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2010年7月 8日 (木)

演劇:MODE「カフカ・変身」(2010年7月8日)

   原作     フランツ・カフカ
   構成・演出  松本修

   出演     中田春介  グレーゴル・ザムザ
          小嶋尚樹  父
          石井ヒトミ 母
          山田美佳  妹・グレーテ 他

   会場     THEARTER IWATO
   公演     2010年7月6日(火)~11日(日)、詳細要確認
   鑑賞     2010年7月6日 17:30~21:10(休憩なし)

 

 「MODE・変身」は、2007年3月初演、今回が再演。少し前に東欧公演を好評裡に終えたそうで、いわば凱旋公演。それにしても、初めて出向く劇場・THEARTER IWATO の客席は100に満たない、まさに小劇場。とは言いながら、客の年齢層は比較的高いことが、並みの小劇場系とは異なる。手が届くような近さの舞台は、客席が隣の部屋であるような一体感を形成する。

 

 『ある朝、グレーゴル・ザムザが不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドのなかで、自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた。甲羅のように固い背中を下にして横になっていた。頭を少し持ち上げてみると、こげ茶色をした丸い腹が見えた。・・・からだにくらべると、なんともかぼそい無数の脚が、目の前でわやわやと動いていた 池内紀訳・白水ブックスより』。

 主人公・グレーゴル・ザムザが、虫に変身してしまうという無理筋な物語。ザムザは全編を通して虫なのだが、それを如何に表現するかは演出するうえでの大きなポイント。

 冒頭、ベッドのザムザが目を覚ます場面。三人が縦に連なる形で手足を蠢動させ、やがてベッドを転がり落ちて室内を這い回り、虫になったことを明示する。虫が明示されるのはこの瞬間だけで、以降は人の姿で演じられる。
 記憶に照らせば初演時より、虫であることの表現は執拗であったように思う。部屋を歩き回り、頭を振り上げて。

 虫の変化を具体的に提示しない演出、すなわち客の想像に任せる方法を好ましく思う。客の内面に、それぞれの考える虫が想起される。

 

 舞台は、ほぼ原作どおりに進行する。ザムザの変化の様子は、家族たちの反応で示される。家族はユーモラスさを秘めながらも、ザムザに対する仕打ちは次第にきつくなり、やっかいもの扱いになっていく。
 客はその反応から、変化の様子を感じ取ることになる。ザムザの見かけは何も変化していないから。

 主人公はザムザだが、家族もまた主人公たりえる。虫、すなわち異質なものが家の中に出現した時、どうような行動をとるか、それも注視される。

 やがてザムザは死を迎える。
 考えてみれば、家族三人は仕事もそこそこ順調で、現状はさほどひどいものではない。先の見込みもある。何ヶ月もなかったことだが、そろって郊外に出かける道すがら思うのである。

 

 ザムザの中田は地味な印象を受ける役者。新聞紙のうえに置かれた食事(えさ)を上手そうに食べたりと、体当たり的かつ淡々とした演技。ザムザの抑圧された状況も良く伝わった。他のカフカ作品にも出演するが、ザムザは適役。

 妹・グレーテの山田は、いまやMODEの主演女優。彼女の演技を通してザムザの変化を感じさせる重要な役回り。何となく繊細な印象を受けるのだが、小さな劇場でそれは良いほうに向っている。

 父・小嶋尚樹は創設メンバー。つねにユーモラスさを漂わせながらも、しっかり脇を固めている。今回もしかり。

 

 100年前に書かれた原作が、つい昨日書かれたような新鮮さを持って再演された。初演時は130分を要し、多少、冗長な印象を抱いた。今回は100分に短縮されすっきりした思いがする。
 それにしても虫とは何だろう。胸に巣食う虫をあぶりだす必要がありそうだ。

 多少、窮屈な思いのする劇場だが、それに耐えても観る価値のある公演だと思う。初演時の感想はこちら、読み返すとなんだか判らない文章だが。

 

 帰り際、思いがけず旧知のNさんに出会った。利賀フェスティバルの際、民宿を同じくする。今年もそろそろ計画する時期になったが、どうするか。ちょとごたごたしている。

   (2010年7月8日記録)

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