読書:最近の読書から(2010年2月21日)
1. 『卒サラも遠くなりにけり』
企業OBペンクラブ編著、青蛙房、1600+税
70歳の異称が古希。盛唐の詩人・杜甫の七言律詩・曲江詩の4句目「人生七十古来稀 」に基づく。しかし当時と異なり、今は多くの人にとって通過点だ。
最近の職業事情は多様化するが、会社勤めならば60歳を過ぎると順次、定年退職する。60歳の平均余命(平成18年)は男性が22年余、女性はほぼ28年、古希が通過点であることは統計的にも裏付けられる。
その長い年月の一部を川柳や短文創作に費やす、それが企業OBペンクラブの面々。本書は大きく「老いのからだ」と「卒サラも遠くなりにけり」に別れる。「卒サラ」はサラリーマンの卒業の意味だろう。全体は与えられた兼題に沿った川柳三句と原稿用紙2枚半ほどの短文で構成される。
兼題をいくつか挙げれば「老い」では「鼻・腹・歯・腰・・・」、「卒サラ」では「抜く・押す・引く・揺れる・・・」。
貴方がサラリーパースンであって定年がそろそろ視野に入るか、あるいは既に定年を迎えたなら、それらの言葉から何を思うだろうか。作者と同じ思いに至るか、それはないだろうと思うか。そういう楽しみ方がある。
全体を通して突き詰めた内容ではない。かっては突き詰めた思いに至ったかも知れないが、今は軽く受け流しているように見受けた。3・40年のサラリーマン生活では、再三・再四の切った張ったがあっただろうに。戦中派から団塊の世代は、仕事命で過ごした方も少なくないだろうに。川柳を二つ。
引き際が業績よりも評価され 繭球
定年で胸撫で下ろす不況風 周帆
現役はより厳しい情勢にある昨今だろう。「面白うてやがて悲しきサラリーパースン(大きく字余り)」を払拭する政治であって欲しい。多少横道にそれた。
本業の方も居られるかも知れないが、一般的に何のジャンルでも良いから日本語に親しむのは上等な趣味だと思う。私も初心者だが同類である。見習って明るく過ごしたいと思う。
(2010年2月21日)
| 固定リンク | 0
コメント