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2011年3月 8日 (火)

読書:最近の読書から(2011年3月8日)

1.『恋する伊勢物語(上・下)』 俵万智著 埼玉福祉会発行

 

 本書は解説書で、現代語訳ではない。平易で軽やかな文体は、高校生を意識して書かれたものだろう。はるか昔の高校生にとっても快適だ。

 

 「第1節 とりあえず、男がいた」で基本を押える。

 「とりあえず、ビール」、物語の書き出しはそれに似て「(とりあえず)むかし、男ありけり」。成立に遡ると業平の存在は重要かも知れないが、時空から解き放たれた自由な存在の「男」を再び現実に呼び戻すことはないだろう。どんなに短い段でも必ず短歌が出てくると。

 

 「第2節 短歌は必修科目」で短歌を押える。これ以降、主要な段が取り上げられるが、ここでは「初段 初冠」。

 大人の仲間入りした若者が狩に出かけて美しい姉妹に一目ぼれする。当時の恋のステップではまず短歌を贈る。

  春日野の若紫のすり衣しのぶのみだれかぎり知られず

 若者は自分の狩衣の裾を切り取って短歌を書き付ける。ところで聞いたような歌、実は古今集の源融の

  みちのくのしのぶもじずり誰ゆえにみだれそめにし我ならなくに

の借用。古歌をふまえた短歌を詠み、凝った紙(衣)に書きつけ女性に贈るなんて、いきなり恋の上級編。若者の胸は高鳴っただろう。姉妹のいずれに恋したか、結果は。それは想像におまかせだと。

 

 一読すると目の上の鱗が落ちる思いがする。
 言葉が現代とは異なるけれど、描かれる世界は実に人間臭くて、現代に生きる私たちの喜怒哀楽と共通することに気付かされる。
 高校生には、男女の機微や愛憎を深くは理解できないかも知れない、私だって多くを判りはしない。しかし、恋に恋する多感な一面は共振させられるだろう。現代は大らかな気持ちを失っているように思えるから。

 伊勢物語の根底にそれらが潜むのは当然だが、それらを顕在化させたのは著者の技量とセンスだ。「サラダ記念日」の、そして高校教師でもあった著者の。
 「とりあえず、ビール」が高校生に理解されるかは疑義が湧くけれど。

 

 注:上・下分冊は大活字本シリーズのため。底本は『ちくま文庫 恋する伊勢物語』である。

   (2011年3月8日記録)

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