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2010年11月15日 (月)

演劇:─現代劇の系譜をひもとく─Ⅱ「やけたトタン屋根の上の猫」

   作   テネシー・ウィリアムズ
   翻訳     常田景子
   演出     松本祐子
   出演  マーガレット   寺島しのぶ
       ブリック     北村有起哉
       メイ       広岡由里子
       ビッグ・ママ   銀粉蝶
       ビッグ・ダディ  木場勝己
       グーパー     三上市郎、 他

   会場    新国立劇場・小劇場
   公演    2010年11月9日(火)~11月28日(日) (詳細は要確認)
   鑑賞    2010年11月12日(金) 18:35~21:20(休憩15分)

 

以下、内容に触れますので承知おき願います。

 
 
 

 マーガレットとブリックは次男夫婦、子供はいない。ブリックはホモセクシャルな関係にあったと疑われる親友の死をきっかけに酒びたり、マーガレットのある事件をきっかけにセックスレスな状態になる。マーガレットは失った夫の愛を取り戻そうと必死になっている。

 ビッグ・ダディーは一代で大農場を築き上げたが、今は癌に侵され余命いくばくもない身、しかし本人はそれを知らない。ビッグママに不信感を抱いている。遺産はブリックに相続させたい気持ちを持つが、酒びたりの状態を危惧している。

 メイとグーパーは長男夫婦、5人の子供がいて、6人目を身籠っている。ビッグ・ダディーの様子を知って相続を有利に運ぼうと画策している。

 今日はビッグダディの誕生パーティ、セクシャリティと遺産相続が底流になって、各々の本心と思惑が暴かれていく。

 

 ブリック夫婦の部屋。中央に大きなベッド、上手にバスルーム、下手に応接セット。奥はバルコニー、下手は廊下で、部屋との境はドアとドア枠で示されるが壁はない。ゆえに壁に身を寄せて聞き耳立てる様は観客から見える。下手手前の階段は奈落に消えて、二階部屋であることが判る。

 1幕、マーガレットは子供たちに服を汚されたと言って着替え、ブリックはバスに浸かっている。やがて、マーガレットとブリックの葛藤が示されるが、マーガレットの台詞が大半を占める。
 寺島は、長い台詞を良く覚えるものだと感心はするが何か軽い印象を受けた。そういう役作りか。遺産相続を企むほどの人間は、もう少しどっしり構えているようにも思える。台詞の多さが災いしているか。北村も、アルコール依存を感じさせない。後の伏線になる二人の対峙が、少し薄っぺらい感じだった。

 2幕、ビッグダディとブリックの葛藤が示される。ビッグダディはブリックに財産を譲りたいのだが、ブリックのアルコール依存を何とかしなければと説得を試みようとする。しかし、ホモセクシャルを匂わす言葉にブリックは父親と対立する。
 木場は、一代で大農場主にのし上ったビッグダディの傲慢不遜さを良く感じさせながら、ブリックと対峙する。その存在感は確かだ。北村は、金持ちの次男の立場を背負った虚無感を感じさせる。とすると一幕もその意識があったのか。多少ギャップがあるように思える。

 3幕、ビッグダディは自分の部屋に戻り、ビッグマザー・長男夫婦・次男夫婦が集まる。長男夫婦はビッグダディの先の事を考えて銀行に財産管理を任せようと書類まで準備している。マーガレットは、子供のいない事が弱みと認識し、子供が出来たと嘘の話をしてしまう。しかし、ブリックはそのことに関して何も言わない。
 銀粉蝶が、知らぬ間に金持ちになってしまったビッグマザーの雰囲気を漂わす。広岡が狡猾な長男の嫁のメイを、さもありなんといった感じで演じる。

 

 結局、主役は誰なんだろう。皆が、やけたトタン屋根の上の猫で飛び跳ねているようだ。空気など読まないで我を張っているようだ。そこに入らないのはビッグダディーとブリック、去り行く者と世間をはみ出した者か。

 大いなる興味を持てなかった。演じられる物語がありふれたものになってしまったからだろう。もちろん原作を否定する気などないけれど、現実が追いついてしまっている。劇的なるものが相対的に薄まってしまったからだろう。
 とは言え、遺産相続など関係ない我が身には遠い世界のことであるが。

 役者はそれぞれに魅力的だが、全体的な調和は稀薄と感じた。それと、医師や牧師も呼んだビッグダディの誕生パーティを含めて、全てがブリック夫婦の部屋で演じられたことに違和感を感じた。

  (2010年11月15日記録)

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