美術:原美術館「ハダカから被服へ」
名称 杉本博司 ハダカから被服へ
会場 原美術館
会期 2012年3月31日(土)~ 7月1日(日) 、詳細は要確認
鑑賞日 2012年5月31日(木)
参考 公式ホームページ
「ハダカから被服へ」はファッション系の企画と思いました。私には縁遠い範疇ですがそこは杉本博司、期待を抱いて出かけました。
展示の核になる作品が「スタイアライズド スカルプチャー」と題される連作。マネキン人形に、過去一世紀に渡るオートクチュール(多分)の作品を装わせて撮影した大判写真。モノクロですが、素材の質感を感じ取れるほど美しく仕上がっています。きっちとライティングされた長時間露出(多分)写真は、写真としても見ごたえあります。
例えば、イブ・サンローラン「モンドリアン(1965)」、原色の色分けが感じられます。オードリー・ヘップバーンが思い浮かびますが、サンローランは、多分着ていないでしょう。
ガブリエル・シャネル「絹のシフォンのドレス(1926頃)」は、柔らかで、羽根のような軽い質感、今着ても他人が振り還るような(少なくとも私は)作品です。マドレーヌ・ヴィオネ「流水紋のドレス(1925頃)」も、手仕事の良さを感じさせます。
写されたオートクチュールの素晴らしさか、写真の素晴らしさかが判らなくなります。
撮影対象のエルザ・スキャパレリ「ドレス(1938年頃)」が、三階への階段途中に展示されています。黒を基調に、肩から上腕と背中の大きなリボン飾りがくすんだ赤。
既に写真を見ていたのですが、写真ほど美しくないなとおかしな思い。複製が現物を超えて、杉本の写真家としての力量を実感します。
ここまでが「被服へ」にでしょう。とするならば「ハダカから」は何処。
一階廊下に「ジオラマ」「肖像」の写真が展示されています。「ネアンデルタール(1994)」「クロマニヨン(1994)」「ヴィクトリア女王(1994)」など。こちらは小振りな写真で、既視感もあって大きな衝撃はありませんでした。
「杉本文楽曽根崎心中の為の人形と衣装」、野村萬斎が三番叟公演で着けた「雷紋の能衣装」、私は公演を観たので興味深いものがありました。しかし、全体の流れから言えば、被服には違いないものの日常性に欠けるので多少の違和感を感じました。
展示作品は大方が以前の作品。「ハダカから被服へ」とのストーリー・ラインで再構成して多くの観客を引寄せる杉本は、現代美術のカリスマでしょう。私は観たことがなかったので、「スタイアライズド スカルプチャー」の作品だけの構成でも満足できたと思います。その方がすっきりしたかも。
(2012年6月3日現在)
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