音楽:神奈川フィル第270回定期演奏会
指揮 金聖響
演奏 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲目 マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」
会場 横浜みなとみらいホール(1階29列24番)
公演 2011年3月12日14:00~15:40
東日本大震災翌日の公演、主催者は公演中止も頭を過ぎっただろう。
演奏が始まるまでの手順がいつもと異なった。いつもは、メンバー登場・コンサートマスター登場・チューニング・指揮者登場。当日は、メンバーの後の方に混じってコンサートマスターも登場・指揮者登場・指揮者挨拶・黙祷・チューニングであった。
指揮者挨拶は「我々ができることのは音楽しかない。精一杯演奏する」。それにしても、演奏されるのが「悲劇的」であるのも何と言う巡り合わせだろうか。
第1楽章、低音絃がリズムを刻み、ヴァイオリンは何かが押し寄せるような行進曲風の主題を奏でる。激しい演奏だ。地震・津波が脳裏に浮かぶ。追い立てられるようだ。
第2楽章、たゆたうような、印象的な主題で始まる。絃が美しく、癒される。
第3楽章、第1楽章を思い起こす主題で始まり、様々な楽器が繰り返す。管楽器が印象的。
第4楽章、30分ほどの長大な楽章、盛り上がりは何箇所もある。そのなかで2回打たれたハンマー、生演奏は初めてだから見るのも初めて。木造建築の柱を立てるときにつかうような大槌を頭上高く振り上げ、専用テーブルをたたく。
ところでマーラーはこの交響曲を悲劇的に締め括っただろうか。一筋の燭光を見る思いがするのだが。
演奏が終わると静寂、ステージ上は動きを止めた。暫らくしてぱらぱらと拍手が始まったが再び静寂に戻る。やがてブラーボの声がかかり、思い出したように拍手が始まった。心に残る演奏だった。
ホルン・トランペット、管楽器が見事。打楽器は音楽を盛り上げた。弦は相変わらず美しい。二年前からの定期会員、当初は管にぎこちなさを感じたが、今は全体が良くバランスしている。
返り際、メンバーが募金を募っていた。
淡々と日常をこなし、その中で被災した皆さんへ思いを馳せ、出来ることを実行する。それが被災した皆さんへの何よりの励ましになる思いがした。
(2011年3月17日記録)
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コメント
きっと心に残る演奏会だったことと思います。
それぞれにできることをするしかないですよね。
記事を読んでいるだけで音が聴こえるようで感動しました。
今日初めて日立にいる従兄弟の家に電話しました。
やっと電気が来て、でも水道はまだだめで給水車と湧水に頼っている生活だけど、こんなことくらいなんでもないと逞しいお嫁さんは言ってました。
(従兄弟は八王子に単身赴任中です)
私もいつも通り明日は仕事に行ってきます!
投稿: strauss | 2011年3月17日 (木) 23時18分
中止ならそれも仕方ないと思っていました。しかし、Twitter上のメン
バーと金聖響のやり取りで開催を知り、出かけました。数多くの演奏会に
出かけましたけど、この演奏会を忘れることはないでしょう。
地震の翌日ということもあります。そして、それ抜きに考えられません
が、マーラーの名曲と言われる6番を、金聖響・神奈川フィルは見事な演
奏で締め括りました。客席の4割ほどしか埋まっていないのが、なんとも
気の毒でした。
来年度も定期会員になりましたが、公演に通える間は神奈川フィルと付
き合おうと決心した次第です。
投稿: F3 | 2011年3月18日 (金) 00時28分