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2010年3月16日 (火)

演劇:MODE『女殺油地獄』

   演出   松本修

   原作   近松門左衛門
   台本   石川耕士

   美術   伊藤政子
   照明   大野道乃
   音響   長柄篤弘
   舞台監督 大川裕

   配役   河内屋与兵衛 ------------------------ 川口真五 
        河内屋徳兵衛(与兵衛の継父)--------- 藤井びん
        お沢(与兵衛の実母)----------------- 山本道子
        山本森衛門(与兵衛の叔父)----------- 宮島健

        豊島屋七左衛門(近隣の油屋)--------- 中田春介
        お吉(七左衛門の妻)----------------- 山田美佳

        小菊(北新地の女郎)----------------- 山田美紗子 、他

   会場   笹塚ファクトリー
   公演   2010年3月14日(日)~3月22日(月・祝)
   鑑賞   2010年3月15日 19:00~21:45(休憩なし)

 

 大坂天満の油商・河内屋徳兵衛の息子・与兵衛が、理不尽な理由で近隣の油商・豊島屋七左衛門の女房お吉を殺して金を奪う話。豊島屋店先での殺戮は、油桶をひっくり返したから辺り一面油の海。二人は足をとられて動き儘ならず、ひっくり返り、もがきながら、やがてお吉は息絶える。まさに油地獄。

 家庭内暴力の末に至る家族崩壊、かすかに漂う横恋慕、高利金融。今では油屋という商売こそなじみが薄いものの、底を流れる思想は今に通じます。享保6年(1721年)7月竹本座上演、近松門左衛門晩年の作は300年を経て今なお新鮮です。

 筋も結末も知った近松の名作を、『カフカから近松まで、「不条理」劇から「情理」劇まで』を標榜するMODEが如何に演ずるか、小劇場で如何に展開するか、それが興味の的。小劇場系にしては年配の方も多く、ほぼ満席。

(以降、舞台に言及しますので承知おき願います)

 
 
 
 
 

 舞台と階段席の間の平土間に目見当で幅4間・奥行2間の平台、大半はそこで演じられます。平台の左右、舞台との間にパイプ椅子が置かれていて、演技していない役者はそこに控えます。

 苦みばしった川口真五の与兵衛、小股の切れ上がった山田美佳のお吉。山田美佳は前作「心中天網島の遊女・小春」よりさらに、商家の美しい若女房がはまっています。何もない平台へ、役者が縁台を運び込んで野崎参り途中の徳庵寺堤。たまたま出会う与兵衛とお吉、地獄への行進が始まります。

 北新地の女郎・小菊への鞘当から誤って武士に泥をかけ、供の武士に成敗と迫られる与兵衛。よくみれば伯父の山本森右衛門。宮島健の森右衛門は味わい深い。宮島健に限らず脇がしっかりしています。

 

 徳兵衛・お沢から預かった800匁を与兵衛に渡すお吉、返す金が200匁不足するから貸してくれと与兵衛はお吉に頼むが断られる。それなら手持ちの油二升を取り替えてくれと。計るお吉の背後に白刃抜いてせまる与兵衛。逆ギレ。

 樽を倒しての油地獄、この場面は奥の舞台で演じられます。この時、与兵衛とお吉以外の役者は奥の舞台に向って平台に正座、油地獄を劇中劇として観ることになります。待ちの役者の扱い、平台の空白を避ける、障子に目あり、などの意図を感じます。油地獄の終焉で暗転、拍手が起きます。役者も手を叩いています。

 

 お吉が亡くなってから三十五日、逮夜の人々の集まり。そこに天井から血の付いた書付が落ちてきます。筆跡から犯人は与兵衛ではないかと。そこにお悔やみを述べに与兵衛が現われます。

 

 誇張もないし様式美も多くは意識されていないようです。言葉の判らない部分は多少はありますが、気になるものでもありません。淡々と進行する台本も反って効果的です。実に身近な近松になっています。古典もなかなか良い、かくなるうえは文楽も観たいとの思いが沸き起こります。MODEを通して古典に近づく、それも大ありだ。次は「曽根崎心中」をリクエストしておきます。

 確証がないので後回しでしたが、始まりのJazzyな音楽は「死刑台のエレベータ」のようです。終演後に後ろのおじさんの話し声が聴こえました。徳庵寺堤の場面で「野崎小唄」、歌手は往年の時代劇俳優・高田浩吉と思ったのですが、今になって少し揺らいでいます。最後にソプラノが歌う何か、「ガーシュイン」と後ろのおじさんの話し声。世に物知りは少なくない、多少でも近づけたら。

  (2010年3月16日記録)

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