随想:朝日新聞2008年8月16日社説について
朝日新聞2008年8月16日社説「党首選のあり方―政権交代時代にあわない」について、感じたところをまとめた。
こちらはリンク、念のため全文引用させていただく。、
--- 以下、引用開始 ---------------
党首選のあり方―政権交代時代にあわない
民主党の代表選が9月に行われる。目前に迫ってくる前に、党首の選び方のそもそも論を考えておきたい。
今回の民主党代表選になにか釈然としない思いを抱く人も少なくないと思う。疑問は大きく二つあるだろう。
仮に菅直人首相が敗れれば、新代表が首相になる。毎年のように首相が代わったあげく、今度は3カ月でお払い箱か。こんなに短命政権続きで日本は大丈夫か。それが、疑問の第一だ。
次に、菅氏は先の参院選で自民党に敗北しても首相を辞めなかったのに、なぜ一政党内の手続きにすぎない投票の結果次第で首相を辞めなければならないのか。それが第二の疑問だ。
むろん9月の代表選は公明正大にやってもらおう。それとは切り離して、今後の党首選のあるべき姿を今から議論しておくことは有益だと考える。
日本の首相は大変である。政権を維持するのに乗り越えなければならないハードルが実に多い。政権選択がかかる総選挙、中間評価としての参院選、それに加えて党首選も、だ。どれも、しくじったら退陣に追い込まれかねない正念場である。
永田町の抗争局面である「政局」がほとんど毎年のように首相を脅かす。これでは内政外交の重要課題に腰を据えて取り組むどころではない。
代表選をにらんで党内を刺激しないよう気を使い、精彩を欠く菅首相の現状はその象徴だろう。
ハードルの多さが政権を弱体にし、ひいては短命政権の連続にもつながる。日本政治が急いで解決しなければならない宿題である。
自民党の一党支配が盤石だった頃、首相は党総裁選で事実上、決まった。総選挙を通じた政権交代など想像できない時代だったから、それが通った。
いまは、有権者が総選挙を通じて新しい首相を直接指名し、政権交代を起こしうる時代になった。
総選挙よりも党内手続きを優先し、党の都合で首相を交代させる従来のやり方は正当性を失ったといっていい。
有権者が「自分たちで選んだ」という意識を持てない首相は、最初から基礎体力を奪われているに等しい。
小泉内閣後、総選挙を経ずに生まれた安倍、福田、麻生各内閣の発足時の内閣支持率は63、53、48%と、たらい回しの度に低下。昨年の総選挙で生まれた鳩山内閣は71%、菅内閣60%だ。
改革の方向ははっきりしている。
現状では党首の任期は総選挙の時期と無関係に決められているが、これを見直すことである。
民間有識者らがつくる「21世紀臨調」は、党首の任期を総選挙のサイクルと一致させるよう提言している。首相候補である党首は、原則として次の総選挙の前に選挙する。
現実的なアイデアだろう。
--- 以上、引用終了 ---------------
「党首選のあり方」についての提言は、朝日新聞の意見として傾聴する。しかし、どうにも煮え切らない文書と思えるのは、普遍的な党首選のあり方に関する提言なのか、来る民主党代表戦に関する恣意的発言なのか、混沌としている点にある。
「党首の選び方のそもそも論を考えておきたい。」と言いながら、直ちに「今回の民主党代表選になにか釈然としない思いを抱く人も」と繋げるのは、木に竹を接ぐような思いがする。
まさか、民主党党首選のそもそも論ではないだろう。政権交代時代と言っているのだから各政党についてのそもそも論であろう。
そして「なにか釈然としない思いを抱く人も少なくないと思う」とは推察。社説なのだから、あくまで朝日新聞はこう考えると、毅然たる態度表明が欲しい。「そう思う人」、すなわち「国民の一部には」と言うことだろうが、社説の中で安易に国民を引き合いに出すのは避けるべきではないか。あくまで主語は朝日新聞とすべきである。
普遍的な提言であるならば、次の文書で足りるだろう。
--- 以下、私案開始 ---------------
党首選のあり方
党首の選び方のそもそも論を考えておきたい。
日本の首相は大変である。政権を維持するのに乗り越えなければならないハードルが実に多い。政権選択がかかる総選挙、中間評価としての参院選、それに加えて党首選も、だ。どれも、しくじったら退陣に追い込まれかねない正念場である。
永田町の抗争局面である「政局」がほとんど毎年のように首相を脅かす。これでは内政外交の重要課題に腰を据えて取り組むどころではない。
改革の方向ははっきりしている。
現状では党首の任期は総選挙の時期と無関係に決められているが、これを見直すことである。
民間有識者らがつくる「21世紀臨調」は、党首の任期を総選挙のサイクルと一致させるよう提言している。首相候補である党首は、原則として次の総選挙の前に選挙する。
現実的なアイデアだろう。
--- 以上、修正案終了 ---------------
「党首選のあり方」については、これで主旨が足りるだろう。民主党も自民党も、他党も引き合いに出すことなく提言は可能だ。
「21世紀臨調」を現実的なアイディアと言うだけに止まらず、朝日新聞のアイディアがあるならなおさら良い。そうでなければ、「現実的なアイディアだろう」と言葉を濁さず、「賛同する」と言い切るべきではないか。
見出しの「政権交代時代」もまた判らない。およそ一年前に、自民党から民主党への政権交代があっただけである。同一政党内の政権交代は、民主党の場合は一回あっただけである。「政権交代時代」とは、それ以上の何かを言いたいのか。あくまで、政党間の政権交代は一回あっただけであって、時代などと言うこともないだろう。それとも、見えざる力でこれから次々に起こすと言うことか。
蛇足だが、提言が成り立つためには、各政党にそのアイディアを受け入れさせる必要がある。先頭を切って欲しい。また、一票の重みの公平さが不可欠と考える。その点もあわせて言及願いたい。
(2010年8月16日記録)
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