文楽:第171回公演・第一部『碁太平記白石噺・他』
演目 ・祇園祭礼信仰記
金閣寺の段
爪先鼠の段
・碁太平記白石噺
浅草雷門の段
新吉原揚屋の段
・連獅子
会場 国立劇場・小劇場
公演 2010年5月8日(土)~5月28日(月)
鑑賞 2010年5月12日(水) 11:00~15:30(休憩 25+10分)
・祇園祭礼信仰記
金閣寺の段、此下東吉との碁に負けた松永大膳は怒って碁笥を井戸に投げ込み、手を濡らさずに取れと命じます。此下東吉は、雨どいを外して滝の水を引き込みます。
爪先鼠の段、松永大膳に切り付けて捕まり桜の木に縛り付けられた雪姫は、祖父・雪舟に倣い桜の花びらを足でかき寄せて鼠の絵を描くと、魂の入った鼠は動き出して縄を食いちぎります。
見どころは初めて見ても良く判るし、記憶に残ります。通しでないから全体観は今ひとつ判らない面もありますけど。事前にさっと調べておけばよいのですけどなかなかできません。
出演は、三味線の鶴澤寛治、雪姫を初めて遣う桐竹勘十郎、他中堅・若手。どことは言えないのですが、いま少し足りないものがあるように感じました。
面白かったのは此下東吉が木を上り下りする場面、人形が仕草を繰り返すと、金閣が迫に沈み、それにつれて風景も変化するから、まさに木に上るが如く。そればかり面白がってもいけませんが、見るたびに何か面白い仕掛けがあるように思います。
・碁太平記白石噺
浅草雷門の段、姉を訪ねて奥州から江戸へ出てきた田舎娘のおのぶが、だまされそうになったり助けられたり、浅草寺門前の賑わいとともに描き出されます。今も昔も大差ない。
新吉原揚屋の段、花魁の宮城野は新しい奉公人・おのぶの訛りに聞き覚えがあり、生まれを聞いて姉妹と判ります。おのぶは父が殺され、母も亡くなり、姉妹で敵討ちしようと苦しい旅をしてきたと話します。敵討ちのために廓を抜け出そうとする宮城野、影で聞いた主人の惣六は曽我兄弟を引き合いにして性急な行動をたしなめ、機を待つように諭します。
新吉原揚屋の段、傾城・宮城野と奥州訛りのおのぶ、思慮深い惣六の組み合わせ。始めは面白く、やがて引き込まれる思いです。
出演は、おのぶを吉田文雀、宮城野を吉田和生の師弟が遣い、新吉原揚屋の段の切を豊竹嶋太夫。文楽は太夫の語りを聴くなどと言われますが、今回、豊竹嶋太夫の語りが心に沁みました。声が良い、宮城野・おのぶ・惣六の語り分け、後は何でしょうか。細かい分析はできませんが、とにかく心に沁みました。初めての経験でした。
・蓮獅子
親獅子は子獅子を谷底に突き落とし、自力で這い上がる子獅子のみを育てると言います。試練を乗り越えた親子獅子は、毛を振り立て、牡丹に戯れて、千秋万歳を寿ぎます。
TV放映で歌舞伎の連獅子を見ましたけど、文楽では、最後の毛振りをどうやるか、初めて見る前は不思議に思っていました。今回は二回目で既にそういう思いはないけれど、とにかく人が踊るように人形が踊ります。
最初に見たとき、子獅子を谷底に落ちる場面は人形を投げたと記憶します。今回は人形遣いごと飛び降りました。記憶違いか、いずれもあり得るのか。
第一部全体として、引き込まれる部分はところどころありました。が、何か一つ足りないものがある思いが残りました。出演者の個々の技能が判るわけはないのですが
文楽はまだ十数回ですが、少しは感想らしきものが湧くようになりました。まだ早い、もっと見ろ。そうかもしれませんね。とりあえず、今週、第二部に出かけます。
(2010年5月16日記録)
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