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2010年8月24日 (火)

映画;キャタピラー(2010年作品)

出演    寺島しのぶ  黒川シゲ子
      大西信満   黒川久蔵  、他

製作・監督 若松孝二

参考サイト 「キャタピラー」公式HP

場所    シネマ ジャック&ベッティ
鑑賞    2010年8月23日

 

 主演の寺島しのぶが、2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門において銀熊賞最優秀女優賞を受賞した話題作です。ウィークデーの12時上映に出かけましたが、客席数138の2/3ほどが埋まっていました。通常は10~20ほどしか埋まっていないのですが。次の回を待っている人もかなりいました。

 寺島しのぶ主演の映画を観るのは二回目、最初は「赤目四十八滝心中未遂」、その時も特殊な環境にいる女性を熱演しましたが、若さを前面に出して乗り切れるように感じました。今回も特殊な環境にいる女性を演じていますが、内面的な感情まで表出してはるかに上手いと感じました。
 まあ、寺島しのぶの演技についてとやかくいう必要はないでしょう。世界に認められたのですから。

 戦争を後方支援と細分して肯定する傾向があります。この映画を観れば、銃後という後方支援よりもはるか後方にも戦争の爪あとが及ぶことをひしひしと感じます。若松孝二は、記録映像は用いているものの、戦闘場面を描くこと無しに戦争反対を明確に主張しています。いかなる戦争も許されないとのメッセージは鮮明です。

 ただし、私は戦争直後の世代ですから状況が判らないことはありませんけど、若い世代はどうなのでしょうか。判らなければいけないと思いますが、判らなかったとしても若い世代のせいではありません。そういうことを伝える環境はあるのか。そのような思いは抱きました。この映画と直接は関係ないことなのですが。

 以下、内容に触れます。承知おき下さい。

 
 
 
 
 
 
 
 

 先のアジア・太平洋戦争、国家のために招集された黒川久蔵は盛大な見送利の中、勇ましく出征する。しかし、戦争も終わらないうちに故郷に返された久蔵は、顔面が焼けただれ、四肢を失い、言葉も失っていた。

 久蔵は村人ばかりでなく、親からも奇異な目で見られながらも、「生ける軍神」として祀りあげられる。

 それでも久蔵は、自分を讃えた新聞記事の切抜きや勲章を誇りとしている。そして、食欲と性欲は旺盛だ。シゲ子は戸惑いながらも妻として健気に尽くす。それだけでなく、周囲に対して「軍神の妻」を誇示するようになる。

 やがてシゲ子は、このような状況に拠所のない虚しさを感じるようになる。久蔵は戦場における殺戮の光景が蘇り、性欲も萎える。シゲ子は、かって子供ができないことを理由に久蔵から暴力を振るわれた記憶が蘇たことも加わって、久蔵にきつく当たる。そして国にために命を捧げることへの疑いを抱くようになる。

 戦局は悪化をたどり、1945年8月15日12時玉音放送。
 シゲ子は近寄ってきた知的障害のあるクマにつられて、戦争の終わったことに心から万歳と叫ぶ。久蔵は全身を使って芋虫のように這いずり、家の中から外へ。

 敗戦は、現人神を人間天皇へ、生きる軍神を身体障害を負った普通の人間に変えた。そして、身体障害を負った普通の人間は這いずって、自ら溜池に落ち込んで命果てる。戦争が終わったことを理解したからか。戦争が終わって軍神と言う唯一の心の拠所さえ失くしてしまったからか。

   (2010年8月24日記録)

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