演劇:女中たち
作 ジュン・ジャネ
翻訳 篠沢秀夫
演出 李潤澤(イ・ユンテク/劇団コリペ)
出演 マダム 裵美香(ベ・ミーヒャン)
女中・クレール 坂本容志枝
女中・ソランジュ 久保庭尚子
会場 タイニーアリス
公演 2011年8月24日(水)~28日(日)
鑑賞 2011年8月25日(火) 14:00~15:45(休憩なし)
参考 韓国・日本・韓日合同の3ヴァージョン中の韓日合同の回
女中には差別的な意味合いが含まれ、通常は家事手伝いなどと言い換えられる。時代を遡れば、高位な女性の職業の呼称であったにも関わらず。原作の「女中たち」にも高位な女性の職業のニュアンスがあるらしい。しかし、乗り越えられない彼我の階級。
マダムの寝室、下手に大きな開き窓、家具調度は洋風で赤いハイヒールなどが置かれている。衣装は和服、マダムは赤色っぽい下着姿、上着は衣桁に掛かり、クレールの喪服姿は先行きの暗示か。上手隅のミシンと粗末なベッドは女中部屋だろう。和洋折衷ではあるが違和感はない。
マダムはマダムらしく振舞い、クレールは女中らしく慇懃に振舞う。目覚まし時計が鳴るまでは。
もうすぐ本物のマダムが帰る。実は、クレールがマダムに、ソランジュがクレールになり切って「マダムごっこ」をしていた最中だ。伏線がある。女中たちは旦那の小事を密告し旦那は囚われの身になっていたが、電話で予想外の釈放の連絡が届いた。
帰ったマダムは置かれた物の位置が変わったり、クレールの化粧の残りでマダムの古い化粧品の使用を知る。電話の受話器が外れていることを問えば、旦那が釈放の連絡のあったことを知る。喜び勇んで出かける段取りを女中たちに命ずる。女中達はしきりに睡眠薬入りの菩提樹花のお茶を飲ませようとする。
密告の事実もやがて気付かれるだろうと思いながら、マダムごっこを続ける女中たち。
1時間40分を言葉の礫で繋ぐ女中たち。難解な戯曲だが、ディテイルは明確になった。調べれば、坂本はSCOT・第三エロチカ、久保庭はACM・SPAC・SCOT・フリー、経験豊かな女優たちであり、「女中たち」はイ・ユンテクの下で半年余りの研鑽を積んだとのことだから、押して知るべしか。
マダムのベ・ミーヒャンは、わずかにたどたどしさを感じさせる日本語だが、そこにマダム然とした雰囲気が漂い、なかなか良い組合せだ。フランスの戯曲を韓日の俳優が演じる違和感など一片もない。
乗り越えようとして乗り越えられない一線。それらを超越するように世の中は動いてきた筈だけど、反って強化されている様に感じる。女中をお手伝いさんと言い換えたところで潜在意識を変えることは、上っ面の言葉のようにはいかない。甘い言葉に気をつけろか。
「女中たち」は上演機会の多い戯曲と思うが、理由はその辺りにあるのだろう。他のヴァージョンも観たかった。
(2011年8月31日記録)
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