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2011年2月 9日 (水)

演劇:新国立劇場「焼肉ドラゴン」

  作・演出 鄭義信
  翻訳   川原賢柱

  出演   金龍吉・「焼肉ドラゴン」店主  申哲振
       高英順・竜吉の妻        高秀喜
       金静花・長女          栗田麗
       金梨花・次女          占部房子
       金美花・三女          朱仁英
       金時生・長男          若松力  他

  会場   新国立劇場・小劇場
  公演   2011年2月7日(月)~20日(日)、
         詳細要確認(ソウル、兵庫県、北九州公演あり)
  鑑賞   22011年2月7日(月) 18:30~21:25(休憩15分)
  公式HP  焼肉ドラゴン
  参考HP  あらすじ(Performing Arts Network Japan)

 

 初演は2008年、私は見逃した。今回が再演、新国立の最近の傾向から異質とも思えるが、秀作ゆえに多くの支持を集めたからだろう。これは名作だ。

 

 主人の名前からドラゴンと呼ばれる焼肉屋の店先、そこで繰り広げられる在日コリアン家族と周囲の人たちの生活。それを通して民族問題や太平洋戦争・済州島四三事件の影に迫るスケールの大きな物語。

 頃は1970(昭和45)年前後、大阪千里で国際博覧会が開かれ、「やったぜベイビー」などの流行語が飛び交い、金嬉朗事件などが起きた。場所は飛行機が頭上を頻繁に通り過ぎる水はけの悪い場末の低地。

 

 店主を演じた申哲振は、動きが多く賑やかな舞台の中で静。戦争で片腕を失くしながらも、働きに働いて家族を支え、家族に向けられる社会の仕打ちに耐えてまで社会に溶け込もうとする一徹さを滲み出させた。この物語の中心であり重心、確かな存在感。

 妻を演じた高秀喜は、いわゆる肝っ玉母さん、喜怒哀楽を隠すことなく、子供を愛し子供の楯となる強い母親像を浮かび上がらせた。

 子供達の生き方は様々だ。娘達は喜劇風でもあり飽きさせることはない。
 長男は、私立校に通うがいじめに合い、屋根の上に逃避場所を見つけるが、やがて自死する。社会の仕打ちを強く感じさせた。

 立ち退きを迫られ、長女夫婦は北朝鮮へ、次女夫婦は韓国へ、三女は日本人と結婚し、夫婦はありあわせの荷物をリヤカーに積んで新しい土地へ移っていく。それがどういうことか、その後どうなるかは、私が考えること。鄭義信は笑いに紛らせて大きな課題を突きつけた。

 長男は冒頭に屋根の上で「ここは大嫌いだ」と叫ぶ。そして幕切れに再び現れて「でも大好きだ」と。これもまた「わが町」だろう、涙誘われた。

   (2011年02月09日記録)

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鳴りやまぬ拍手とスタンディングオベーション…。 2008年に初演され、その年の演劇賞を総なめにした『焼肉ドラゴン』の再演を観たが、やはりこれは歴史に残る名作だと確信した(2月12 [続きを読む]

受信: 2011年2月13日 (日) 00時30分

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