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2011年9月23日 (金)

能楽:『 神 秘 域(かみ ひそみ いき)― OUR MAGIC HOUR 』

   番組  三番叟
         三番叟  野村万作
         千歳   深田博治

       三番叟
         三番叟  野村萬才
         千歳   高野和憲

             Photo

   演出  杉本博司

   会場  神奈川芸術劇場ホール
   公演  2011年9月21日(水)
   鑑賞  2011年9月21日(水) 19:00~20:40(休憩20分)

 

 客入りは二割に届いただろうか。舞う方も観る方も、主催者・共催者・関係者も含めて気の毒な状況だった。台風15号が最接近した時間帯で、客が劇場に移動する手段を失っていた。
 私が自宅を出る17時40分過ぎに運転していた横浜近辺の公共交通機関は、横浜市営地下鉄と横浜市営バスのみだった筈。私は地下鉄を選択。

 

 ヴァリエーションがあっても、「三番叟」を一夜に二回演奏するのは類稀というより、かってなかったのではないか。それに野村万作・萬才という親子にして師弟の共演、杉本博司の演出が興味深い。開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2011」が共催である。

 

 舞台は仮設。目見当で三間四方よりは広く、地謡座と一体化しているのだろう。舞台前方左右に目付け柱・ワキ柱の意味だろう、二尺ぐらいの柱が立つ。鏡板の位置に杉本撮影(多分)の松並木の写真。橋掛かりは舞台後方から後に真直ぐに延び、そこから直角に下手に曲がっていた。

 照明が落ちているところに千歳・三番叟・囃し方・地謡が登場する。途中から照明が入る。地謡は一端席に着くが、声を発することなく鏡の間に戻る。三番叟だけが演奏されるので、「翁」の形式だけが踏襲されたと思うが、「翁」を観ていないので想像だ。

 野村万作は、今年6月に「簸屑」の太郎冠者を観ている。その時と顔付きが違って見えた。前半の「揉ノ段」が終了すると、後見座で黒式尉の面を付けて「鈴ノ段」、動きの止まることが無いので、肉体的にきついものがあると感じられた。天下泰平は、古代より連綿と繋がる人々の思いであることも伝わってきた。

 舞楽・振鉾(えんぶ)でも、大地を踏みしめる所作を見た。時間を遡れば伝統芸能はどこかに収束するかも知れない。断片的な見聞しかないが、若いときから興味を持っていたら今頃は少し判ったことがあったように思う。

 

 休憩後、舞台前方左右の柱が外されていたが、これだけで雰囲気は随分変わる。松林の写真も取り払われ、替わりに「雷(いかずち)」を染め抜いた幔幕が、舞台上と舞台後方に掲げられていた。

 野村萬才は現代劇でも良く見かけるが、やはり顔付きが引き締まっていた。悪くとらないで欲しいのだが。それに、いつもより若く見えたが、多少見下ろす位置関係だったからか。万作の衣装は伝統的なものだったが、萬才の衣装は紺地に白く雷が染め抜いてあった。進行に従って、幔幕が雷が光ったのも印象的だった。

 

 伝統芸能に限らないが、舞台に立つような人は一流の技能を保持する。その技能の深さを容易に見抜くことなど素人にできる筈がない。ただ、比較すれば万作と萬才に差があることは気付く。萬才の若さと言ってしまえばそれで終わりだが、所作や口跡に確かな差がある。絶対的には見抜けないが、相対的には感じられるところが興味深い。

 杉本の意図はそこにあるのだろう。笛の藤田次郎と松田弘之にしても音色が異なる。藤田の方は高調波を多く含む鋭い感じが強く、松田の方は柔らかい感じがした。笛の差か、技能の差かは確かめられないが、差のあることは確かに感じた。

 通常の能舞台に演出が加わることは無いと思うが、今回程度の試みは興味深い。極端に過ぎれば歌舞伎に近づくのだろ。変化しないことに伝統を見出す方も多いだろうが、私は蓄積が少ないから抵抗は無かった。

 それと同じ曲目を並べるのも実に面白かった。今回は、親子・師弟だったが、流派による差なども面白いのではないか。次なる機会を杉本博司に期待しよう。

   (2011年9月23日記録)

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