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2009年11月 4日 (水)

講演:青山七恵×原武史(対談編)

講演:青山七恵×原武史(対談編)

  名称  明治学院大学 2009年度公開セミナー
      「知」の現場から 第4回 文学2
  場所  明治学院大学横浜キャンパス
  日時  2009年10月27日 16時45~18時15

  講演者 青山七恵・原武史

 作家は作品で評価されるのだが、それにしても26歳は若い。そのようなところから対談が始まりました。以下その記録ですが、私が受け止めた内容であって、両人が必ずしもこのように言ったとの保障はありませんので承知願います。

 

H: 26歳、公開セミナーの最年少になると思う。作家としては既に大きな仕事を成し遂げている。(「窓の灯」で第42回)文藝賞、(「ひとり日和」で第136回)芥川賞、(短篇「かけら」で)川端賞を受賞している。これからますます期待される。お会いするのは初めてではない。「ひとり日和」受賞後に対談させて貰った。大変楽しく、このセミナーに是非呼びたいと思った。作品もさることながら、その背後に迫りたい。
A: 5月から3ヶ月間、フランスに行った。お金がたまったらフランスへ行きたかった。語学学校に行った。
H: 83年、埼玉生まれ、利根川を挟んで群馬という場所。図書館情報大学が筑波大学に統合され、卒業は筑波大学。旅行会社に勤務、その間に芥川賞受賞、今年になって退職、専業になった。その決意とフランス行は繋がるか。
A: 仕事を沢山やることになると思って、その前にフランスへ。行けなくなるかもしれないので。
H: 前後で大きな違いはあるか。仕事があって、その後で集中して書く。それが無くなった。時間はたっぷりあって、そこで書く。海外に長くいてフランス語に囲まれていた。その変化は。
A: 時間の使い方。行く前に2ヶ月、すごく時間がある。沢山書けると思ったが、時間があっても前と同じ位。フランスで規則正しい生活、早寝早起きは素晴らしい。7時半から11時半(23時半)、パターンが出来てきた。昼間は休んで集中して書く。
H: ~(芥川賞)、その対談で、小説は高校か。
A: 大学。
H: 手書きだと小説に見えないが、活字になると見え方が違う。縦横でも違う。自分もこだわるが横か縦か。
A: 小説は縦。エッセイは横。
H: 自分は依頼されると何字何行とか、それが気になる。確認したことはあるか。
A: 確認はしないが枚数はなるべく合せる。
H: 最後の行は何字位か。
A: こだわらない。出版者が調整しているかも知れない。
H: それがきれいだ。視覚的にきれいに終わる。
A: 考えたことはない。
H: 川上(弘美)とは仲が良い。緊張している。川上は平仮名が多い。やわらかいイメージ。青山は、これは平仮名、書く字の基準はあるか。
A: あるが、作品に合せて使い分ける。
H: 川上ほどではないが、こだわりを感じる。それを含めて構成か。
A: 気にしている。笑わす言葉でもいくつかから選ぶ。
H: 最初の一行はスーッと出てくるか。最後まで行って戻るか。
A: スムーズに出てくる。最後にいって見返すが、直すことは少ない。
H: 一行目、スーッと入っていけるか。青山を形作っている。最初に心を動かされた「ひとり日和」、この小説の舞台は京王線のある駅が見える家。春から春までの移り変わり。小さな駅を選んだことに惹かれた。首都圏に大くの駅がある。その中でこの駅に良く着目した。小説だから全部フィクションではない。あるブログで「馬鹿じゃないの」。鉄道マニアが、笹塚も出てくるがそこから元八幡駅へ。あそこから出るのは京王新線。この特急に乗ると接続しないと。
A: そこまで見てくれるのは嬉しい。
H: 対談の時もそこまで行った。100%フィクションではないが、加味しだされる雰囲気が好き。そのマニア、「何々~府中」、「府中本町から何々」(細かいことを言っているが)意味無いじゃん。
A: 私も知っていた。武蔵野線でいっては駄目。
H: ぴたり静止している空間が必要。季節が流れ、最後に戻ってその空間に来たことがぐっとくる。ドラマティックなことは無い。日常的なことが淡々と。そこに誰も気付かないことを掬い出す、その能力。
A: 何か心に引っかかるような文を書いてみたい。イメージが曖昧なので、それを言葉にしようと思って。
H: それがスキッと書かれている。私は大学に属して文を書く。この世界は分量で脅かすところがある。「かけら」3つの短編で川端賞。短編に対して、短編は長編より難しいか。
A: 私は短編が好き。
H: 「かけら」を読んですごく惹かれる。あの短さに凝縮。「ひとり日和」は1年間の変化をゆっくり。これって川ですよね、幼少期の影響か。「かけら」は1日、バスですよね。
A: バス。
H: 対談で(テーマを)聞いていたがこういう形でまとまるとは。バスにも、貸切があったり色々。本学に来るのは江ノ電の路線バス。他方で貸し切りバス。小学生の遠足、会社の旅行は最初から知り合いが乗る。「かけら」が貸切だが、「さくらんぼ狩りとビーナスライン」、目的は一致するが、以前は知らないが赤の他人でもない。父が遅れてあやまりながらバスに戻る。赤の他人で無いから謝るような関係。小説で設定した父と娘、母と娘で無いような関係が響きあっている。
