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2010年7月11日 (日)

演劇:中国国家話劇院「覇王歌行 ~項羽、歌の翼にのる」(2010年7月9日)

   作      藩軍(Pan Jun)
   演出     王暁鷹(Wang Xiaoying)

   出演     房子斌(Fang Zibin)    項羽
          長昊(Zhang Hao)      范増・李由・他
          刘璐(Liu Lu)       虞姫
          田征(Tian Zheng)     劉邦
          黄宇珩(Huang YuHeng)   古琴演奏

   会場     こまばアゴラ劇場
   公演     2010年7月8日(木)~11日(日)
   鑑賞     2010年7月9日 19:00~20:35(休憩なし)

 

 第17回BeSeTo演劇祭の参加作品。

 天井から吊り下げられた床に届く大きな紙、舞台後方中央に4枚が並び、それより手前・左右に各1枚。舞台前方に大き目のアクリルケースが並び、剣や冑、胴当などが収まっている。その一つに水が10Cmの深さに満たされている。

 役者は4人、壮大な歴史を4人で演じる。項羽、虞姫、劉邦は固定しているが、長昊は范増・李由など全13役をこなして物語を繋げる。

 メイクは、虞姫が京劇風であるが、他は素顔に多少のアクセント。
 衣装は、虞姫が伝統的な服装だが、他は漢服風だがかなり現代的な感じ。
 発声は、虞姫が裏声を使い、他は地声だったと思う。伝統的な抑揚が付いている。何ヶ所かで歌う。

 中国現代劇ではあるが伝統劇、この場合は京劇「覇王別姫」の香りが色濃く漂う。 

 物語の概要はおおむね次のとおり。

 中国を統一して秦を興した始皇帝が没し、再び天下が争乱に陥った頃。項羽は楚の地で蜂起。劉邦は秦軍と戦ったが追撃を受け、ひとまず項羽の元に身を投じた。

 項羽は鉅鹿にて秦軍を迎え撃破、その間に劉邦は都・咸陽を占領する。怒る項羽は鴻門で宴を開き、その席で劉邦を殺害しようとするが、剣先の光を見て我に返り、剣を収めてしまう。項羽は人格を尊ぶことを優先した。

 後に劉邦は項羽に宣戦するも、項羽は劉邦を栄陽の戦いで撃破する。劉邦は投降するが、虞姫の懇願で死を免れる。

 やがて態勢を立直した劉邦は、負け知らずだった項羽を烏江に追い詰める。虞姫は項羽の邪魔にならぬよう、一舞した後に自害する。項羽は、虞姫の面影を抱き、四面楚歌のなかに駆け出していく。

 項羽は悟る、”此天之亡我、非戦之罪也(これは天が我を亡ぼすのであって、戦い方の責任ではない)”。この後、時代は劉邦の興した漢に移る。歴史の綾だろうか。

 

 房子斌は、武骨ながら冷酷に徹しきれない項羽を浮かび上がらせた。
 長昊は、全13役を見事に演じ分けて物語をうまく紡いでいた。長昊なくしてこの演目は成り立たない。
 刘璐は虞姫、すなわち虞美人を演ずるに適った美貌を持つ。始終、伝統劇を思わせる発声・仕草が、伝統に裏打ちされた現代劇であることを暗示明示する。
 田征は、おどおどした言動ながら世渡りの上手い劉邦になっていた。
 出演者全員が、伝統劇も現代劇もこなしているように思える。とにかく皆が芸達者である。

 

 現代劇と言いながら内容が歴史物であるから、伝統劇の雰囲気を引きずるのは仕方ないだろう。その中で次のような特徴を感じた。

 まず、項羽のモノローグの多用。モノローグと言うよりナレーションが的確か。どこか離れた視点から過去を見ている印象が漂う。回想の物語か。

 舞台に吊り下げられた紙は、殺人の場面などで紅いインクが上方から流され、血糊・血しぶきを明示する。あるいは血を思わせる居ろ水がアクリルケースに落下して紅く染める。伝統劇の華やかな殺陣に置換されるのだろうが、表現として直感的である。

 古琴演奏はかなり抑制的に使われていて、もったいない感じがした。楽器的に大音量は望めないと見えたが、別の楽器でも良いからもっと前面に出たら。

 中国国内ではどのように評価されているのだろうか。かなり斬新なのだろうか、多分そうだろう。制約のある中でいろいろ試みているのだろう。それにしても、なかなか興味深い一夜だった。

 私個人について言えば、その昔、仕事で咸陽に三ヶ月ばかり滞在した。劉邦陵を遠望し、周辺も見学したので懐かしい思いがした。

   (2010年7月11日記録)

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