映画:pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
監督・脚本・製作 ヴィム・ヴェンダース
参考サイト 公式サイト
場所 横浜ブルク13
鑑賞 2012年3月1日
ピナ・バウシュ、2009年6月急逝。日本における追悼公演が2010年6月に新宿文化センター他にて行われた。随分と前の出来事のような気がする。時間的な余裕が出来たというのに、時は過酷だ。ベジャールしかり、カニングハムしかり。
準備はピナの生前に開始されたそうだが、撮影開始直前にピナ急逝。この映画は踊り続けるいのち、すなわちブッパタール舞踊団の仲間たちの胸の中にあるピナの姿、受け継いだ精神を、踊りと語りで表現したもの。仲間たちは多国籍の集合体、年齢やピナとの接触の仕方が異なるから様々に表現される。
ピナの作品「春の祭典」「カフェ・ミュラー」「フルムーン」が大きな動機として位置づけられる。気付いた範囲なので他にもあるだろう。それらの間に小さな作品あるいは大きな作品の一部かも知れない踊りが挿入される。ピナへの思い出、受け継いだ精神などの語りが挿入される。
踊りというと美しい場面が想像される。ピナの作品はもちろん美しいが、創作は土俗的というか原始的というか、そちらの方に向く。ゆえに、舞台は劇場・練習場に限らず屋外にも及ぶ。モノレールが頭上を通り抜ける街中、モノレール車中、工場、野辺、川辺、丘陵であったりする。あらゆる生活空間だ。
映像表現に様々なテクニックが用いられる。踊りに入り込んだカメラセッティングもある。全てがピナを髣髴させる。しかし、予備知識無しにピナの世界を思い描けるだろうか。映像は新たに撮られたものが大半。過去の公演記録ではないし、ドキュメンタリーとも言えない。新たな創作とも言えない気がする。捕らえ方が難しい。
ヴィム・ヴェンダースが悪い訳ではない。むしろ素晴らしい映画だ。ただ、結局はそこに回帰するが、ピナとヴィム・ヴェンダースは直接対峙できなかった。それを言って何が変わる訳でもないが。
ピナの思い出・精神に浸りたいなら、貴重な情報を与えてくれるだろう。ピナとは何者かと新たに思う方がいるならば、その一歩を踏み出す貴重な情報を与えてくれるだろう。ライブステージは敷居が高いと思う特に中高年男性諸氏、まずはこの映画を見たら如何だろうか。
私は3D映像を好まない。立体感が時に安っぽく見える。カラーでなくても良いと思う。技術の粋を尽くせば失うものもある。それだけは気になった。
(2012年03月03日記録)
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