A: 私も友達と?へ行った。満杯だったがおやつを分け合うでなく、サービスエリアで知った顔に見ると避けてしまう。この小説のような感じはある。
H: 初めは自分でなく友達から聞いたのですね。
A: はい。その後、自分でも行った。
H: 新宿で乗った父と娘。その二人だけが実の親子だが、他人からそう見て貰えるかどうか。5人で行くのと2人で行くのと。娘に課題。「かけら」ではカメラを持って。金物屋の看板。
A: 時々ありますよね。
H: そういう視点、青山本人。
A: 自分にもある。
H: 中央高速、少し早く着く。主人公が、父の日頃見ない光景を見る。おばあさんがころぶのを助ける。そのために遅れる。娘には話さない。よそよそしい関係。ゼミの話題で、父に対してつめたいのではないかと。
A: つめたい。
H: 確かにそうだが、助ける。さくらんぼ狩は背が高くて便利。皆に採ってあげる。その視線がクール。
A: 父にさくらんぼを渡すために待っている。やさしい伏線もある。
H: その後、ビーナスライン。ビーナスって何、調べたこともある。休憩、丘。
A: 丘の方に行って鐘が見える。娘が行ったら見えない。ビーナスの前。
H: 行ったらなくて怒り、集合に遅れる。焦点はビーナスライン。「かけら」はみんな、お父さんがみんな細かいことをつないで行く。ここで父の姿を見た感じ。カント哲学だ。現象しか見えないが、背後にあるものか。純粋理性だ。
A: 娘の影で、旅人でいるかも。
H: あそこで一気に娘に変化が。ビーナスラインで一気に。帰りは寝たりしているが、そこにそういうものを読者に感じさせる。言葉を選んでいるが、背後にふくらみを意識。
A: 娘と父の話を。展開を考えているうちに、後で感じることもある。自分も仕組みはわからない。
H: 「かけら」は、父と娘の大きな関係が描かれている。父の人格。
A: 大きく考え、書きながら、ぼんやりしたホール。そこに向けて書く。
H: 最後は。
A: 大体はある。娘が自販機の横で写真を見る。そこにどうしたら行けるか。
H: うまくいく場合といかない場合が。
A: うまくいかない場合もある。「かけら」も1日のことを書いたので、数日後に写真を見ている所が難しい。取って付けた様にならないか。
H: さくらんぼ狩で父の姿が写っている。
A: 父の視線が斜めに横切っている。それがきれいに。
H: 自分の視点から外れられない。直してこれが筋かな、自信が無いと最初が良かったと。
A: 迷うこともあるが「かけら」はうまく行った。場合によっては書き直す前が良い。
H: 短編は言葉が少ない。
A: 集中する。全体把握できない。
H: (先週のセミナーで)川上が詩を書きなさいと言っていたがどうですか。
A: やってみたい。友人が短歌をやっている。短い制限で言葉の力をだすのが全て。短歌とかやってみたい。
H: 新天地に行ける。歴代天皇は短歌を詠むのが仕事。明治天皇は九万首。それ位詠めば勲章。青山は書いていて目標はあるか。
A: 2007年、会社をやめるのを迷っていて、3篇書いたらやめていいと目標を。
H: なかなかできることではないが、青山は違う。
A: がんばった。中編3本。これから短編を集中して書きたい。2008年10本ぐらい書いた。今年は長いものを。
H: コンセントレーションが高まっているか。
A: 短編は集中、高まったような。
H: フランスで規則正しい生活。寝食を忘れるか。
A: 寝食は忘れない。3時4時までやることもある。働いている時の習慣。
H: 立花隆~~~。
  大学のこういう場(公開セミナー)は初めての経験。青山は、綿矢りさや金原ひとみと同世代。新進気鋭の作家が増えているが自分にとっとどうか。
A: 年齢は気にしていない。同い年ということは意識した。そういう人がいるのはラッキー。
H: 同世代の同業者は意識。(日曜日の原武史参加の公開討論会に触れて)似たような意識はする。綿矢、金原は学年は違う。賞はプレッシャーになるか。
A: プレッシャーでなく、はげみになる。会社のように保険がついていないので、孤立している。税金など一定額の支払いはある。大変だ。川端賞は会社をやめた直後に頂いた。良かったと思った。
H: 後に平成の小説として引用されるだろう。文学は、その時の背景と切り離せない。青山(の小説)は情景がくっきり浮かび上がる。時代を現している。100年後にそう言う人が出てくる。
A: サザエさんを見て、昔はこういうものを使っていたんだとか思う。
H: 小説は(外国に)翻訳もされる。社会科学、人文は残らないし、後世に残るのは羨ましい。青山の本も翻訳されるだろう。

 

 会社勤務を保険がついているとの話題はほほえましい。作家という職業はそれほど大変なことなのでしょう。務めをやめて収入がなくなっても社会的費用等の支出はなくなりません。それを大変だと思っているようです。26歳にして確固たる基盤ができているように思うのですが、26歳から先も相当に長いことは事実。
 先週の川上弘美はオリのようなものを書いていると言いましたが、青山は何を。これから注目します。

 質疑編は追って掲載予定です。

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