、各々がいくつかに小分類される。それにしても夭逝の画家にこれほどの作品があるとは、運命を予知していたのか。

 「Ⅰ前期」は15~36歳の間に制作された作品が、「初期作品」「都会:黒い線」「郊外:青い面」「街と人:モンタージュ」「構図」に小分類されていて、鑑賞の助けになる。
 こういう時代を経て名作に結びつくのは当然だが、私の中では空白だったので新鮮。他者の影響が感じられたり、抽象性を帯びた傾向に漂ったり、若さの発露が感じられる。結果的に晩年となってしまったことが悲しい。
 この中で、「郊外:青い面」シリーズに特に惹かれる。中学入学を目前にして聴覚を失ったそうだが、作品に都会の騒音すら漂わないのは、因果関係がありそうに思えた。

 「Ⅱ後期人物」は、28~36歳の間に制作された作品、「自我像」「画家の像」「女性像」「顔習作」「少年像」「童画」に小分類されていた。
 これらは第2室に展示されるが、部屋を仕切る壁の中央の切り欠きを移動すると、正面に「立てる像」が見えて一瞬ハットする。懐かしい人に再会した気分だ。この作品は当館所蔵品だし意図的な配置だろう。スタッフに拍手だ。
 ここでは「立てる像」「画家の像」「五人」に注目が向かう。それらの制作に向かう過程で油彩や鉛筆などで描かれた自我像なども興味を惹く。どこか幼さの残る竣介の顔、大いなる未来を見つめていた筈だ。

 「Ⅲ後期風景」は、28~35歳の間に描かれた作品、「市街風景」「建物」「街路」「運河」「鉄橋付近」「Y市の橋」「ニコライ堂」「焼跡」に小分類されていた。
 私にとって最も印象の強いのが「Y市の橋」。横浜駅北東口を出た辺りの風景、大きく様変わりしていて、画に留められた跨線橋も暫らくすれば撤去されて、絵に描かれたもの全てが何らかの物に置き換わるだろう。
 4点描かれたという「Y市の橋」の3点と、同じ場所で視線を少し右に振って描かれた「街角(横浜)」が展示されている。未展示の1枚は東京国立近代美術館所蔵のもの、図録に掲載されているのでどこかの会場で観られるだろう。
 驚いたのは京都国立近代美術館所蔵の1枚。初めて観るし、他の3枚は大きく言えば似た印象を受けるのに、この1枚は色彩豊富で、荒々しい仕上がり。戦災による荒廃を留めているのだろう。横浜も大空襲を受けているのだ。
 ここに展示される作品はどれをとっても強く惹かれる。「後期人物」と合わせて、竣介のアイデンティティの吐露したものばかりだ。

 ここまでに1時間半ほどを要して閉館が近づいた。「Ⅳ展開期」は駆け足で回った。

 竣介は1948年、36歳で夭逝。人並みの寿命を送れたら、どれだけ偉大な画業を成し遂げたことだろう。いや、残した作品は多いし、内容も見事だし、既に偉大な画業を成し遂げていたのだが。

 最近は展覧会図録を購入しないが、今回は例外として購入した。サンプルをざっと見て、竣介の全貌を知るために内容豊富で格好の仕上がりと思えた。豪華とは言わないが定価2300円がありがたい。これもスタッフに拍手。

 

 竣介の倍には届かないが、私の残された時間も少なくなったと実感する昨今だ。これだけ見事な回顧展に出会うのは、これで最後だろう。再訪必須、11月には世田谷美術館に巡回するので、その時も出向ける。

 バスに乗るのも気が向かず、美術館裏から海岸をたどりながらゆっくりと新逗子まで歩いた(5Km強)。海の家の建設が急ピッチ(既に海岸開きをしたとのニュース)、森戸神社に茅の輪が準備され、もう夏だ。夏の日の恋は無理にしても、新しい何かに出会いたいと思った。

   (2012年6月29日記録)

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