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2010年6月22日 (火)

読書:最近の読書から(2010年6月22日)

1.『アメリカから<自由>が消える』
    堤末果著、扶桑社新書071、700円(税別)

 

 結びに引用されているのが、後に第四代アメリカ大統領となるジェームズ・マジソンが合衆国憲法起草に関わった際に残した言葉。「民主主義にとって最大の脅威とは<戦争>や<安全保障>の名の下に、司法、立法、行政などすべての権力が一箇所に集中することだ」。
 本書は、この一箇所に向けて進んでいくアメリカの様子を報告したもの。

 著者は9.11から数日して、見えない敵に気を取られている間に、アメリカを少しづつ侵食し始めた何かに気付いた。やがて「愛国者法が議会を通過し、自由を謳歌したはずのアメリカ社会は急激に変わり始めたと言う。例えば。

 「搭乗拒否リスト」はアメリカ政府が存在を公式に認めている。そこには、テロ容疑者に止まらず、緑の党会員、キリスト教系平和活動家、市民は弁護士などが掲載されている。掲載された理由は判らず、取り消す方法もない。その人たちは飛行機に乗ることができないばかりでなく、就職の面接でテロ容疑者と看做され不採用になることすらあると言う。

 「ミリ波スキャナー」とは、ミリ波レントゲンで全身をスキャンすることにより、下着の下に隠している金属物や爆発物など、様々な物質を感知する。いわば乗客を裸にするに等しい機器のこと。設置が進む。

 「監視カメラ」は、およそ三千万台が設置され、毎週四十億時間におよぶ国民の画像が撮られている。2009年7月、国内六カ所の空港に七百名十万ドル相当の監視カメラ設置計画が発表された。

 これらがエスカレートした背景に「愛国者法」がある。9.11以後、猛スピードで議会を通過した。この法で、国内でやり取りされる電話、Eメール、ファクス、インターネットなどの全通信を、政府が監視する体制が作られることになる。政府機関の間で情報の寄せ集めも可、五億六千万件の個人情報が入っている巨大データベースが、50の政府機関の共有となった。

 こういう仕掛けが、言論の自由を抑制する。市民団体や学生の集会やデモが標的にされ、科学者や大学教授が口を封じられる。疑心暗鬼の雰囲気が周囲に立ち込める。

 

 自由の国・アメリカの印象が一変する。そう思っていることが既に時代遅れになのだろう。さて日本はどうなのだろうか。

 最近つくづく思うことがある。
 見知らぬ人の正面から唐突に写真撮影したら、その人はどのような行動をとるだろうか。誰もが少なくとも不快の念を抱くだろう。
 街角の監視カメラが増大し、常に写真を撮られていると感じる。正面きっての撮影ではないし、撮影者の存在も感じない。が、唐突に写真(あるいは映像)撮影されていることは事実だろう。
 やましいことは無いから撮影されても構わないと思う方、本書を一読しても考えは変わらないだろうか。

 日本の現状はアメリカと異なるだろう。しかし、ちょっとしたきっかけで大きく方向を変えることは容易だ。ハードは着々と設置が進む。ソフト(運用など)は容易に変えられるのだ。

 本書は、<自由>の観点からアメリカを見つめたら、かなり不自由なことが
増大していると言う。しかし、それに抗う動きも芽生えていると言う。見つめ続ける必要があるだろう。

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