演劇:国盗人 シェイクスピア「リチャード三世」より
作 河合祥一郎
演出 野村 萬斎
作調 田中傳左衛門
美術 松井るみ
衣装 コシノジュンコ
囃子方 梅屋小三郎(囃子)、福原友裕(笛)、古寺正憲(囃子)
出演 白石加代子 女 杏(悪三郎の妻)
王妃(白薔薇王・一郎の妻)
政子(赤薔薇王の妃)
皇太后(白薔薇の長の妃、一郎・善二郎・悪三郎の母)
野村萬斎 悪三郎(白薔薇一家の三男)
石田幸雄 久秀(悪三郎の腹心)
大森博史 左大臣(一郎の忠臣)
小田豊 王妃の弟
山野史人 一郎(白薔薇の王)
会場 世田谷パブリックシアター
公演 2009年12月5日(土)~12月12日(土)
鑑賞 2009年12月11日 19:00~21:30(休憩20分) 1階O列9番
公式HP http://www.atre.jp/henry/
2007年の初演、今回は再演になる。だが内容は変化して受けた印象が随分異なる。
舞台は三間四方の能舞台を思わせる。前方へ多少傾斜し、周囲の柱は焼け爛れている。舞台と左右袖を結ぶ橋掛かり状の通路は左右に二本ずつ。正面の階段が舞台と客席を繋ぐ。舞台後方全面に葦簀(よしず)が下がっていて、照明効果によって奥舞台の視界を遮ったりする。その中央に開閉可能な扉があって、前舞台と奥舞台を繋ぐ。
蝉時雨が響き、客席後方から白いドレスに白い日傘の女が舞台に進む。舞台中央に置かれた異形の能面を手にして「夏草や 兵どもが」。
剣を杖代わりに不自由な体を揺らして悪三郎が舞台後方から正面に進む。悪三郎の動作は、初演時よりは控えめになったと思う。が、ここまでに大きな変化はない。変える余地もないが。
舞台進行は、周囲を扇動して悪三郎が王位に登り詰めるまで、すなわち原作第三幕までが前半。再び白薔薇・赤薔薇の戦いが始まり、悪三郎が戦いに敗れて命果てるまでが後半になる。とてもシンプルな進行になった。
記憶は定かでないが、初演時は王位に登り詰めるのが後半に入ってからだったと思う。休憩がもっと前だった。
悪三郎は初演時にマイク片手に歌を歌ったが、それは割愛された。代わりに、前半最後で客を市民に見立てて巻き込み、王位推戴を整えるなどのサービスがあった。客は愉快になって前半を締めくくる。狂言仕立ての真骨頂であろう。
女はすっきりした。初演時より狂言回しの役割が減ったため、4役であっても各々の役割が良く判った。
後半の白薔薇・赤薔薇の戦いは、前半に比べて少し萎んだ。狭い舞台上で限られた殺陣になるとかそういう問題ではない。悪三郎と理知門の対峙に迫力が感じられなかったから。悪の限りを尽くして登り詰める悪三郎は、徹底的な正義によって滅ぼされなければならない。その徹底的な正義を感じられないところに、多少の不満が残った。
再び蝉時雨が響き、女が舞台中央に置かれた異形の能面を手にする。「兵どもが 夢のあと」。これは夢だったのか。夢であって欲しい。
初演時に比べて随分すっきりしたと感じる。残るは後半の力強さ。それにしても、萬斎・白石はじめとして役者に依存する部分が大きいようだが、それもありだ。それにしては、初演時の理知門・今井明彦は「新国立・ヘンリー六世」に回っているようだが少々残念。
(2009年12月13日記)
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