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2012年5月20日 (日)

随想:映画「泥の川」

 ここ数年、一年に5~10作品程度の映画を見に出かける。それ以前は、ほとんど映画を見に出かける習慣が無く、新聞や雑誌の評などで大筋の流れを知るだけだった。

 最近、古い映画を見ている。といっても映画館に出かけるわけでなく、NHK BSで放映されるもの。現在、「プレミアムシネマ(国内・外作品)」「山田洋次監督が選んだ日本の名画100本」の2シリーズ、合計すれば週に4~5作品が On Air される。それを録画し、都合の良い時間に見ているわけだが、一気に見られないので何分割にしたりもして。

 まだ多くを見ていないが、幾つかの作品が心に残った。今さら私が言うまでも無く、秀作・名作と世間で言われる作品だが。

 「泥の川(モノクロ、1981年)」、原作は宮本輝の中編小説。映画に、原作から引き去ったものはない。原作の香りを失わずに付け加えたものが素晴らしい。それが映画化の意義だろうが。戦争の傷跡を引きずりながらも生き続けなければならない廓船の一家。子供達のぎこちなさから始まる友情が、対岸で食堂を営む一家のさりげなく暖かい愛情を呼び覚ます。モノクロなのに、モノクロだからか、舞台となった大阪・安治川河口附近の描写が美しい。ある日、廓船はぽんぽん舟に引かれて川を遡って行く。食堂夫婦を演ずる田村高廣・藤田弓子のほのぼのとした役作り、廓船の加賀まり子の美しさ。子供たちの奔放な演技。すべての寄せ集まったところで静かに訴えるのは、戦争反対であろう。

 「東京物語(モノクロ、1953年)」、人口に膾炙した作品で多くを言う必要はないだろう。デジタル・リマスター版ということで画面はきれいだ。笠智衆、東山千恵子、原節子、杉村春子、他、芸達者な人が多い。家族というものは、物理的にも心情的にも離散していくものと判るが、原節子演じる次男の未亡人の心根が純粋で、爽やかで忘れ難い。誰しもが思って出来ないことだろう。蒸気機関車が通り抜ける尾道の家並みの俯瞰が美しい。

 原節子に的を絞れば、没落する名家の悲哀をテーマにした「安城家の舞踏會(モノクロ、1947年)」、林芙美子原作による「めし(モノクロ、1951年)」も印象深い。
 「紀ノ川(カラー、1966年)」冒頭の船による嫁入り場面は、これぞ映画と思える。今となっては、実写でこれだけの場面を撮影できないでしょう。

 今回は、「山田洋次監督が・・」に偏った。続きは追って。

   (2012年5月20日記録)

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